「liar」第五話レビュー:言葉を裏切る心、心を裏切る言葉
第五話あらすじ:4年ぶりに東洋商社に戻ってきた美紗緒(見上愛)は、出張でいきなり市川(佐藤大樹)と再会する。市川との恋は過去のものと考えていたが、再び市川への想いを強めていく。一方の市川も、再び自分の前に現れた美紗緒への想いが溢れていた。「この唇が、この体温が、この人が、好き」、2人は再び身体を重ねる。しかし、美紗緒はまた以前のような身体だけの関係になってしまうのかと不安を抱いていた。そんな美紗緒に市川は自分の想いを伝える…(公式サイトより)
「好き」って言ったら負けるゲームでもしてるのかな、イチは。
そう思えてくるほど、市川は自分の気持ちを口にしない。いや、できないのかもしれない。
なぜそう言ったのか、なぜそう行動したのか、自分でも分からなかったり、その意味を後から知ることもある。
4年前、傷付くことが怖くて市川から離れたつもりでいた美紗緒。しかし再会し、改めて市川の肌のぬくもりに触れて理解する。本当は市川に自分を追わせたかったのだと。
美紗緒は出張先の福岡で市川に強引に求められたことに喜びを感じて、自分が実は求めていたものを悟る。
どうしてそれまで気付けなかったのか?なぜなら、人は無意識に自分が認めたくないものからは目を反らしてしまうから。
心は、言動は、時に知らないうちに自分自身まで裏切るものだ。
美紗緒よりもっと重症なのが市川だ。
市川は自分のことばかりで、美紗緒について何も知らなかった自分の幼さを自覚していて、ちゃんと付き合おうと言わなければならないとも思っている。
なのに出野(古川雄輝)への嫉妬から言うべきことを言えなくなったり、国見(佐藤友祐)にまでジェラシーを感じて不機嫌になったりして心と裏腹なことを言ってしまったり。言葉は上手く市川の心を形にしてくれない。
きっと「好き」と言ってしまったら、自分だけが美紗緒のことで頭が一杯になっている弱みを晒してしまうし、安心した美紗緒が他に気持ちを向けてしまうかもしれない。その怖れが市川の言葉を遮る。そして彼はさらに言葉にしなくてもわかって欲しいという甘えに逃げる。
最初は市川が美紗緒を言葉によって揺さぶったり、上位に立とうとしたりしているように見えた。でもそうじゃなくて、市川は臆病で不器用なだけなんだ。
美紗緒は市川がぶっきらぼうだけど実は照れ屋で優しい、と知っている。それでも言葉が足りない、欲しい言葉をくれない市川に耐え切れず、不安を市川にぶつける美紗緒。
自分の気持ちを認めたら、それをまっすぐ言葉にする美紗緒の苛立ちの向かう先は市川で、想いを言葉で伝えることができない市川の焦燥感の矛先は自分自身だ。その2人の言葉の強さなんて美紗緒の圧勝に決まっていて、ついに市川は美紗緒が好きだと認める。
たとえ「好きじゃなかったら、こんなにカッコ悪くなってねぇよ」と決して直球ではなくても、それは今の市川の精一杯の変化なのだと思う。
しかし最後に登場した市川の父のカットには不穏な空気が立ち込めていて、市川と美紗緒の未来に影を差す予感が漂う。
【今週の出野部長】
Q:出野さんはなぜ遅れて居酒屋にやって来たのでしょうか
①主役は後から登場するのがセオリーだから
②コートを脱ぐ姿が色っぽすぎるから
③席に滑りこむ仕草がノーブルすぎるから
…はい、全部正解。今週も素敵過ぎて、いちいち一時停止しながら観たら10秒が永遠かと思うくらい長く感じられる出野マジックにかかりっぱなしです。
自分用に買ったであろうコーヒーをサラッと美紗緒にあげてしまうところなんて、市川の寿司なんて目じゃないくらい「男前」でした(ごめんイチ)。
しかしながら「おや?」と思うところもありまして…
美紗緒に一人残業を頼んでオフィスに戻って来るのには何か目的があるのか、市川も巻き込んで食事に誘うとはどうしたことか、やんわり断った美紗緒の言葉を額面通りに受け取るのはどういうつもりか。
スピンオフでは「実はこの人天然なの?」と思わせる振る舞いもチラ見えして、めちゃくちゃ企んでるのか、ちょっと空気読めてないだけなのか、区別がつかないんですよ。
ああ、そんなミステリアスなところもいい。
で、唐突に発表する今週のマイベスト出野部長は…
ドゥルルルルルルル…(心のドラムロール)
ドゥンッ!「取引先を見送ってお辞儀をした後軽くついた息に滲む微かな疲労感」です!
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