祈念

白壁のそこらじゅうを
張りつく蛸のすがた
我が眼のように

しづかな夜更けに
九つのたましいと
月に吠える猫の尻っ尾が

手錠をやわらかく撫でる

腕をひく 恋をした彼に

誰よりも心を寄せゆうらりと融ける陽に

夜の区別さえ付かず酩酊

遭難する時計は腕より控へめの輝きをもち

裸の足で固めた路ゆく

手を繋ぎおるがんの音を想い出して色をなぞる

爛れた女になったわ。

それでもこれを純愛と呼ぶのならば、悪くはないのだらう。 

夏の思ひ出は犯される

ひりひりと焼け付くような皮膚に

あなたはゆっくりと触れてエタノールを塗る

甚くしみるあたしを見て

綺麗と口紅を引いてください。

2020.11.10 2:45 過去作編集




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