司馬遼太郎「坂の上の雲(八)」より
日露戦争を描いたこの小説を読み終わっての2022年3月6日(日)現在の備忘録。
ロシアが社会主義国になるだろうという好古のかんは、ロシアがその栄光とする陸軍が日本のような小国にやぶれたからだという。
「ロシア陸軍は、国民の軍隊ではないからな」
とだけいった。ロシアのその世界最大の陸軍は皇帝の私有物であるにすぎない、ということであろう。その軍隊が外国に負けたとき人民の誇りはすこしも傷つかず、皇帝のみが傷つく。皇帝の権威が失墜し、それによって革命がおこるかもしれない、ということであるらしかった。
好古にすれば日本軍は国民軍であった。ロシアのように皇帝の極東に対する私的野望のために戦ったのではなく、日本側は祖国防衛戦争のために国民が国家の危機を自覚して銃をとったために寡兵をもって大軍を押しかえすことができたのだ、という意味であるようであった。
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