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真夜中ドラマ「ごほうびごはん」第6話レビュー

パンケーキ食べたい、パンケーキ食べたい、パンケーキ食べたい、長野は野沢菜♪

…コホンッ。少女から大人からへの過渡期にいる咲子(桜井日奈子)は、都会で背伸びしたり実家を懐かしんだり。おばあちゃんが送ってくれた筍と馬刺しに故郷・長野への想いを馳せていたら、もう一つ思わぬお届け物が届いたよ!の第6話。
土曜日の早朝から家のチャイムがうるさく鳴ったと思えば、玄関に立っていたのはアポなしで実家からやって来た妹の桃子(中尾萌那)。
突然の訪問の理由はわからぬまま、姉妹は東京観光へ。

行列の店ばかりでなかなか目当ての店に入れない2人が行きついたのはイマドキのカフェ。
オシャレな店内にはしゃぐ桃子だが、咲子が学校の様子や進路に言及すると話を避ける様子を見せる。その小さな違和感はふわっふわのパンケーキの前にかき消されて「映える」写真を撮ったり、お互いのパンケーキを交換して心の中で食レポしたり。美味しそうに食べる桃子の姿に、姉妹であることをしみじみ実感する咲子。
そんな中、桃子は美容師の専門学校に行って実家を継ぐことはやめてトリマーになりたいと打ち明けて…

一度は躊躇した桃子が自分の気持ちを打ち明けることができたのは、パンケーキに対する咲子の感覚が自分と共通のものであると確信できたからだ。この人ならわかってくれる、と。
先に東京に出て、美容師を継ぐことを押し付けられた形になった自分は姉の犠牲になっている、と全く思わないわけではない。それでも姉が一番の自分の理解者だと思っているから、親に相談するより先に咲子のところに来た。
咲子が自分の味方でいてくれると分かれば、桃子の振る舞いは頼もしさすら感じさせるほどで、家族会議に一緒に出ようかという咲子の申し出を「大丈夫、自分のことだから」と断る。桃子にとっての姉はそれほど絶対的な存在だ。
親元を離れて自立した生活をしているつもりでいる咲子もまた、桃子を無意識のうちに頼っている。咲子の上京は、実は妹に実家を継ぐことを託して成り立っているのだから。
咲子は桃子に、桃子は咲子に。互いに甘え、支える関係性がそこにある。

桃子はもちろん東京で映えるパンケーキだって食べたかったのだろうけれど、それより食べたかったのは咲子が作ったチャーハンだったのではないだろうか。慣れ親しんだ姉の味に、背中を押してもらうために。
冷蔵庫のありものでチャチャっと作ったチャーハンは「映え」と対極にある。「映え」はときめきだが、子供の頃の記憶と深く結びつく味は自分の中に深く根付いているものだ。小学校の頃から飼育員で動物の世話をして来て、動物といるのが当たり前で。桃子をそうした原点に帰らせてくれるのは、映えない池田家特製野沢菜チャーハンなのだ。

「自分の作ったものを誰かに食べてもらうって、なんかいいなぁ」
咲子は咲子で、自分以外のために作るごはんが誰かを幸せにできることに気付く。そしてそのことが自分を幸せにしてくれるということにも。
それはこれまでごはんに力をもらって来た咲子が、自分が与える側にもなれるのだという発見だ。

「大丈夫、大人は大人で結構楽しいから」
咲子が桃子に送った言葉は、なんだかちょっと切なくて、ほろ苦い。自分が大人だと認め、背伸びからもう一歩前へ踏み出そうとしている咲子はもう、少女ではない。大人の階段上る君はまだシンデレラ的展開の中にきっと恋愛も含まれているはずで。そのお相手が磯貝(古川雄輝)だったらいいなぁと古川雄輝ファン的には思ったりするわけですが、まだまだ道のりは長そうで。
咲子の心の準備はできてなくても、こちらの準備は万全ですよ?(なんなら第1話からできている)ここから後半ドライブかけて来ちゃっても、全然OKなんだからね!
まぁでも予告を観るに、あと1話くらいの助走は必要そうな…
それにつけてもパンケーキ食べたい、パンケーキ食べたい、パンケーキ食べ(以下略)

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