『お手紙』
曲がりくねった山道を駆け下りると、家がだんだんと増えてきて、視界が狭くなってくる。最後のカーブを曲がったらすぐに、最初の信号機が見える。
二車線の道路とつながる交差点。
その角にある郵便局の、赤いポストに私は手紙をコトンと入れた。
高い位置にある口に届くように、ちょっと背伸びをして手を伸ばす。
油断するとスカートの裾からふわっと尻尾が出てしまうから、とっても気をつける。
自分の姿をカーブミラーでチェックして、誰にも見つからないうちに急いで山道に向かって駆け上がった。
赤いポストから回収した郵便物を振り分ける作業中、葉っぱを見つけた。
おっと、またか。
僕は葉っぱを手に持って、んんっっと少し気持ちをかける。
葉っぱは白いハガキになって、届け先と文面が人間の文字に変わる。もちろん切手もぺたりと貼られている。
油断すると頬からピンとヒゲが伸びるから、いけないって両手で隠したりして。
終(383文字)
ショートショートガーデンに投稿した400字の作品です。
こんな生き物が人間の世界にそっと紛れ込んでいるような気がします。
タイトル画像:ぱくたそ
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