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2024年J1第25節 アルビレックス新潟 - ジュビロ磐田 雑観

磐田目線で振り返ります。

先発

新潟

フォーメーションは4-4-2(4-2-3-1)。中段前のリーグ戦からのスタメン変更は1人。GKの阿部が外れ、小島が入る。小島は肩の負傷から復帰して6試合ぶりのスタメン入り。ビルドアップの貢献に大きく期待出来る左利きのGKだ。

磐田

フォーメーションは4-2-3-1。中断前のリーグ戦からのスタメン変更は4人。伊藤、松原、ブルーノ·ジョゼ、ペイショットが外れ、グラッサ、西久保、クルークス、山田が入った。よりトップ下の色合いが強い山田を前線に起用。
クルークスはこれが加入後初先発となった。また、出場停止の松原に替わり、いつもは右SBを務める植村が左SBに廻り、右SBには西久保。また、C大阪から7月29日に加入した渡邉がベンチ入り。

前半

前半2分

磐田のビルドアップを阻害して新潟がペナルティエリア手前までショートカウンター発動。長倉がドリブルでグラッサをかわしたところでPK判定。

前半4分

主審はオンフィールドレビューを実施。オンフィールドレビューの結果、主審は判定を変更し、ノーファウルに。

立ち上がりから磐田は、丁寧に下からのビルドアップを行いたい様子だが、上手く前進できない。これが直接的に新潟のショートカウンターに繋がったシーンだった。

磐田はリーグ中断前に上からのロングボールによる前進に傾倒し、下からの前進とのバランスを失っていたところで中断を迎えた。中断期間にはこの下からの前進=ビルドアップ(相手の列を1列ずつ越えて前向きの選手を作ること)を整備してきたようだが、改善は大きくは見られていなかったた。

先発の人選もビルドアップ前進仕様にやや傾倒していたことで、持っていたはずのロングボールによるセカンド回収の前進も失い、上からも下からも前進出来ないという負の状況に。

相手である新潟は、中断期間には守備=ボール非保持を整えてきたことで、この両チームの準備が新潟側に良い方向で噛み合ってあってしまった。

特に新潟の非保持ツートップ(4-4-2)のコース限定、カバーシャドウは見事で、高いインテンシティを発揮していた。磐田の最後尾が時間とスペースを創出出来ないので、新潟のツートップは磐田のCBとGKにはボールを持たせて、2DHを意識して消しながら外へ誘導する。外へ誘導すれば今度は縦の関係となり、ボールサイド側で陣形を狭くしてボールを奪う。

ボールを中心に移動して外に誘導する新潟のボール非保持、上原は背中で消す

磐田は中断期間に準備してきたことから、真面目に忠実にビルドアップをしようとして、原則的に短い距離のパスを選択するので、新潟の非保持は守りやすく、見えている視野の中で相手を潰せば良い展開に。陣形は必然的にコンパクトを維持できる。

磐田は、サイドの狭いところでボールの受け手が根性で状況打開するしかなくなってしまった。


前半8分

右サイドからクルークスが西久保と二人称の関係でドリブル前進。クロスを供給するが、新潟の最終ラインにクリアされる。

立ち上がりは、長いボールの押し付け合いから敵陣侵入して、クルークスのクロスが見ることが出来たが、立ち上がり以降は、ほぼ見ることが出来なかった。

前半14分

 ペナルティエリア手前から新潟が時間とスペースを上手に操り、磐田の選手を引き付け、秋山が出したロブパスに反応した宮本がペナルティエリア中央から右足で反転バイシクルボレーをゴール左下に沈めた。新潟の先制ゴール。

磐田の最後尾の早すぎるボールリリースから苦し紛れのキックをカットされてからの新潟の攻撃。(三浦も復帰してからビルドアップで貢献したいという意識が強すぎるのか、受け手に時間とスペースが無い状況で早くリリースすることが多い)

磐田も新潟と同様にボール非保持のベースは4-4-2だが、その戦術は大きく異なる。磐田は初期配置としての4-4-2を基準としながらも、人やスペースを受け渡しながら管理する。
DHがツートップの脇や、ライン間に渡り膨大なエリアを担当する一方(だから上下動に強い上原とレオが起用されているとみます)で、そこを突破されたときのCBのカバー範囲も広い。

この試合ではクルークスが起用されたが、この仕組みにおける非保持の受け渡しは上手くいっていなかった。失点シーンも、クルークスからすれば「え?」というリアクション。秋山には誰がハントするのか、決まらない瞬間が発生し、2DHが慌てて寄せるが(2人でいく必要はない)、その寄せた分のスペースを宮本に使われた。
受け渡しの連係ミスと言えばそれまでだが、人が変わっても機能する戦術の浸透度ではなかったのだろう。あなたがそう動くなら僕はこう動くよという約束、原則はあったのかどうか??

