同人CDのコストについて

最近、Xで同人CDの一枚の価格が1,000円で良いか?の様なポストを見ました。
同人音楽サークルの経験の無い方だと価格の付け方も迷う事があるのかな、と思います。
今回、原価の視点から同人CDの価格について語っていきます。
私の私見が混じる所も多々あり、サークルによって事情が異なる事もある為、参考程度として読んで頂ければと思います。

まず同人CDを制作するのにどの様なコストが掛かっているか知る必要があります。
主に挙げられる代表的なコストは以下の項目があります。

①CD制作費用
②ジャケット制作費用
③マスタリング費用
④楽曲制作費用
⑤イベント参加費用
⑥その他費用

上記項目は代表的な項目を挙げている為、他にある場合は個別に計上して貰えば良いと思います。
各項目について見ていきます。

①CD制作費用
純粋にCDに制作に掛かる費用です。
ここはかなり幅があります。
CD-R or CDプレス、CD-Rの場合は外注するか自分で制作するのか、等で金額が大きく変わってきます。
私が使用している業者のTECHTRANSの場合、CD-R/ジャケットフルカラー2P/盤面フルカラー/100枚の場合、税込み33,979円ですが、海外CDプレス/ジャケットフルカラー2P/100枚は69,410円と倍ぐらい金額が変わってきます。
自主制作の場合は個別にCD-R、ジャケット用の紙、プリンターのトナー、包装用の袋等の費用が掛かってきます。

②ジャケット制作費用
CDを手に取る時に一番最初に目に入ってくるのがCDのジャケットです。
そのジャケットのデザインの制作費用です。
音楽を作る事が出来るけど、デザインは専門外で出来ないと言う人や、もっとクオリティを上げたいと言う人は外注して制作して貰う事があります。
金額については依頼する人によってかなり差があり、追加でジャケットの表面だえではなく裏面に加えてCDの盤面のデザインも考える必要があり、追加で依頼するとなると費用が掛かります。

③マスタリング費用
楽曲制作とマスタリングは別作業と言え、サークルによってはメンバーで対応する事もあると思いますが、場合によっては外注する事があります。
金額は依頼先によって差があり、個人へ依頼、業者へ依頼で金額が変わります。
1アルバム単位でやってくれる所から1曲毎にいくらと依頼先で様々です。

④楽曲制作費用
楽曲についても自サークル外の方に依頼する場合は費用が発生します。
一人でCD1枚の楽曲制作がやりきれない、知名度のある方に参加して貰って宣伝効果を狙いたい等、目的は様々あると思います。
お友達で費用無しで合意が取れている場合は発生しませんが、基本的に外注した場合は発生する認識が必要です。
金額については人それぞれで相場いくらと言うのも難しい為、個別に依頼先に見積りして貰うのが良いでしょう。

⑤イベント参加費用
同人CDの場合は販売するイベントが決まっている事が多い為、イベント参加費用もコストに入れる場合があります。
この点に関してはサークルや人によって考え方が変わる事がある為、費用に入れない場合もあります。

⑥その他費用
録音するのにスタジオを借りた、業者にマスターデータを送るのに宅配便を使用した、歌い手/歌詞を依頼等、①~⑤に該当しない費用になります。
ここは割と人によって事情が変わりますので、ここの項目の詳細については触れません。

以上がCD制作に掛かる費用の凡その項目になります。
それでは次にいくつかのパターンに分けてCDの価格について考えていきます。
パターンを比較する為、制作する枚数は50枚に統一します。
細かい条件は備考にも記載しているので参考にして下さい。
価格については500円単位で切り替えてますが、これは計算しやすいと言う事で今回の試算でしようしていますので、600円とか850円とか細かい価格設定でも問題ありません。
お釣りとかの関係上、私個人は500円設定が楽かな、と思っていますが。

パターン①

CD制作以外は一切外注せずに自分でやりきったパターンです。
メリットはコストがかなり抑えられ、ジャケット等の印刷、包装面は業者が対応するので制作時のクオリティが担保されます。
デメリットとしては楽曲制作、ジャケット制作等の諸々の作業を全て自分で行わなければいけない事。
業者に依頼する関係上、日程に余裕が必要な事。
納期は業者によって様々ですが、必要なデータの納品が終わってから早くても1週間は掛かる所が多いのではないでしょうか。
工数的にはしんどいが見返りとしてコストはかなり安くなる。
画像の計算は一例だが、利益を気にしなければ500円/枚でもやれる価格となってくる。
今回は50枚全部売り切ると言う条件で試算しているので売り切れなければ余裕の赤字だが、価格が1,000円/枚となれば費用回収は24枚売れれば可能となるのでハードルはかなり低くなる。

