そして誰も帰ってこなかった
そこには一軒の家があった
玄関には「レストラン ボン」という札が出ていた
和弘と祐子と晴美の三人は顔を見合わせた
なぜこんなところにレストランがあるのか、奇怪だ
だが空腹でもあり、食事できるのは有難い
張り紙があった
「どなたもどうかお入りください」
中に入ると、突然床が抜けた
あっと声を出す間もなく、下に落ちた
暗くて狭くて、まわりに壁があるが、押せば動くような代物だ
床にはどろっとした液体がたまっている
張り紙があった
「ご安心ください ただ、温めるだけです」
だが、三人は、その程度では動じない
壁を破って脱出するまでのこと
ところが、その壁は男女二人しか通れない仕掛けになっていた
和弘は助かるが、祐子と晴美はどっちか一人しか助からない
一瞬の沈黙があった
壁を破ろうと振りかざした祐子のナイフは和弘の胸を刺していた
晴美のナイフも和弘の首に刺さっていた
しばらくして、即席の温めるだけの料理ができあがった
レトルト三角関係の逸品である
(403字)
2022年8月20日以来、以下の企画に毎週参加させて頂いており、ついに1周年、当初予定ではもう打ち切りですが、今回はとりあえず続行。以前は410字前後を大幅に超えることもありましたが、短く収まるようにしたいと思っています。今回のお題は「レトルト三角関係をワードもしくはテーマとして含む作品でした。どうぞよろしくお願いいたします。
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