駆けゆく

走れ!走れ!走れ!走れ!
あなたは止まっちゃあいけない

霧立ちこむる朝
鴉は鳴かない
昨日食べ潰した柘榴が
恨むような目でこちらを見ている

いつもと違うくうきのにおいに
私は少し息を切らしていた

信号が黄色から赤になる瞬間
わたしが歩道を切って歩く
「とまれとまれとまれとまれ!」


「吐き気有、体調不良」


ひとりぼっちの
白いシーツの上
だき抱える自分は
なんて幼いんでしょう。

孤独な自分を
また、広い両手で包み込み
あたたかさを分け合う
そのような人が
何故いないんでしょう。

手足の先はまるで
血が届いていないようだ
吐き気を飲み込んで
自分は白いシーツに
沈んでゆく 沈んでゆく

2020.06.07

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