人は居るがボールウォッチャーになるという。なんちゃってゾーン守備の典型になってしまった。
勿論、こうやって一つ一つ相手を引き付けてからボールを放すのが、新潟がずっとやってきたことで、新潟を褒めるべきところでもある。それだけ質の高いボール保持を見せるチームだ。J最高のものだと思います。そのチームに急造のメカニズムで臨んでも、やられてしまう。そういうことである。

前半27分

 
左サイドからドリブルで山田を交わし、内側へ進入した秋山がペナルティエリアやや手前から右足でミドルシュートを放ち、そのボールが上原に当たりゴール右下に吸い込まれた。新潟の追加点。

試合をコントロールしている新潟が追加点を取るのは必然的な展開だった。アンラッキーではない。必然。

前半34分

磐田のCBがボールを運ばず、プレッシャー下のDHにボールを付けてハーフターン出来ず、カウンターを受ける。DAZNだと34:25
ビルドアップに於けるプレーモデルの希薄さを象徴している場面だった。

前半48分

植村がペナルティエリア左から左足で枠内にクロス(シュータリング??)を放つも、枠にあたる。100本打って1本入るかどうか?というような軌道。
磐田は狭いサイドから強引な攻撃しか出来ず、この場面以外は、前半にチャンスらしいチャンスは全く無かった。新潟にとっては完璧とも言える前半。

後半

ハーフタイムに磐田はメンバーチェンジ。

10山田OUT→99MペイショットIN
7上原OUT→14松本IN

ペイショットを入れてロングボールでの起点を作る。精彩を欠いた上原に変えて松本を入れる。

後半8分

新潟右サイドから松田がゴール前にクロスを入れる。これに反応した宮本がペナルティエリア中央からシュートを放つも、ゴール右に外れる。

新潟は、ゴール前を横切るパスが増えて、合えば1点という場面が何度も訪れるが仕留めることが出来なかった。

後半12分

磐田は両翼を投入。
左サイドはウイングらしいウイングになった。

40金子OUT→31古川IN
23クルークスOUT→19ブルーノ·ジョゼIN

早くもファイヤー気味の強気の横内監督の交代策。

後半19分

相手陣中央からカウンター。ドリブルで進入した古川がペナルティエリア手前から右足で枠内にシュートを放つも、藤原にブロックされる。

この時間前から体力的なことが要因なのか新潟の非保持が僅かに緩みだし、試合がややオープンになってくる。前半とは違い、ダイレクトなロング前進を魅せることで新潟の陣形を広げることが出来ている様にも見えました。

後半21分

ペナルティエリアの左脇からの古川のクロスに反応したジャーメインが消える動きでフリーになり、ペナルティエリア中央からヘディングでゴール右下に決めて1点を返す。 

ブルーノ・ジョゼのハーフスペースを閉めたインターセプトから始まった攻撃。ジョゼは内を締めてから外にスプリントするorサイドバックに受け渡すのが整理出来ている。

新潟はCBがチャレンジングな縦パスを打ち込む展開だったかは評価が分かれそうだ。

--途中出場で狙いは?
古川陽介--相手の右SBの選手が攻守にわたって、前半からすごい運動量を出していたので、そういう出力の部分が後半落ちてきているなっていうのを感じていました。そこで自分のところで違いを作ろうっていうのは、みんなの共通理解だったと思うので、そこで反撃の狼煙を上げるみたいな1点を取れたかなと思います。

Jリーグ公式

そして右SBの藤原は疲弊していたのか、古川についていけていなかった。

後半41分

松本をワンアンカーでシャドーに渡邉とジャーメインを並べる超ファイヤーフォーメーション化。

16レオゴメスOUT→55渡邉IN

後半43分

ペイショットの危険なスライディングタックルにレッドカードが提示される。

相手競技者の安全を脅かすタックルまたは挑むこと、また過剰な力や粗暴な行為を加えた場合、著しく不正なプレーを犯したことで罰せられなければならない。
いかなる競技者もボールに挑むときに、過剰な力や相手競技者の安全を脅かす方法で、相手競技者に対し片足もしくは両足を使って前、横、あるいは後ろから突進した場合、著しく不正なプレーを犯したことになる。

競技規則より

競技規則通りの妥当なレッドカードかと思います。当たったか当たってないかはファクトとして重要ではない。感情はコントロールしなければならない。2試合出場停止は非常に痛いです。

後半46分

渡邉りょうのスルーパスに抜け出したジャーメインがペナルティエリア中央から左足でループショットを決めて同点に追いつく。

古川がドリブルで運んでゲイン、新潟の陣形をスライドさせてから切り返して、真ん中に刺せたこと

松本がフリーランで相手を引き付けたこと

渡邉がボールが来た方から遠い足でコントロールして、ボディアングルと違う方向へ相手を欺くインサイドキックでスルーパスを通したこと

ジャーメインが駆け引きで相手のセンターバックの間でボディアングルを作り抜け出し、マイケルをブロック、ボールが来た方から遠い足でコントロールして、ゴールキーパーを確認してループシュートを放ったこと