パターン②


こちらは全て業者に頼らず制作した場合です。
自分が同人音楽を始めた頃は家のPCでCD-Rを焼いて、プリンターでジャケットと盤面を印刷していました。
この場合、コストに関しては一番安くなります。
その反面、全ての作業を自分で行わなければいけないのでかなり自分の時間が取られます。
50枚を作るとなると休みの日丸1日は平気で潰れます。
工程としてはCD-Rを焼きながら並行してジャケットを印刷、乾いてから裁断、盤面印刷、組み立て、包装となります。
昔より家庭用のプリンターのクオリティが上がったと言えど、業者でやってもらう印刷には勝てないのでクオリティは劣ります。
包装も業者がやるキャラメル包装の方がビシッとして見た目が良いです。
パターン①とパターン②で言えば手持ちのお財布と時間との相談になります。

パターン③


こちらはCD制作を外注、且つジャケットのデザインも外注に委託した場合です。
ジャケットの外注費はSkebで見かけるイラスト依頼で見かける価格を仮で設定しています。
人によってはもっと安くなったり高くなったりしますが、今回は一例の試算として見て下さい。
CD制作費の倍近い金額が載ってくるのでCDの原価が一気に跳ね上がります。
先程までは1,000円ぐらいの価格であれば余裕だったのが、1,000円では回収が不可能になってきます。
ジャケットは広告効果が高い上に陳列した時に一般参加者の目を引きやすい事から力を入れたくなる部分です。

パターン④


CD制作は外注で割と気が知れた友人3人に楽曲制作を依頼した場合です。
楽曲外注費が5,000円/人と言うはかなり安いと思いますが、一例として捉えて下さい。
このぐらいだと1,000円/枚に収まる感じになってきます。
この金額でもCD制作の外注費と同じぐらいの金額が原価に乗ってくるので価格上昇は避けられません。

パターン⑤


パターン①に対してジャケットとマスタリングを外注した場合です。
この場合はCD-Rにも関わらず2,000円/枚と言う価格に設定しないと回収出来ません。

色々なパターンを試算してみましたが、如何でしょうか?
今回の試算は50枚売り切れる前提となっていますので、売り切れなければ回収出来ない事もあります。
逆にもっと売れれば回収が容易になります。
原価と言う所で見るとCDを制作する費用以上にジャケットデザインやマスタリング等を依頼した場合の外注費が多い事が分かります。
原価を抑えたい場合はここを如何に抑えるのかが鍵になります。
ジャケットデザインは完全に音楽とは別分野になりますが、マスタリングに関しては昔に比べたら敷居は下がっています。
突き詰めればキリは無いですが、自動マスタリングツールの使用+微調整でやる事で外注しないと言う選択もあります。
クオリティとコストのバランスをしっかり考えて選択する事が大事だと私は思います。

同人CDと言う事であればビジネスでは無いので何処まで赤字を許容するのかも判断の一つになると思います。
可能であれば利益が出て、次の活動に回せる資金が出来ると良いとは思いますが、そこまで出来るサークルは多くはありません。
CDの販売価格も相場がありますので、相場より高すぎると手に取って貰えない可能性も出てきます。
価格と売れ行きの狭間で悩む事が多いとは思いますが、そこはある程度割り切って考える必要があります。
その為、価格を決める為に何を優先したいのかを自分なりにはっきりさせて、何を許容出来るのかを決めて考えればある程度決めやすくなるのではないかと思います。

今回は比較に入れませんでしたが、パターン⑥としてレスで100枚作った場合になります。


こちらは参考程度の試算と思ってみて下さい。
将来的にプレスで作りたいと思った時のコストイメージとして見て貰えればと。
プレスは100枚単位の業者が多いので先程のパターンとは違い100枚としています。
プレスだとCD制作費が跳ね上がる、且つ最低制作数も上がるので売り上げなければいけない数量のハードルがかなり高くなります。
100枚ぐらいだと中々大変になると思います。
自分が売れる数量と相談しながら決めていくのが大事だと私は思います。

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