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読まずに手紙を廃棄する知恵
マガジンご購読の皆様、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。
童謡「やぎさんゆうびん」の歌詞は、今から80年以上も前、1939年のまどみちおの作です。
「白やぎさんからお手紙着いた、黒やぎさんたら読まずに食べた、しかたがないのでお手紙書いた、さっきの手紙のごようじなあに?」「黒やぎさんからお手紙着いた、白やぎさんたら読まずに食べた、しかたがないのでお手紙書いた、さっきの手紙のご用事なあに?」
この歌詞は、子供向けの他愛のないものではありますが、なかなか深いものがあります。
80年ほど前ですので、現代とは異なり、情報が氾濫する時代ではありません。牧歌的でゆったりと時間の流れる時代であれば、本来は、手紙の1通や2通くらい読む時間、どうってことないです。読んでから廃棄するなり、食べるなりしてもよいわけです。
でも、白やぎさんも、黒やぎさんも、明確な意思を持って「読まない」という選択をしています。換言すれば、「読まないのが標準」で、「どうしても必要があるならば読むという選択もある」というポリシーです。このポリシーは、情報という名の大量の雑音があふれる時代に必要な知恵を先取りしたのでしょうか。
現代では、届けられるどうでもいいような内容の手紙をいちいち開封して読んでいたりすれば、それだけで、自分の活動可能な時間の大半を奪われてしまいます。目的を持って人生を過ごそうという志のある人によっては、明らかに障害物です。けれども、多くの方が、多かれ少なかれ、そこで躓いており、時間を失っています。
さらに、そこには、見知らぬ会社や、交際や連絡のなかったはずの「旧知」を名乗る人物からのあやしい勧誘の手紙さえ紛れ込みます。それは、ビジネスや宗教や投資提案など、いろいろなジャンルに及ぶでしょうが、社会全体で見れば、おそらく、益よりも害のほうが大きいと思われるものです。価値ある情報はそこにはないのに、わざわざ貴重な時間を費やし、自らトラップに陥るかもしれない危ない心理的な位置に接近するような構図のなかに、誰もがいます。マスメディアだって、そういうものかもしれませんが、私信は、個人を直接にターゲットにしています。
いや、どうでもいい雑音ばかりでなく、本当に重要な内容を伝える手紙がきっと来るので、それを見落とさないために、やはりちゃんとチェックしなくてはいけない。きっとそう信じています。
しかし、そのような手紙、つまり、本当に重要で、どうしても読むべき手紙が、予期せず、意外な形で、見知らぬ人から届くことは、ほとんどありません。さらに、それほど重要な内容であれば、仮に見過ごしたとしても、先方からまた繰り返し、注意喚起のため、連絡が来ることでしょう。
このように考えますと、白やぎさんも、黒やぎさんも、実は、相当にできる人たちで、切れ者ではないでしょうか。
この人たちは、手紙が届いた時点で、手紙が来たという事実を確認する一方、原則読まないで廃棄を決定しています。来るべき連絡を予期し、待っている場合には、開封して読みますが、そうでないときは、読まずに食べて処分します。また、手紙が届いた、ということじたいも既に1つの情報です。空メールを送ることで、自分の無事を知らせている、もしくは他の何かを伝えているとも考えられます。
当時は、現代のような情報が氾濫する時代ではありませんが、世界を二分する戦争が迫っていました。プロパガンダ、情報戦の時代の対処としても、なかなかよく考えられた対処方法でもあったと思います。
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