「嫌われ監察官 音無一六」第3話レビュー:持続可能な警察組織のために
”横文字の多いフランス料理店“を舞台にした殺人事件と、容疑者となった料理長・立脇の冤罪を晴らすために協力し合う二六・夏月元夫妻の不思議な関係が描かれた第3話。
殺人事件そのものより、そこに関わる人々がかつての罪を隠す目的でさらに悪事を重ねたり、自分自身が窮地に立たされたりする構造が印象に残った回である。
レストランの支配人・岩藤は巨額詐欺事件で実刑を受けた後、暴力団に身を寄せる。組織の資金作りのためにレストランの開店を取り仕切ることになるが、ホールスタッフの総責任者・森沢が不正な金の動きに気付き、口封じで殺害してしまう。
IT企業社長・柏原は飲酒や女性問題、大麻パーティといった過去の不祥事によって岩藤にゆすられ、言われるがままにレストランのオーナーに。
立脇はコンクールで他人のレシピを使って優勝したことで工藤に脅されるし、それがバレるのを恐れて無実を実証できない。
犯した罪は大小を問わずその先もつきまとい、自分の首を絞めて行く。
不都合な事実を隠蔽するために、人は罪を塗り重ねてしまう。それは罪を犯す側だけではなく、警察だって同じだ。だから監察官は、たとえささいな不正や謝りであっても見逃してはいけないのだ。
四堂副総監が経済産業省事務次官からの圧力に屈して捜査にクレームを入れて来たこと、国木田が立脇を誤認逮捕したこと。
厘太郎が第1話で捜査のために不正アクセスで資料を手に入れたこともまた、処分の対象となっていた。
「あなたには誰に恥じることのない警察官人生を全うしてほしい、だからこそそのスタートで不正を見逃されるようなことは絶対にあってはならないのです」
ここに来てようやく、あの時の一六の言葉の重みがわかったような気がする。もし厘太郎が咎められることがなければ、一六のもとでのびのびと捜査に勤しむ彼の姿は見られなかったし、先に広がる未来にも影が差していたはずだ。
そして二六と夏月の関係も気になるところ。
夏月に頼られて喜んだり、彼女の浮気相手に助太刀する複雑さを滲ませたり、寝取られたというのは勘違いだと分かって逆に悶々としたりなど、浮き沈みが激しい二六。
夏月は離婚の本当の理由を隠したままだし、この先もしかして復縁もあるのかも…?
事件の舞台となったフレンチレストランが掲げたのは「サステナブル・キュイジーヌ」(持続可能な料理)。スズメバチの幼虫を使用したメニューはそのコンセプトに沿っていても、開店の黒い背景や料理長の後ろ暗い過去を抱えたレストランなど決して持続可能なものではなかった。
警察は一点の曇りもなく、継続して市民の信頼を得られる組織になって行けるだろうか。
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