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エントリーシートの質問に対して、どうやって考えて、文章を作っていけばいいのか?(と、人事目線での余談)

こんにちは!多田(@Tkeijiro)です。
私はYahoo! Japanで人事 → BBQ会社で人事 → ヘッドハンター → 人事コンサル企業のCOOというキャリアを歩んでおり、現在は未経験で人事を目指す方のキャリア支援なんかもやっていたりします。

さて、今日の話です。

エントリーシートに関する話をしているときに「フォーマットに当てはめて書いても、なかなか伝わりづらいよ」と言ってるのですが一緒に仕事しているメンバーから、

「そんなこと言っても、じゃあどう書けばいいの?ってなりますよ。初めてエントリーシート書くんだから、よくあるフォーマットが出回ってればそれに合わせるでしょ。」

というフィードバックをもらいました。

うん、そりゃそうだよな、と反省。

あまり「How To」を書くのは好きじゃないんですが(汎用性がないから)、何かを否定するなら代替策を提示する方がフェアだと思うので、僕なりの考え方/書き方をまとめてみようと思います。

僕が過去に運営していたインターンプログラムのエントリーシートの質問を一例に挙げて、「自分だったらこう考えて文章を作っていく」を解説していきます。

<質問>
「15歳から今までで、自分の意思で「挑戦」した経験について、プロセス・結果・反省点を踏まえて、詳細に教えてください。」(500字程度)


(1)まずは質問文を読んで、何を書かなければいけないかを考える

まずは「この質問は何を聞いてるんだろう?」と考えます。

そのために、質問文を分解して、それぞれがどのようなことを聞かれているのか?どのようなことを答えなければいけないのか?を考えてみます。(以下、すべて僕が20-21歳だった時を想定して書いてみます)

・15歳から今までで
→ 高校1年生から大学3年生までの間の出来事か
・自分の意思で「挑戦」した経験
→ 周りの環境や誰かの勧めじゃなくて、自分が選んで「挑戦」した経験か
→ 「挑戦」は、自分にとって難易度の高いこと、ってことかな
・プロセス・結果・反省点
→ この3つは必ず文章の中に入れ込む必要があるな

(2)書くテーマを考えてみる

自分の経験の中で、当てはまりそうな経験をざっとあげてみます。

・17歳の時に、文化祭で「お笑い大会」を企画した経験
・18歳の時に、浪人して早稲田大学商学部を目指した経験
・19歳の時に、大学入学したときにダンスサークルに入った経験

(3)書こうとしているテーマが質問の答えになっているかを考える

今回の質問だと、以下3つの前提条件に当てはまっているかを考えます。
・「15歳から今までで」の経験か?
・「自分の意思」でやった経験か?
・「挑戦」した経験か?

その観点で自分で見てみると、「挑戦」した経験か?という点が選ぶポイントになりそう。。。

そうすると「18歳の時に、浪人して早稲田大学商学部を目指した経験」が、自分の中で最も「挑戦」 ≒ 「自分にとって難易度の高いこと」だったので、これを選んでみます。

(4)まずは、時系列でざっくりと文章を書いてみる

文章構成、文字数などの制約条件をつける前に、自分の経験を時系列で洗い出してみます。

・高校ではあまり真面目に勉強してなかった
・大学受験を舐めてて、どこかしらには受かるだろう、と思ってた
・行きたいと思ってた大学には落ちて、滑り止めの大学には受かった
・悔しかったし、真面目にやってなかったことを反省したし、いい大学に入らないと将来が不安だと思った
・両親、特に父に浪人したいと相談したら、目標をコミットしないと援助しないと言われた
・受験科目が少ない&自分の得意科目の「数学」が活かせて、世間的に「学歴が高い(=将来のキャリアに有利だと当時思ってた)」学校で、将来起業したいと思ってた自分にとって役に立ちそうな学部・・・で、早稲田大学商学部を目標にして、改めて父に相談してOKだった
・予備校に通った
・最初の1-2ヶ月はとくに計画も立てずにひたすら勉強してたけど、テストで結果は出なかった
・目標が明確なんだから、早稲田大学商学部の赤本を解きまくって、その対策をすればいいと考えた
・赤本の傾向から英語・数学・国語でそれぞれやるべきことを自分の中でクリアにして、残りの期間はそれに基づいたことしかやらなかった
・飽きっぽい性格で一つのことが続かないことを知ってたから、飽きたと思った瞬間に他の教科を勉強するスタイルにした
・家にいると勉強しないのは経験で分かってたので、基本的には8:00 - 20:00は予備校にいて、勉強せざるを得ない環境を作った
・流されやすい性格なので、勉強を頑張る友達としかつるまない様にしてた
・結果として、早稲田大学商学部に受かった(社会科学部は落ちた)
・反省点は、最初からもっと高い学歴/科目が多い学校は無理だ、と決めつけてたけど、自分で限界を決めてたのはよくなったかも

この時はとにかく書き出すことを意識します。

(5)文章の構成を考える

この質問に対して適切に答えるために、どのような文章構成で答えるかを考えてみます。

・「挑戦した経験」を簡単に書く
・「挑戦(自分にとって難易度の高いこと)」だったことを説明する
・「プロセス」を書く
・「結果」を書く
・「反省点」を書く

(6)ざっくりと文章を構成に当てはめてみる

ここでやっと、エントリーシートの質問に文章で答えていきます。

・「挑戦した経験」を簡単に書く
浪人して「早稲田大学商学部」を目指した経験

・「挑戦(自分にとって難易度の高いこと)」だったことを説明する
偏差値50の大学に現役合格したが、将来への不安、悔しさ、真面目に取り組まなかった後悔から、偏差値70の早稲田大学商学部を目標にし、両親を説得して、浪人をさせてもらうことになった

