ドラマ8『弁護士ソドム』第6話レビュー:「牧師」の正体
弱い渉は、らしくない
張りつめていた糸が、プツリと切れたよう。14年前の事件の真相を明らかにすること。渉(福士蒼汰)はそのためだけに高い知性と、強靭な肉体と精神を保ち続けていた。
なのに「牧師」であるはずの津田山(三浦マイルド)は既にこの世の者ではない姿で発見され、真実に辿り着くための手掛かりが絶たれた状態に。目的を見失った渉は気力をなくしてしまう。
絶望から始まる第6話、渉はこのまま諦めてしまうのか……。
諦めないのは、渉の仲間たちだっだ。かつて渉に救われたからこそ、今度は自分が渉を支えたい。カイ(加藤清史郎)と天音(山下美月)が頼ったのはまどか(玄理)。渉が詐欺師の弁護をしている理由を話したのは、まどかが特別な存在だからだと天音は言う。渉のパートナーを解消されてしまったまどかは、渉と関わりを持とうと今度は渉に自分の弁護を手伝って欲しいと頼む。
心配するまどかに、平気だと虚勢を張る渉。取り付く島もない渉の口から出た津田山の名前に、まどかは覚えがあるという。祖母がかつて詐欺被害に遭い、実刑判決を受けたのが津田山だったのだ。その時の弁護士は渉の母・翔子(高岡早紀)。何かが繋がりそうな予感がする。
まどかが担当するのは、顧問弁護士を務める五条グループ経営の老人ホーム入居者・照屋すみ子(松金よね子)を原告とする裁判。すみ子は養子縁組詐欺に遭っていた。いつもと違い、詐欺の被害者側の弁護をすることに最初こそ居心地の悪さのようなものを感じる渉。だが、カイ・天音・治(佐藤龍我)を動かし詐欺師の居場所を突き止める過程で、渉らしい切れ味を取り戻していく。
渉の本当の強さは、渉の力になりたいと思う人たちに囲まれていることなのかもしれない。
容易く他人になれるという事実
しかし、辿り着いた詐欺師・世良紗理奈は偽物で、正体は借金の取り立てから逃れるために世良の戸籍を買った海老名由佳(田中真琴)だった。他人の戸籍で免許を取得した罪に問われた海老名を弁護することと引き換えに、渉は購入元の戸籍ブローカーを教えてもらう。
渉は戸籍ブローカー・戸部譲(山寺宏一)に揺さぶりをかけ、本物の世良の情報を手にする。渉が「牧師」について嗅ぎまわっていると言う戸部。渉は「牧師」なら死んだと告げるが、戸部から返ってきたのは「あんたが牧師だと思ったんなら、そいつが牧師だったんだろうな」という意味深な言葉。渉はそこで気付く。もしかして津田山も「牧師」の戸籍を買っただけの別人なのではないかと……。
自身も戸籍を買って何度も名前を変え、詐欺を繰り返していた世良(増田有華)だが、渉の情報提供により逮捕される。世良の自供ですみ子の養子縁組は全て無効となり、養子の借金を返済する必要もなくなった。すみ子に感謝され、思わず笑みを漏らす渉。そんな渉を見て、まどかは嬉しく思う。本当は渉だって、まどかや母・翔子(高岡早紀)と同じように、目の前の困っている人を助けたいのかもしれない。
聞き込みの結果、やはり渉たちが見つけた津田山は「牧師」とは他人だったことが判明。さらに孝介(古川雄輝)からは津田山の死には他殺の可能性もあるとの情報がもたらされる。渉たちは本当の津田山が何者なのか、手掛かりが掴めず行き詰まってしまう。
ここまで執拗に渉を追い詰めようとしてきた孝介だが、ニューヨーク転勤の前夜、渉に有益な情報を渡して週刊誌の記事は先走り過ぎたと謝罪する。
まどかに告白の返事を求めた時の孝介は、おそらく実現しないであろう転勤後の自分とまどかの将来について畳みかけるように語った。きっとまどかの気持ちが自分にないことなどわかっていたのに、孝介は不都合な真実から目を逸らしていただけだ。
まどかにハッキリと断られて諦めがついた孝介は憑き物が落ちたよう。恋という悪魔に魂を売り渡す寸前にいた孝介は、ソドムになる一歩手前だったところをまどかに救われたのだ。
まどかが、宏が思い出す記憶は渉をどこへ導くのか
まどかは偶然五条(竹中直人)の腕に残る大きな古傷を目撃。それが幼い頃祖母の裁判で見た津田山の腕の傷の記憶を呼び起こす。五条が「牧師」だったのだ……!渉に伝えようと電話をかけるまどかに迫る五条。スタンガンで気絶させられたまどかは囚われの身に。電話の向こう側で起きた異変を察した渉は走り出す。
渉に何かを伝えようと電話をかけた後、病室から消えた宏(勝村政信)の記憶は戻ったのか。五条はなぜ、宏を生かしておくのか。五条とまどかを引き合わせた曽我は何かを知っているのか。五条はなぜ、まどかに近付いたのか。散りばめられた謎たちが最終話に示すのは、どんな答えなのだろうか。
渉が弁護士を志した理由が、渉が生きる理由が復讐のためだけだとしたら、あまりに悲しい。まどかに協力した弁護で知った、誰かのためになる喜びが渉の未来を照らしてくれたらいいと願わずにいられない。
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