ティーガーデン星に3つ目の惑星が発見される。

ドイツとスペインの研究者を中心とした研究グループが、太陽系近傍の恒星で、既に2つの惑星の存在が知られている「ティーガーデン星」に新たに第三の惑星を発見したという研究を公表しました。この研究はプレプリント(査読前の論文の草稿)としてプレプリントサーバーのarXiv.orgに2024年2月1日に投稿され、2月5日に公開されたたものです。

[2402.00923] Teegarden's Star revisited: A nearby planetary system with at least three planets (arxiv.org)

新たに発見された惑星は既知の2つの惑星よりも主星から遠い軌道を26日周期で公転しています。質量は地球80%ほどです。この惑星の軌道半径は地球の10分の1以下ですが、主恒星が非常に暗いため、日射量は地球の12%しかありません。この日射量は太陽系の火星よりも小さく、小惑星帯の日射量に相当します。

今回の研究には、ESPRESSO・MAROO-N-X・HPF・CARMENESといった、2010年代以降に完成した最新の分光器が投入され、3つの惑星の公転運動に伴う主恒星の視線速度(空間速度の奥行方向の成分)の周期的変動を検出する視線速度法を通じた観測が行われました。この方法で測定された惑星dの質量は地球の0.82±0.17倍でした。

ティーガーデン星とは

ティーガーデン星 (Teegarden's star) は2002年に発見された太陽系近傍の恒星です。ティーガーデン星は太陽系から11.2光年という、宇宙規模で見れば非常に近い位置にある恒星ですが、小さく暗い星であるため、21世紀になるまで発見されていませんでした。この星が発見された時にはこの距離にある恒星が今まで発見を免れていたということ自体が天文学者たちに衝撃を与えました。

2019年に最初の2つの惑星が発見

発見当時注目を集めたティーガーデン星は発見から20年近く過ぎた2019年に再び大きな注目を集めることになります。というのも、2019年にこの星の周囲に2つの地球質量の惑星が発見されたためです。この時発見された惑星は内側からティーガーデン星b・ティーガーデン星cと名づけられました。2つの惑星はどちらもティーガーデン星の周囲のハビタブルゾーン(惑星表面に液体の水が存在可能な軌道領域)を公転しているとみられたことから大きな話題となりました。

特にティーガーデン星bはこれまで知られている中では日射量と質量がともに地球によく似ているため、「地球に最も似た惑星」とも言われています。

低質量の赤色矮星の惑星系の多様性を示す

ティーガーデン星系は主星が低質量の赤色矮星でありなおかつハビタブルゾーン内に複数の地球サイズの惑星が存在するという点でTRAPPIST-1系に似ています。ただし、ティーガーデン星の惑星はTRAPPIST-1系の惑星よりも軌道間隔が開いており、TRAPPIST-1系にみられるような軌道共鳴も存在しません。このような違いは惑星系の形成様態の違いに起因しているとみられます。

2030年代には重要な観測ターゲットに

ティーガーデン星の惑星はTRAPPIST-1の惑星ようなトランジット(惑星が恒星の手前を通過する現象)を起こしていません。現在の観測技術は惑星の大気観測を行うに際して惑星が起こすトランジットを利用しています。このため、トランジットを起こしていないティーガーデン星の惑星は現在の技術では大気観測は不可能であり、差し当たって重要視はされていません。しかし、2030年代には欧州超大型望遠鏡(E-ELT)やHWO・LIFE宇宙望遠鏡など次世代の観測施設の実用化によって、トランジットを起こさない惑星の大気観測が可能になると見込まれています。太陽系近傍にあるティーガーデン星はそのような時代において格好の観測ターゲットになると期待されています。



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