それぞれの選手の献身と個人戦術が結集して貴重な同点ゴールを決めれたことは非常に大きなプレーになりました。

対する新潟としては痛すぎる失点になりました。完全に試合を支配して美しい攻守を見せながらの試合だっただけに痛恨。

--前半は良い守備から良い攻撃ができていたが、後半に変わった要因は?
秋山裕紀--前半に比べたらやっぱり後半はどのチームも体力的に落ちますし、そこでどう守備をしていくか、どう11人で守っていくかっていうところがサッカーにおいてはすごく大事だと、僕は思っている。そういう意味では、前半はみんなが走れるぶん、個で守れていた部分があったかもしれないけど、後半、走れなくなったところを選手がどうカバーするのか。どこの位置に選手がしっかり戻らなきゃいけないのか。相手がやってくることに対して、どうケアをしなきゃいけないかっていうところは、もうちょっと突き詰めていかないといけないかなと思いました。

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リードしてからピッチ上でロンドをするようにボールをもっと動かせなかったのか??それが出来るチームであるだけに疑問は残った。ボール保持が安定すれば、トランジションも安定させれたのではないか。ディフェンスに於いても体力的に落ちてきても11人が繋がれる戦術、保険は用意出来なかったのか??全ては一体。

松橋監督は試合後に球際を強調していた様だが、球際を作ってあげるのも監督の仕事だろうと思う。

また、一つ一つの対人に於ける踏ん張りの様なところは、選手の質という面で劣る部分はあったのかもしれない。新潟というのはそういう資金力であり、それが人件費となり、個の質ともイコールになる。

試合は2-2のドロー決着になった。

ビルドアップ問題

あまりにも不格好だった磐田のビルドアップ。最後にちょっと触れときます。
これは昨年から、と言うより長年ずっと変わらない。ここに着手できたのはスペイン人監督時代位だろうと思います。もうずっと言ってますがね。

ともあれ、はっきりと明確な強度不足に陥ったチームを、ハイエイジスカッド且つ前代未聞の補強禁止制裁の中で、強度を土台としたチームに立て直したことに加え、J1昇格という結果も残してしてくれた大恩人である横内監督以下スタッフには、これ以上(ビルドアップも仕込んでくれ)をなかなか求め難いというのは個人的な心情としては持ってはいます。

それだけ大きな負債をひっくり返して、さらにビルドアップもというのは、フットボールに於いて難しいハードルなのです。日本のフットボールに於いて所謂4局面で最も整備が難しいのが、ボール保持です。日本独自の特殊な育成環境から選手が供給されるため、ビルドアップが、そもそも上手くない。

試合の振り返りでも触れましたが、磐田はビルドアップに於けるプレーモデルの希薄さが挙げられます。そして個人、グループ、チーム戦術の不足。
選手の質、素材も足りない状況
です。

何せビルドアップに注力出来る状態ではなかったから。え?そもそも選手が走れません?そこからですか??から始まったチームです。まずは個々の強度を鍛えてトランジションを安定させることから。

ビルドアップを仕込める指導者を連れてくればビルドアップが出来るわけでもないし、ビルドアップに長けた選手をつれてくれればビルドアップが出来るわけでもありません。そんな単純なスポーツではありません。様々なことが複雑に絡み合うスポーツです。

ただ、この試合では、それでも疑問に感じることがありました。これは非保持にも言えたことですが、クルークスを使っての保持の形です。

クルークスは基本的にはタッチライン沿いに立ち、幅を作るのですが、西久保との斜めの角度がほとんどついていませんでした。クルークスが内に入ってくることもなく、西久保が内に入ってくることもなく、ただ的が減った様なシチュエーションが続いていました。シーズン序盤の様にSHが内に絞ることによる角度がどこへやら…

もう少し用意出来たんではないの?というのは不満があります。

最後尾でプラスワンが作れないのでDHが落ちて3+1の土台を作る。1DHは密着された上に、トップ下として振る舞う山田も降りてきて、さらに的が無くなる悪循環。相手のブロックの外でボールを持ってるだけになってしまっていました。 

ブロックの内側(オレンジ色)に入れない磐田

選手の質が追いつかないのは、理解出来るとして、レイオフ基盤でもう少し中断期間で用意出来なかったのか?ここははっきりと批判はしておきたいです。

次節はジャーメインとペイショットがサスペンションとなりますが、松原が戻ってくることで(戻ってきますよね?)植村が右で使えます。彼は個でプレス回避したり、磐田の選手が苦手な相手の矢印を折ることが出来るので期待出来ると思います。

上からと下からの前進のバランス、塩梅の調整を頭の中だけでもしっかりと行って試合に備えてほしいところです。

今回はここで締めにします。

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