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「嫌われ監察官 音無一六」第2話レビュー:一人の罪でもなく、一人の使命でもなく

第2話あらすじ:現職警察官の野中(山崎潤)が転落死する。事件現場から立ち去る高岡(水石亜飛夢)という男を二六(遠藤憲一)が目撃。高岡は事件の直前、二宮(小野武彦)が経営する居酒屋を訪れていた。高岡は10年前に起きたストーカー殺人事件の被害者・麻衣(團遥香)の恋人だったと明かす。それは音無一六(小日向文世)が捜査一課を辞め、監察官の道を選んだ因縁の事件だった。そして野中には麻衣の被害届を隠蔽した過去があり・・・。(公式サイトより)

初回2時間スペシャルから通常の1時間枠となり、いよいよ一六と厘太郎のコンビが本格始動。
一六にとって監察官としてのスタートラインとなった「世田谷ストーカー事件」。その10年後、被害者が殺害されたのと同じ日起きた現職警察官の転落死をきっかけに隠蔽の真実が炙り出される…。

一六は10年前、別の事件の捜査中に麻衣という女性からストーカー被害を訴えられるが自分で対応することはできず、管轄の世田谷西署に行くよう促す。しかし世田谷西署は受理した被害届に対応せず放置した結果、麻衣は3ヶ月後にストーカーに殺害されてしまった。
一六の追究の結果、さらに関係書類を処分して事実の隠蔽を計ったことまで判明。監察官だった千住によって世田谷西署所長・二宮を含む警察官複数名が処分された。

この事件で一六は心に二つの傷を負っている。一つは自分が麻衣の訴えに応えることができなかった結果、彼女を死に至らせてしまったこと。二つ目は必ず彼女を守ってくれると信じていた警察という組織に裏切られたこと。
一六は麻衣に対する償いのためだけでなく、自らの手で信頼できる警察を取り戻すために監察官の道を選んだのではないだろうか。それが自分の傷を埋める、ただ一つの手段だから。

調査に乗り出す一六はいつもと違って妙に前のめりで、その様子には厘太郎が違和感を覚えるほど。
世田谷ストーカー事件は一六の監察官としての原点であり、固執するのも無理はないのだが、捜査に協力しようとする厘太郎を一度は拒しようとするなど必要以上に一人で抱え込もうとしているように見える。

事件のキーパーソンは、麻衣に片想いし、彼女の悩みをただ一人知りながら救いの手を差し伸べることができなかった高岡という男。自責の念にかられていた高岡は隠蔽に関わり処分を受けた署員たちを訪ね、自分より罪の重い者を探して少しでも心を軽くしようと考える。…と同時に、自分の罪が一番重ければ命を絶とう、とも。
隠蔽の元凶であった人物が明らかになった後も、罪の意識を消すことができない高岡。彼と同じ重さの罪を自分も負っている、と一六は言う。これからも自分は消えることのないその罪を背負って生きて行くのだと。

けれど、罪は一六一人のものではなく警察組織全体が負うべきであるはずだ。一六は管轄の署に仕事を引き継いだだけで、世田谷西署が麻衣の被害届に迅速に対処すれば、最悪の事態を招くことはなかっただろう。警察が正しく機能しなかったことが一番の罪なのだ。
だから「市民に信頼される警察を作る」という使命も一六だけで成し遂げるものではない。
一六が10年前の罪の意識に囚われ、その使命を一人で抱え込もうとしていることに千住は心を痛めているのではないか。厘太郎を警務部長付きにし、正式に一六の相棒を作った理由はそこにあるように思う。

しかし、厘太郎はおそらく第1話時点ではこの人事の重みに気付いていない。一六の有能さ、目指すものの崇高さ、父を越えられない鬱屈とした思いの打破、そういう期待を持って異動してきたであろう厘太郎。この先、彼は報われなかった人々の思いを継ぎ、強い意志で組織と闘っていく覚悟を持てるだろうか。

第1話、第2話と回を重ね、一六とのバディにおける厘太郎の役割もだんだん見えて来た。
データを収集し、解析し(その能力を活かして不正アクセスもしてしまうが…)手がかりとしたり、証拠としたり。厘太郎はデジタル面から捜査をバックアップする。
さらに言えば、かつて一六に事件解決のひらめきを与えて来たのは「みつる」で出されるお取り寄せグルメだったが、連ドラ版でそれを担うのは厘太郎なのである。
第2話では厘太郎が二六から押収した文庫本がヒントに。厘太郎に役目を譲り、今回など山口県下関のトラフグの生ハムが姿を見せる余地すらなかった。
厘ちゃん、第3話も美味しいところ、持って行っちゃって!

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