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「1回限り。解約不要」と広告した定期購入(サブスク)業者が事実相違で行政処分
ネット広告で「1回限り。解約不要」というコピーを見かけたら、普通の感覚なら単品購入であって定期購入契約ではないと受け取ります。
バナー広告をタップした遷移先のチャットボットで購入手続きをして、その際に表示される最終確認画面にも定期購入であることは表示されていません。
でも、実際には複数回の商品配送が行われ、その段階で初めて定期購入契約(サブスクリプション)になっていることが判明します。
そんなスキームでの美容クリームのネット通販を行っていた事業者に対し、特定商取引法に違反するとして消費者庁が業務停止処分(6ヶ月)を下しました。
特定商取引法違反の通信販売業者(美容クリーム販売)に対する業務停止命令|消費者庁(2024年12月23日)
本件では以下の3つの処分事由が示されています。
(1)誇大広告(優良誤認)(第12条)※効果効能
(2)誇大広告(事実相違)(第12条)※1回限りと広告
(3)最終確認画面の表示不備(第12条の6)
これらはネット通販の定期購入ビジネスで頻発している行政処分の内容といえます。
【参考】
ウェブ運用の落とし穴。NO.1表示、ステマ、最終確認画面の不備に要注意。|遠山桂note
化粧品で効果効能を過剰に表示(優良誤認)したり、定期購入ではないかのような虚偽の表示(事実相違)をしたり、最終確認画面の表示義務事項の不備といった内容は、繰り返し処分が行われてきたものです。
このようなスキームで通販ビジネスをしていれば確実に処分がされるという見本のような違反ぶりといってよいでしょう。
この処分例について、詳細に解説します。
(1)誇大広告(優良誤認)(第12条)※効果効能
本件では、商品の使用前後の顔面の画像とともに以下のようなコピーを表示していました。
「\年齢・遺伝関係なし/塗るだけでシワがピーンッ!!」
「本当に塗るだけで顔のシワが完全に消えた!?んです!!」
「白雪若肌がどんなシワでも塗るだけで無くせる理由…」
「だから塗るだけでシワがスーッと消えるんです!」
「シミの原因となるメラニンを溶かしてくれるので...塗るだけでシミ完全消滅!?」
![](https://assets.st-note.com/img/1734937614-Y5Z2LlvJjxMU76X1HFtbEiPQ.jpg)
このように同社が販売している美容クリームを塗ると顔面のシワやシミが消えると広告したわけですが、消費者庁がその裏づけとなる資料を提出させたところ、提出された資料は合理的な裏付けになるとは認められないとの認定がされました。
これが優良誤認となり、特定商取引法第12条が禁止する誇大広告にあたるとされました。
こうした医療・健康に関する表示については、合理的な裏付けになると認められる資料とは、大学や研究機関における豊富な実証と査読を経た論文のレベルが求められるため、一企業が独自調査した程度の資料では裏付けと認められることはほとんどありえないようです。
そのような根拠の乏しい資料で医療・健康に関する効果効能を標ぼうするのは、ほぼ自動的に優良誤認と認定されることにつながり、ネット通販事業者の自殺行為に等しいといえるものです。
このような根拠を示すことができない過剰な効果効能の標ぼうは絶対にやってはいけない表示です。
(2)誇大広告(事実相違)(第12条)※1回限りと広告
本件では、バナー広告で「一回限り 解約不要 1,980円」との表示を行っていました。これは誰もが定期購入契約ではないと受け取る内容といえます。
しかし、このバナー広告をタップして遷移するランディングページやチャットボットページより申込をすると定期購入契約に同意する形式となっていました。
![](https://assets.st-note.com/img/1734937692-gvbFIlD5OsB0o9V13ZUXxm4E.jpg?width=1200)
これは広告では定期購入ではないと表示しつつ、ランディングページでは定期購入に申込をさせるものであり、表示と実際の内容が異なる事実相違と認定され、特定商取引法第12条の禁止する誇大広告にあたるとされました。
このような消費者の意図とは異なる操作に誘導する広告や画面構成はダーク・コマーシャル・パターンと呼ばれ、不意打ち的な定期購入契約への誘導が特定商取引法第12条の誇大広告禁止規定に抵触すると認定された意味は大きいといえるでしょう。
【参考】
ダークパターン規制の本丸は定期購入。来るデジタル規制に備えて広告と規約の適正化を|遠山桂note
(3)最終確認画面の表示不備(第12条の6)
本件のチャットボットページ上で定期購入契約の申込みを受けた際に表示される最終確認画面において、商品の分量、販売価格、代金の支払の時期及び方法、引渡時期並びに定期購入契約の解除の条件と方法が表示されていないことが認定され、これが特定商取引法第12条の6の最終確認画面の表示義務違反とされました。
![](https://assets.st-note.com/img/1734937778-bPzLc3aQMl0UBxtDKAWih4Ik.jpg)
特定商取引法第12条の6と政令・省令において、通販契約の取引における最終確認画面には(1)商品分量・(2)価格・(3)支払時期と方法・(4)引き渡し時期、提供時期・(5)解約条件・(6)申込期間について漏れなく表示する義務が定められています。
本件の最終確認画面には利用規約が表示されていましたが、表示義務事項の6項目がわかりやすく表示されていなかったため、表示不備と認定されました。
利用規約は長文となることが多く、その利用規約の全文を表示しただけでは表示義務事項の6項目を直ちに確認することはできません。
この重要な6項目は、スマートフォンの一画面内に収まるよう、申込ボタンの付近に判読できる文字サイズで表示しなくては、適正に表示したことにはなりません。
なお、最終確認画面の表示不備については、同法第15条の4にて消費者による契約取消権が認められています。
本件の最終確認画面の表示不備を根拠とした契約取消権が主張されれば、販売事業者は応じなくてはならなくなります。
このように最終確認画面の表示不備には、業務停止処分や罰金、消費者の取消権の対象になるなど、販売事業者にとってはフルコースのペナルティが控えていることになります。
通販事業者は、特定商取引法第11条の取引条件の適正表示とともに、第12条の6の最終確認画面の表示義務事項への対応の2つは万全にしておく必要があります。
【参考】
通販の定期購入契約の利用規約(雛型)と解説書|遠山行政書士事務所
まとめ
インターネット・ビジネスは誰もが簡単に始められるという優位点があります。その一方で、インターネット取引に関する法令やルールについて把握をしていない未熟な事業者が参入しているという面もあります。
他の業者がやっているから大丈夫だと思って、過剰な広告表現や不適切なサブスク誘引を行うと特定商取引法違反として処分対象になるリスクがあります。
特定商取引法の通販ルールを学習し、適正な広告表現と取引条件の表示を明確に行う対応をする必要があります。
適正な表示を行って、顧客から支持されるビジネスを目指しましょう。
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本記事の筆者(行政書士・遠山桂)が解説するインターネット・ビジネスを行う際に必要な表示事項や利用規約の雛形を下記テキストリンク先ページにて販売しております。
特に定期購入契約(サブスク)のビジネスを行う場合には必須の雛形になります。
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