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四季が変わる
遠くから何か聞こえるようだ
耳を澄ませると和楽器のようだった
ひょっとして琵琶?
そのうち、聞き取れなくなった
ヒューという風の音がした
空気が生暖かくなった
暗闇のなかに明るいものが浮かんでいる
そのうち、数が増えてきた
気がつくと、取り囲まれてしまった
その明るいものは、こっちを見ているようだ
何か楽曲の断片のような音が聞こえた
弦楽器のようだ
こんな場所で、こんな真夜中に誰かが演奏しているのだろうか
もし平家物語の壇ノ浦のだったら、これは怪談だ
空気が一段と生暖かくなった
そう言えば、今年の夏は生き延びられるのだろうか
いまや生物は滅亡に向かっている
冬は楽に越せるが、問題は夏だ
そして春は、その入り口だ
かすかに聞こえる曲はヴィヴァルディだと気づいた
だが、こんなに悲しい曲だっただろうか
まもなく訪れる死の別れを惜しむかのようだ
待ちわびた季節の到来を喜ぶ雰囲気は感じられない
こんな春ギターは嫌だ
と思った時に、目が覚めた
どうにか、今回は生き残れたようだ
(413字)
2022年8月20日以来、以下の企画に参加させて頂いています。当初1年で打ち切りのつもりが、そのまま延長し1年半を楽に超えて毎週続行しています。ふだん全く考えもしない、ありえないことを大胆にテーマにして書いてみたいです。以前は410字前後を大幅に超えることもありましたが、今は、ショートショートらしく短く収めるように練習する機会にしたいと思っています。毎回月曜朝5時の投稿を予定しています。今回のお題は「春ギター」をワードもしくはテーマとして含む作品でした。どうぞよろしくお願いいたします。
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