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2025年の新規事業市場予測

今回は私が予想する2025年の新規事業市場の動向について書きしたためます。最下部にまとめを記載していますので、せっかちな人はスクロールください。

白石個人の2024年の振り返り↓

2024年の市場動向

まず2024年の新規事業市場の動向です。
まず前提として「新規事業市場」なんて市場はそもそもありません。
私が勝手に使っている言葉です。では何故市場がないと言い切れるのか。
それは、データがほとんど存在していないからです。

近しいデータとしては、矢野経済研究所が毎年発表している『国内企業のIT投資に関する調査」があります。これは「IT市場」の規模を算出している数値です。IT企業の売り上げ総数、と言うことではなく「企業がITに投資している金額」も含んで市場規模としています。

矢野経済研究所HP(https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3678)より
矢野経済研究所HP(https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3678)より

このデータを見ると、年々「企業がDXをはじめとしたITに投資額が増えており、企業数も増えている」「DXをはじめとしたITサービスを提供している企業が成長しており、企業数も増えている」と言うことが安易に読み解けます。

注目したいのは前者です。IT投資する企業の中に「レガシー業界/企業」が増えてきています。これはIT市場からは距離があった企業も、世の中のDXの流れを汲んで、必要性を感じIT投資に動き始めていると言うことがわかります。

後述しますが、レガシー業界(出版、物流、製造、建設などなど)にITやDXの波がIT業界から遅れて2-3年後に来ていることは非常に注目点です。


もう一つ、新規事業市場の数値的推測のできるデータとしてVCの投資額のデータがあります。これは厳密には新規事業ではありませんが、新規事業創出のトレンドの一つに「M&A」があるため、「国内にどれだけ"事業"が増える見込みなのか」については参考指標になります。
ただ、今回は事業数よりも「投資額の推移」の方が着目したい点です。

STARTUPS JOURNALより(https://journal.startup-db.com/articles/investmentreport2024-firsthalf-trailer)

こちらは、半期毎にスタートアップ企業の資金調達金額を指し示したものです。2024年の上半期までの推移を見ると、全体的な投資金額も投資社数も減少傾向です。これは、アーリーフェーズへの投資が増えてきているためです。
要するにスタートアップ市場は、このままいくと徐々に"刈り取られ尽くす"状態になります。一定規模以上の企業への投資は完了し、より前倒しでの投資がトレンドになってきています。

更に参考となるものとして、毎年2回開催されている「StartupJapan EXPO」という展示会の情報です。ここは私の定性的かつ肌感覚な情報になってしまい恐縮なのですが、スタートアップのトレンドを知るにはもってこいの場です。
2024年の春開催と、秋開催で大きくトレンドが変化したなと感じました。それは「大企業向けの新規事業支援」のサービスを提供する企業が3倍以上に増えていました。それもスタートアップ企業が、です。

・新規事業のアイデアレーションを生成AIで支援する
・事業計画書やプレゼン資料を生成AIで支援する
・事業検証をアウトソーシングチームで支援する
・スタートアップ立ち上げを伴走支援する(Alpha Drive社やゼロワンブースター社などの有名企業)

などがメインではありましたが「大企業の新規事業」にビジネスチャンスがあると睨んでいる企業がこれだけ多いのかと驚きました。
冒頭のIT市場への投資、と同じ現象が2025年以降起きると私は読んでいます。「DX」という言葉が全業界に影響をもたらしたように「新規事業」も横断的に、かつ爆発的に広がっていくものと思います。

スタートアップ市場への投資が「前倒し、減少傾向」であることに対して、大企業の新規事業市場への投資が「積極的、拡大傾向」にあります。10年ほど前は全く反対の情勢でしたので、10〜12年スパンで繰り返していくものだと感じています。

10年前から続いた起業トレンドを乗り越えた起業家の方々が、今度は新規事業の壁と戦うことになります。一方で、大企業でこれから新規事業を立ち上げていった方々が2035年には「起業家」になっているかもしれませんね。

ここは憶測ですが、VCが「新規事業」の領域に参入してくる可能性も大いにあります。投資先がスタートアップ市場には年々なくなっていっているので、自然の流れといえば自然の流れかもしれません。そういったVC界隈のプレイヤーが「オープンイノベーション」や「CVC創設」のようなムーブメントを作り出すことも予想しています。

また、海外トレンドの波も見過ごせません。日本はアメリカやヨーロッパで流行した流れが2-3年遅れでやってくると言われています。後述の生成AI技術も当たり前のように入ってくるでしょう。ただそれ以上に私は「スタートアップと組んでいる大企業ってイケてる」という流れが少しずつ訪れると読んでいます。
海外では大企業が新規事業を立ち上げたり、技術革新を起こす時にスタートアップと組む事が当たり前になっています。つまりオープンイノベーションです。この流れは入ってくると予想しています。問題なのは、それを推進できる者が国内にはまだまだ少ないこと。今後、オープンイノベーションを推進できる大企業の社員、そしてスタートアップの社長は重宝されるでしょう。

生成AIの波

DXということが広まった時と同様のことがもう一つ予測できます。それは「生成AIへの投資」の波です。ある意味言葉の一人歩きを既にしてしまっておりますが、新規事業というよりも既存オペレーションの改善を目的に生成AIに向けて投資をしていく企業はこれから爆発的に増えていきます。

生成AIを活用した新規事業ももちろん各社検討していきますが、しばらくの間は「既存事業にAIを搭載する」「AIを搭載するために外部のAI企業と組む」といった流れがまず来ると予想しています。
つまり、純粋な新規事業と生成AIが絡み合うのはもう少し先の2026年以降であり、今年は「既存事業×生成AIへの投資」が各社拡大していくでしょう。

