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「liar」第三話レビュー:決壊する美紗緒の心のダム

第三話あらすじ:市川(佐藤大樹)が田所(川島海荷)と付き合っていることを知りながらも、美紗緒(見上愛)は市川を求めてしまう。しかし、2人が婚約しているという話を聞いて、美紗緒は激しくショックを受ける。それでも美紗緒は市川と身体を重ね続ける。一方市川も美紗緒への想いを日々強くしていくが、美紗緒と浮気をしていることが田所にバレてしまう。市川は別れを切り出すが、田所はそれを聞き入れない。しかし数日後、市川の元に田所から電話がかかってきて…(公式サイトより)

前半の美紗緒目線パートと後半の市川目線パート、両面から描かれた第三話。
市川には彼女がいるのに、自分の元に来てくれる。それだけで嬉しい。美紗緒の立場は弱いし、ただ市川を受け入れることしかできない。美紗緒の態度は常に「受容」だ。それは降って湧いたような異動の話にしても。
それでも美紗緒の異動前日、彼女の帰りをずっと待っていた市川には愛情が感じられた。それまでは情事の前に「服、邪魔」「脱いで」と市川が上に立っていたのに、その日は互いに服を脱がせ合ったところにも2人の関係の変化も見られた。

だからこそ、その直後に田所との婚約を知って突き落とされる時の衝撃は大きくて、美紗緒が積み重ねた我慢を決壊させるにはあり余るほど十分で。
田所と朝帰りの市川に会ったことが決定打となって、ついに限界に達する美紗緒。市川に別れを告げた電話で、水を抱えきれなくなったダムのように吐き出される涙を見るとやり切れない。
しかし市川が美紗緒に送った、数年後友人としてやり直したいという一見冷酷なメッセージに市川が込めた意味は真逆だったようで…

たぶん市川は、自己肯定感の低さによって、また文里から受けた扱いによって、自分が愛される存在だという自覚を持てていない。
だから田所に対しても、他に好きな人がいた女が自分を本気で愛するなんて思ってもいないし、美紗緒が市川に傾けた気持ちも信じることができない。
ゆえに田所がリストカットするほど思い詰めていることや、強くて、自分を理解して受け入れてくれていると思っていた美紗緒に泣きながら別れを切り出されたことが意外で、腰が抜けるほどの衝撃を受けてしまう。
美紗緒と友達としてでも繋がっていたい、という気持ちの伝え方はしっかり裏目に出てしまうし、その不器用さはやっぱり小二で、小さな子供みたいな市川を抱きしめてあげたくなるほどだ。

今回は市川が持つ、田所の家の鍵の使い方が効いていた。
田所に鍵を返せなかった市川。美紗緒を膝に乗せた時に感じた違和感は2人の間を引き裂こうとする田所の存在を表しているようだったし、鍵に付いたフワフワしたピンクのチャームの可愛らしさが、彼女の不穏さを却って強調していた。
そして市川はできることなら開けたくなかった田所の家のドアを、その鍵で開けることになってしまう…

なのに手放したはずの美紗緒との関係はまだ続いて行きそうで、さらに複雑に2人の心情が絡まり合うであろう第四話からも目が離せない。

【今週の出野課長】
今回はやるつもりじゃなかったんです。もっと出番が多いと思ってたんです、出野課長。
若者の恋を微笑ましく見守る出野の視野の広さはイコール、懐の深さだ。仕組まれた美紗緒の異動についても、おそらく裏の事情を知っている(美紗緒と市川の関係にも気付いているだろうし、田所の件を含め大柳&仁科コンビにさりげなく探りを入れたりして情報収集している気がする)。
でも事を荒立てず異動の要望には従って、美紗緒にいつか呼び戻す決意を伝える出野。目の前のことだけじゃなく、将来まで見据えた判断ができる大人の余裕にクラクラします。
でね、「異動だ」「沢田物産?」「お疲れ」って声だけで全神経を持って行くんですよ、出野は。出野さんの全部に私が反応する(©第二話の美紗緒)。否、全古川ファンが反応する。
だから…第四話こそ、このコーナーから卒業してください、出野課長!

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