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『ドングリ』

コロン。コトン。コツン。

小さな爆弾のような形をした実が次々と落下する中で、僕はドングリを拾い集めていた。

なるべく重くて穴が空いていないもの。色、ツヤ、形にこだわって選別する。

特別大きくて存在感のあるドングリが目に飛び込んできた。表面についた土汚れを親指で軽くこすり取ると、ツヤのある濃い茶色が太陽を反射してキラッと光った。

家に帰ると父が庭のバケツに水を張って、僕が持ち帰った戦利品を投入した。沈んだドングリだけを拾い上げる。特別大きなヤツも残っていた。

植木鉢に埋めた10数個のうち、出た芽は7つ。

目印をつけていた特別な一つも元気の良い葉を広げ、父に頼んで庭の片隅に植えてもらった。
残りの6つは植樹のボランティア団体に渡した。

***

「どんぐり!」

20年後、僕の肩車に乗った幼い息子が大きく育った木の下でドングリを見つけて手を伸ばす。
息子の指先が枝に触れて、ドングリは落下してコトンと鳴った。

終(394文字)

【あとがき】
ショートショートガーデンという、400字以内の創作小説を投稿するサイトで発表した作品です。

文章をもっと読みやすく書き換えて、絵本の題材にしようかなと構想中です。
ドングリ、イラストの題材としてもかわいいですよね。

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