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バスの運転手のお仕事なんて、もう嫌!

バスが止まった。
シュッという音がして前と後ろのドアが開いた。

「おいくらですか?」

運転席の冴子はびくっとした。
ぼんやりしている間に、新しいお客さんが1人乗ったようだ。
おかしいな、どっちのドアでもブザーが鳴るはずなのに。
「おひとり500円均一です」

500円玉が落ちる音がした。

冴子は何気なく車内を振り返って「あっ」と声を出しそうになった。

お客さんは1人ではなく、大勢だ。
それも前から後ろにむかって1つ飛ばしのソーシャルディスタンシング。
どのお客さんも同じ顔、同じ服装で、まるで分身だ。

光は波としての性質を持ち、2つのスリットを同時にすり抜けて干渉縞をつくる。
同時に、光は粒子としての性質を持ち、その数を数えることができる。
波動性と粒子性の二重性は、光だけでなく電子や中性子やその他の粒子が示すことがわかっている。
理論は物質一般にも拡張されている。

「バスを使った二重人格ごっこ、大成功!」
干渉縞のお客さんが同じ顔で笑った。

(408字)


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