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野球選手のためのテーピング ー手関節・手指ー

いつもC-I Baseballの記事をお読みいただきありがとうございます。
C-I Baseball育成メンバーの 北山達也 です。

これから現場に出ようと準備されている方の中でやはり欠かせないのが「テーピング」ですよね。
なかなか臨床でテーピングを巻く機会が少ないためテーピングの巻き方の勉強に時間を割けない方もいらっしゃると思います。


C-I Baseballではそんな方のためにシリーズ化して各部位のテーピングの巻き方を紹介しています。
今回は野球現場でニーズの高い「手関節・手指」についてのテーピングを紹介していきます。
その他の部位のテーピングについては下記をご覧ください。

ーテーピング総論ー

ー肩関節テーピングー

ー肘関節テーピングー

野球現場で多い手の疾患

野球をされていた方は野球人生で一度くらい手首や指にテーピングを巻いたことがあるかと思います。
それだけ野球では手の疾患が多いのです。

今回はTFCC損傷、突き指、母指CM関節症に対するテーピングの巻き方を紹介していきます。

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TFCC損傷とは

TFCCとは三角線維軟骨複合体(triangular fibrocartilage complex)のことで、尺骨と手根骨の間に存在します。

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TFCCは
・尺骨手根骨間関節と遠位橈尺関節(DRUJ)の安定化
・尺骨手根骨間の荷重の緩衝
に寄与しています。

DRUJの安定化には橈尺靭帯が最も寄与しているため、橈尺靭帯へ断裂が及ぶとDRUJは不安定となります。

■受傷機転

TFCCの受傷機転は転倒、手関節を捻るなどの外傷や尺屈回内外の繰り返しのオーバーユースなどがあります。

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■目的

TFCCのテーピングでは疼痛が誘発される尺屈回内外の動きを止めていくように巻いていきます。

TFCCに対するテーピングの巻き方

上記で述べた通りTFCC損傷では「尺屈」や「回内外」がメカニカルストレスとなることが考えられます。
そのためこのストレスがかからないようにテーピングを巻いていきます。

TFCCのテーピング

ーポイントー
1.尺屈制動テーピング
2.DRUJ安定化テーピング

①テーピングの端を3~4cm程を半分に切り、母指を包むように貼ります。
②手関節を軽度橈屈位としテーピングを近位に向かって貼ります。
④DRUJを固定するためテーピングを前腕遠位に1周巻いて完成です。

突き指とは

突き指はスポーツ外傷の中で発生頻度の高い怪我と言われています。

スポーツ外傷の部位は①手・指の突き指②足関節捻挫③膝関節の捻挫・靭帯損傷の順で多かった。
               スポーツ外傷・障害予防ガイドブックより

また球技で発生することが多く、別名”baseball finger”とも言われるほど野球では発生が多い怪我です。

突き指は主にPIP関節を痛める場合とDIP関節を痛める2パターンがあります。

PIP関節
PIP関節の過伸展により掌側板が損傷していると言われています。
一般的にはこちらの突き指が多いかと思います。
またキャッチャーの親指の突き指もこれにあたるかと思います。

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DIP関節
DIP関節の過屈曲により腱性槌指や骨性槌指となると言われています。
腱性槌指や骨性槌指の場合はDIP関節の自動伸展が出来ません。

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病態を知るとよく言われる「突き指は伸ばしたら治るよ」といったのものは病態から考えると絶対に行ってはいけない対処法と言えます。

■目的

前述した通り突き指には主に2パターンあるのでそれぞれに対するテーピングを紹介します。

PIP関節の場合は伸展によってより掌側板が伸張されてしまうので軽度屈曲位で固定するテーピングを行います。

DIP関節の場合は屈曲によって末節骨の近位へ離開ストレスがかかり転移してしまう恐れもあるので伸展位で固定するテーピングを行います。
こちらの場合はすぐ医療機関への受診が必要になりますのでご注意ください。

テーピングの固定
PIP関節→軽度屈曲位 (掌側板へのストレス軽減)
DIP関節→伸展位   (末節骨近位の離開ストレス軽減)

突き指に対するテーピングの巻き方

1.PIP関節の固定

PIP関節の突き指テーピング

①PIP関節を軽度屈曲位とし、中節骨と基節骨の中央辺りにアンカーを巻きます。
②縦にテーピングを貼ります。
③PIP関節が交点となるようにXサポートをします。
④①と同じようにアンカーでテーピングを固定して完成です。

2.DIP関節の固定

DIP関節の突き指テーピング(副木)

副木や副木の代用となるものがある場合(動画はアイスのスプーン)
①副木をDIP関節の腹側に当て、伸展位に固定します。
②副木がズレずDIP関節が伸展位保持出来るようテーピングで固定します。

DIP関節の突き指テーピング(バディー)

副木の代用となるものがない場合
①末節骨と中節骨の中央にアンカーを巻きます。
②DIP関節中心の背側が交点となるようにXサポートをしDIP関節を伸展位に保持します。
③隣接した手指を副木代わりとしてバディーテープで固定して完成です。

3.母指の突き指(特にキャッチャー)

母指の突き指テーピング

①母指MP関節を軽度屈曲位とし、基節骨腹側から縦にテーピングを貼っていきます。
②MP関節をXサポートするため、基節骨背側からMP関節に向かって螺旋状に巻いていきます。
③反対側からも同じように巻いていきます。
④キネシオテープでカバーするとはがれにくくなります。

母指CM関節症とは

母指CM関節とは親指の付け根の関節のことを指し、大菱形骨第一中手骨で関節をなしています。

母指CM関節

母指CM関節の特徴として、関節の形状が鞍関節であることから2軸性の運動軸を持ちます。

母指CM関節の運動方向
屈曲ー伸展
内転ー外転

母指の運動には長母指屈筋、長母指伸筋、短母指伸筋、長母指外転筋、短母指外転筋、短母指屈筋、母指対立筋、母指内転筋と多くの筋が関与してします。
そのため、他の手指と比べ関節面に過度の力がかかりやすいとされています。
臨床的な症状としては母指に力を入れたときに痛みを感じ、屈曲・内転方向へ過剰運動を認めるケースが多いです。

■目的
母指CM関節が屈曲・内転位を呈している場合が多いため、テーピングは伸展・外転方向へ巻いていきます。
痛みの強さによっては安静目的として固定するもの有効であると考えられます。

母指CM関節症のテーピングの巻き方

母指CM関節症のテーピング

①母指を伸展・外転位に保持させ母指背側からCM関節に向かって縦にテーピングを貼っていきます。
②約20㎝程に切ったテーピングの中央を母指基節骨の腹側に貼り、CM関節部で交わるクロスサポートするように貼ります。
③②のテーピングを少しずらして同じように貼っていきます。
④手首を1周巻いて完成です。

最後に

野球現場では手のケガの処置をすることが多いと思います。
みなさんの今後の活動に少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました!






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