見出し画像

茶屋にて

失礼ですが、いま何時でしょうか

大都会の喧騒のなか、街角で見知らぬ人に声をかけられるのは久しぶりだ
まして、時刻を尋ねられることなど、このところは全くなかった
スマホもあればスマートウォッチもあるからね
人々は閉ざされた個人の時間のなかで暮らしている

不思議なことだ
左手首を持ち上げたら、急に腕時計が壊れてしまったようだ
ずっと自分の時計をあてにしていたから、こういう時に困る
本当のところは、何時なんだろう?

そうだ、空を見ればいいのだったか
昼間は太陽、夜ならば星座を見れば時刻がわかる
あくまでアバウトな時刻だ

空を見上げた
そのとき、何か壁のようなものが音を立てて破れた感じがした

さよう、未の刻を少し過ぎた頃のようじゃな
気がつくと、江戸風の言葉で答えていた

大都会の風景は消え去っていた
そこには一軒の店があった
そうじゃ、茶など、いかがかな

娘はうなづいた

秋の空時計には断層がある
そこに迷い込む者が後を絶たない
だが、退屈な現代から飛び出すのもまた一興
(414字)

2022年8月20日以来、以下の企画に毎週参加させて頂いており、ついに1周年、当初予定ではもう打ち切りですが、今回はとりあえず続行。以前は410字前後を大幅に超えることもありましたが、短く収まるようにしたいと思っています。今回のお題は「秋の空時計」をワードとして含む作品でした。どうぞよろしくお願いいたします。

初めての皆様へ

皆様には、桜井健次のエッセイのマガジン「群盲評象」をお薦めしております。どんな記事が出ているか、代表的なものを「群盲評象ショーケース(無料)」に収めております。もし、こういうものを毎日お読みになりたいという方は、1年分ずっと読める「群盲評象2023」を、また、お試しで1か月だけ読んでみようかという方は「月刊群盲評象」をどうぞ。毎日、マガジンご購読の皆様にむけて、ぜひシェアしたいと思うことを語っております。

ここから先は

540字

本マガジンでは、桜井健次の記事をとりあえず、お試しで読んでみたい方を歓迎します。毎日ほぼ1記事以上を寄稿いたします。とりあえず、1カ月でもお試しになりませんか。

現代は科学が進歩した時代だとよく言われます。知識を獲得するほど新たな謎が深まり、広大な未知の世界が広がります。知は無知とセットになっていま…

いつもお読みくださり、ありがとうございます。もし私の記事にご興味をお持ちいただけるようでしたら、ぜひマガジンをご検討いただけないでしょうか。毎日書いております。見本は「群盲評象ショーケース(無料)」をご覧になってください。