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ベリー・グッド・アンサー
「仮定の質問にはお答えしかねます、というのが、定番の日本の国会答弁です」。石破茂首相がトランプ大統領との会談時「米国がもし日本に関税をかけるとすれば報復関税をかけるか」という記者の質問へのウィットな答えだった。
「ベリー・グッド・アンサー」だとトランプ大統領は絶賛した。
何も政治に限ったことじゃない。わたしもそのとおりだと思う。
今の仕事を続けるか、転職を考えるか。ひとりで思い悩んでも前にすすまないし、といって相談されても答えようがない。仮定を具体化することが前にすすめる一歩だと思う。
元同僚のIさんはシニアパートナー、契約は1年ごとだけれど概ね5年は継続できる。残りあと1年を切ったころから、「どうしようか、もう1年置いてくれと社長に頼もうか、それとも今から探すべきなのかなあ」と飲み会のたびに彼は言う。1年延長した後で新しい職を見つけた『先輩』のわたしに相談をかけてくる。答えはいつも同じ、「早く探したほうがいいよ」だった。
「もう1年お願いします」と言うのはせいぜい契約満了の3ヶ月前。職探しもせずに「むずかしい」と答えが返ってきたら、その時はすでに遅い。早めに情報を集めて、よさそうなところをピックアップし、アプローチして一歩踏み込まないと自分の条件に合うかどうかはわからない。だって、トシヨリの就活はオファーが限られるから。思い悩んでいて埒があかない。
幸いなことに、彼の取引先の知人を介して話がすすみ、面接に行った。その会社からの正式オファーの手前で、I さんは今の上司に相談した。
「もう1年どうでしょうかね」
「さあ、わたしが決めることじゃないから。それとなく言っておくから、社長に直に話してよ」
I さんは新しい会社に決めた。社長からは引き留められたけれど、本心じゃないと感じたらしい。
「仮定の質問にはお答えしかねます」
わたしもこれは「ベリー・グッド・アンサー」だと思う。