『寝子』
仕事を終えて帰宅した僕を出迎えもせず、彼女はいつものようにソファで丸まって寝ていた。
「ただいま」の声に首を持ち上げてチラッと僕を見ると、ソファの上で「んーー!」と大きく伸びをして、そのまま再び眠り始めた。
まるで眠ることが彼女の仕事のようだ。
外で夕飯を済ませてきた僕は冷蔵庫からビールを取り出し、彼女の身体を少し押しのけてソファに腰かけた。ふわっとした細い毛を指先で弄ぶ。
彼女が足で僕をぐいっと押してきた。うっすら目を開けて、不満そうな視線を向けてくる。
腹が減ったのか。
ピンクの深皿にご飯をザラザラと入れて出してやる。
彼女が食事をする間、僕はシャワーを浴びた。
髪を乾かして布団に入ると、彼女もソファを離れて僕の腕の中に潜り込み、本格的に寝に入る。
本当に寝てばかりだな。
彼女の背中に手を回す。薄いシャツ越しに背骨がコリコリとあたる。クセになるこの感触。
僕も次第に眠りの世界に落ちた。
終(389文字)
400字の投稿サイト、ショートショートガーデンで以前書いた作品です。
https://short-short.garden/S-uCTdFp
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