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苔のむすまで

我慢することはない
自分に正直でありたい
そうであれば、結論は結局ひとつしかない
わかっていても、すっきり割り切れないところが弱いと思う

裕子は町のはずれの一本道をただ歩き続けている
なんだか静かね
そう言えばどこにも人がいないわ
中心地から遠いとはいえ、ここだって古都の観光地

不思議な静けさを怪訝に思いながら寺の門をくぐった
とたんに世界が緑になった

裕子は宙に浮いている
空間の壁も方向も何もない
静けさとは、音が小さいことではなく
本当に何もないことなのだと悟った

なぜ私はここにいるの
そうだ 飛び出してきたのだった
急に思い出して、大声で泣き叫んでしまった
気が遠くなった

どれくらい時間が経ったのかしら
時間の壁もいつの間にかなくなったように感じた

目の前は相変わらず緑一色の世界だ
その緑が動いて集まり始めた

はっと気づくと、裕子は3つの古い古いお墓の前に立っていた
その緑の苔に覆われた、そのお墓を訪れれば、心の傷も癒える
そう、そこは失恋墓地
(407字)

土曜日は、以下の企画に参加させて頂いています(今回のお題は「失恋墓地」)。どうぞよろしくお願いいたします。

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