ただ、2000年代初頭にインターネット普及が起こった時と同様に、生成AIによるイノベーションは目を見張るものがあります。感覚的にはDXよりも革新的です。既存事業の進化、既存事業オペレーションの改善への掛け合わせといえども恐ろしいほどの進化が見込まれます。
既存事業からでも「業界の刷新」が起こる可能性が高くなります。

SaaSモデルの終焉の始まり

また、年々サービスの短命化のサイクルが早まってきております。苦労してリリースし、顧客を獲得→CSで大事にオンボーディングしていたとしても、競合がどんどん類似サービスを出したり、革新的なサービスが市場に投下されていき、顧客の流出が行われていきます。
要するに2025年は「toB向けSaaSビジネス終焉の始まり」が始まります。
顧客を離さない、使い続けてもらえるといったSaaSモデル、そして数年後にはtoCにおけるサブスクモデル神話も崩壊を始めるでしょう。
ビジネスモデルに加えて課金モデルのイノベーションも求められるタイミングが来るでしょう。ファーストペンギンは、まだ出てきていません。

toBにおいては、顧客側が事業者側よりも圧倒的に力を持つようになり、選択肢が溢れます。
今まで通りの戦略ではチャーンレートもCVR(conversion rate)も維持できなくなってくるでしょう。防ぐためにCSへの投資を各社増やしていく未来が予測できます。

新規事業市場は戦国時代に突入する

各社一つ一つの事業で長く利益を作っていくことを固執せずに「継続的に一定以上の規模の新規事業を作り続けられるか」が問われる時代に突入します。2025年は「新規事業戦国時代」が必ず来ます。更に先の2035年にはこの戦国時代は終焉を迎え、この10年で支持されたサービスが巨大サービスとして生き残っていくことになります。

つまり、各社は2035年時点で顧客に支持され続けている新規事業を、この10年の間にどれだけ生み出すことができるかが、肝になります。
前述の通り、一つの事業に固執するのではなく「事業ポートフォリオ」の戦略をしっかり立てることが求められます。2035年までの10年間は、100億の事業を一つ作ることよりも、10億の事業を10個作ることを戦略に置いた方が、結果的に企業成長に繋がります。

更に、業界の壁が一層無くなると予想します。例えばHR大手企業が運送業界の事業を立ち上げたり、IT企業大手が製造業や農業分野に進出したりが"当たり前"になります。これにより「競合」という概念が変化します。
各社、既存事業を行っている業種業界とは全く異なる、本当の意味での「新規事業」に挑戦していくようになります。

でなければ、企業存続が危ぶまれるようになるからです。

自社の業界や領域に、別業界別業種の他社がガンガン参入してくるのですから。防戦一方の戦い方を強いられることになるのです。
既存領域のエンハンスに関しては、前述の「既存事業×生成AI」にとどめて、全く異なる飛地に事業を立てられるかが重要です。

ただ、自社にとっての新規事業は、どこかの企業の既存事業です。思いつきや「えいや!」で太刀打ちできるものではありません。飛地への新規事業立ち上げの難易度も年々上昇していきます。
この流れのノウハウを社内で蓄積できている企業は強いです。有名どころだとDMM社などは複数業界に複数ドメインを立ち上げているので、向こう数年は事業ポートフォリオとしてはお手本にするべき企業になるかもしれません。
また、海外から当たり前のようにサービスが到来されてきます。戦う相手は国内の企業だけではなく、今市場にいない外資の存在にも目を向けなければなりません。
いかに骨の太い新規事業を作れるかが肝です。

現在はITやWEBなどのテクノロジーに近しい業界からこの波がやってきております。しかしながら、冒頭に記載した通り、2-3年後にはレガシー業界にもこの波はやってきます。レガシー業界はマーケットインよりもプロダクトアウト寄りの事業が求められます。それらの業界企業がどう新規事業に取り組んでいくのか。非常に興味があります。

併せて、新規事業の専門家のニーズは2025年以降、飛躍的に上がります。なぜならば「新規事業の立ち上げ」っていわば誰でもできるように思われがちで、経営者自身もできると息を巻くのですが、新規事業にも立ち上げ方はあります。ちゃんとやり方を知っているプロに頼るべきであるのに、何故か自分たちだけでやろうとしてします。

話は更に戻りますが、ここの経営者の「新規事業に対する考え方」の変化が起き始めるのが2025年であり、そこの需要を既に読んでいる企業や個人が徐々に増えています。これがスタートアップジャパンEXPOにも表れています。

私が力になれることを↓の記事に書いておりますので、もしよろしければご覧ください。

最後にまとめです。
2025年の新規事業市場の予測は以下のとおり。
1. 投資市場は起業家投資<新規事業投資になっていく
2. 既存事業への投資は生成AI分野に偏る(新規×生成AIは来年以降)
3. 生成AIへの各社の投資額は膨大になる
4. SaaSモデルやサブスクモデルの終焉の兆しが出てくる
5. 2035年を見据えた事業ポートフォリオ戦略が必須に
6. IT業界及び近しい業界企業は「新規事業戦国時代」に突入する
7. レガシー業界は2-3年後に新規事業ブームになる(今年は小波)
8. 中規模の新規事業を継続的に創れる企業が優位に
9. 飛び地での新規事業を立ち上げられる企業が優位に
10.新規事業の専門家への注目が高まり、需要が増加する

以上が私の予測となります。1年後に振り返りをしたいですね。


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