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「liar」第二話レビュー:クールで完璧な市川の内側に潜む幼さ

第二話あらすじ:9ヶ月前、市川(佐藤大樹)は自身が所属する精鋭部署に美紗緒(見上愛)が配属されたことが気に入らなかった。しかし、仕事の覚えが早く、恋にも真っ直ぐな美紗緒に、市川は次第に惹かれていく。ある日、市川は田所(川島海荷)のもとに商談をしに行くが、失恋直後の彼女は市川との商談にも関わらず号泣してしまった。そんな田所に市川は結婚を前提に付き合うことを提案する。その一方で、美紗緒への想いも徐々に大きくなっていき…(公式HPより)

市川のモノローグで綴られる第二話。第一話と同じストーリーを市川目線でなぞり直すと、市川の印象がガラッと変わる。
自信家のように見えて、市川の自己肯定感は意外なほど低いし、コロコロ機嫌が変わる様はまるで子供のよう。
市川が可愛く思えて来ると同時に、こちらが思うほど計算で動けていないことがわかって、彼の危なっかしさにハラハラもさせられる。

市川の父親は沢田物産の社長だ。自分はその大口取引先の東洋商社にコネで入社しており、評価の高さも自分が出した成果とは関係ないと思っている。
だから自分の力で成功を手に入れて来た実感がなく、何をしても満たされない。なのに逆にそれらを苦労せずに得られてしまっていること、そして周囲からの羨望によって妙にプライドは高い。
ゆえに打たれ弱くもあって、大学時代の先輩・文里(高田里穂)との関係がトラウマになって「女と本気でぶつかればバカを見る」と恋愛から逃げたり。
実は結構面倒に拗らせた奴なんじゃないだろうか、市川は。

中二病どころか小二病と言ってもいいほどの内面を持った市川。狙いが当たると上機嫌になったり、自分の思った通りに行かないととすぐにイラっと来ちゃったり。
美紗緒がツボにハマる反応をすれば心の底から笑うし、ノリで電話を掛けて出張先に誘うし、それを断られればムッとする。でもこんな風に市川の心を動かす女って、実は文里以来だったんじゃないだろか。去年入社の一番人気の女子には市川が構わなさ過ぎて、付き合ってすぐにフラれたくらいだったのだから。
美紗緒が翻弄されているように見えていたけれど、振り回されているのは本当は美紗緒ではなく市川で、美紗緒が市川の中の少年を引きずり出したのだ。

ラクな女なら誰でもいい、と結婚相手に田所を選ぼうとするのも、いかにも短絡的だ。
自分が美紗緒に惹かれていることにも気付かず、一度は自分に気持ちを向けていたはずの美紗緒が上条(太田基裕)と待ち合わせしていたことに激しく動揺して衝動的に美紗緒に会いに行くのもまた、青い。
「田所とケリをつけて、成田とちゃんと付き合う」そんなに上手く行かないことくらい想像できてよさそうなものを、それができなかった代償は大きいようで…
けれど第一話の完璧でクールで、感情なく美紗緒を弄ぶように見えた市川より、第二話で見えた未熟で矛盾を抱えた市川の方が、人間として愛しい。
こうしていよいよ真剣に恋愛と、人と向き合わなければならなくなった市川は果たしてどう変わって行くのだろうか。
最後は市川に抱かれる美紗緒のモノローグに切り替わって第三話へとつながっていくのだが、市川の内面を知った上で波乱の展開を見守ることになるのだと思うと、胸が痛い。

【今週の出野課長】
さて、今週の出野課長(古川雄輝)。出野推しなので大筋と関係なく別枠で語らせてください(ここレビューと別人格で書いてます)。
「成田さん、こっち」という声が聞こえてくるだけで、もう素敵な上司感がすごい。出野に促された美紗緒が自己紹介しても、市川も上条も見向きもしないのに注意もせず、ニコニコ見守っているのもすごい。
たぶん市川と上条が新人なんて足手まといだと思っているのも、美紗緒がそれくらいではめげないのも、全部わかっているんだ。
出野はそれぞれの個性を認めていて、好きなようにやればいい、いざとなれば上司である自分が責任を取ればいいと思っているタイプ。
そうでないとあの余裕は出せないでしょう?出野課長。第一話で前に立つ背中を見た時から思ってました、あなたに一生ついて行きます…!
そんな出野課長、これから出番が増えそうな予感。辛そうな美紗緒と市川の姿は見たくないけれど、やはり第三話に向けて気持ちははやるのでした。

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