・「プロセス」を書く
最初の1-2ヶ月は特に計画を立てずに勉強していたが模擬テストで結果が出なかった。そのため、早稲田大学商学部の過去問から出題傾向を調べて、勉強計画を立てた。一つのことに集中できない性格だったので「飽きた」と思った瞬間に他の教科に手をつける、高校生の時には家では勉強できたことがなかったので、8:00 - 20:00は予備校で勉強せざるを得ない環境を作る、など自分の性格に合った行動も取り入れた。

・「結果」を書く
結果、早稲田大学商学部に受かった。

・「反省点」を書く
反省点は、より偏差値の高い大学は自分には無理と決めつけていたが、やっていない段階で自分で限界を決めてたのは、今の自分としては良くない考え方だと思った。

(7)「相手目線」でチェックする

選考官は自分のことを全く知らない人で、その人が書類を読んで「会う or 会わない」を決めるのが書類選考です。

そのため、「相手目線」に立って「読みやすいか?」「伝わりやすいか?」を確認します。

・誤字脱字はないか?
・抽象的な表現すぎて伝わりづらい表現はないか?
・前提条件などの説明が不足していて伝わりづらい内容はないか?
・「〜です」と「〜だ」が混ざっていないか?
・漢数字/算用数字、半角/全角など表記のゆれはないか?
・読んでいて句読点の違和感はないか?

など・・・

(8)文字数チェックをする

(6)の状態では「395文字」なので、100文字ちょっと増やす必要があります。文量が少ない場合と多い場合、僕だったら以下の対応をすると思います。

文量が少ない場合:
・相手が求めているであろう内容(今回であればプロセス)を、より詳細に、具体的に書き足す

文量が多い場合:
・削ったり、言い換えても意味が通る表現を探す
・「文量が少ない場合」の逆で、相手が求めているであろう内容以外の部分で、削っても伝わるように書き直す

(9)とにかくいろんな人に読んでもらって意見をもらう

エントリーシートを読む人は「人事」という機械じゃなくて、一人の「人間」です。なので、いろんな性格の人がいます。そのため、すべての人に受け入れられる文章を作るのは難しいですが、多くの人にとって読みやすい文章を作るためには、やはり「多くの人」に読んでもらって意見をいただくのが良いと思います。

「こう書いた方がいいよ」

きっといろんな人があなたにアドバイスをするでしょう。

それは善意のアドバイスですが、すべての意見を受け入れてしまうとおそらくぐちゃぐちゃな文章が出来上がると思いますw

多くの人の意見を聞いた上で、最後は自分で「どうすれば、文字情報だけで自分のことをもっと相手に伝えることができるだろう?」を考えて、文章を仕上げることをオススメします。

余談

最後に自分が書いたものを載せようと思ったんですが、それが「型」になってしまうと、それぞれの方が持っているユニークな経験が色あせてしまうと思ったので載せませんでした。

エントリーシートの「学生時代にやったこと」関連の質問で、よく見る型としては例えば以下のようなものがあります。

・結論(取り組んだことを端的に)
・背景説明
・目標
・課題
・具体的施策3つ
・成果

この型、何も問題ないですし、読みやすいのでオススメです。

一方で、すべての人間が「目標→課題→施策」という順番で設定しているとは思えないんです。

ちなみに、僕は「やってみる→振り返る→やってみる」を繰り返すことがメインのスタンスです。このタイプの人の場合は、もし上の型に当てはめるとしたら、内容を無理やり作らないといけないんですね。だって、そんなことほとんどしたことないから。(浪人の時は「目標設定」はしたけど、課題・施策はやりながら考えた)

この型ができあがった背景は分かりませんが、少なくとも僕が就活をしていた10年前にも「あたりまえ」の型でした。

以下、「なぜこの型ができたのか?」の自分なりの推測。

終身雇用・年功序列の日本型の人事的慣習がメインストリームだった時代、新卒入社した会社に定年まで働くことがあたりまえだった時代には、一社の中でキャリアが完結するので、目標を設定し、その目標から逆算して、計画を立てることが当然のことだと思われていたんだと思います。おそらくその「あたりまえ」から出来上がったのが、あのエントリーシートの型なんじゃないかと。

でも、雇用の流動性が高まって、自分を取り巻く環境や社会は日々変化していて、人や出来事との出会いがキャリアに大きな影響を与えるようになってきた近年だと、せっかく立てた計画が役に立たなくこともあります。(良い意味でも悪い意味でも)

つまり、いろんなキャリアの「型」が生まれてきているんです。

キャリアも含めて、人の多様性を認めていこう!という大きな流れのある現代において、エントリーシートについても、旧来の「型」にはめなければいけない、なんてことはないと僕は思ってます。

せっかくそれぞれが持っているユニークさを「型」にはめることで見えづらくさせてしまっているのは、毎日エントリーシートを読んでいてちょっとだけ悲しくなります。

とはいえ、初めてエントリーシートなるものを書く人にとっては、そりゃ世の中に出回っていて、脈々と受け継がれてきた「型」にはめたいのは、当然のことだと思います。守破離という言葉があるように、「型」は型として受け入れつつも、「どうすれば、文字情報だけで自分のことをもっと相手に伝えることができるだろう?」を考え続けて、自分だけの「型」を作っていって欲しいな、と思っております。最後までお読みいただき、ありがとうございました!



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