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自分の育て方や教育が良かったと思っているのは、勘違いだったりする
高校卒業後、進学のために上京し、そのまま就職。
娘が自立し、新しい家庭を持ち、可愛い孫の顔も見ることができ、親として安心したのでしょう。
実家に帰省したとき、父が私に言いました。
「愛情いっぱいに育てると、子どもは愛で満たされて安心して成長するから、親元を未練なく離れられるし、早く自立できるんだよ。おまえさんにも愛情をいっぱい注いだから、今こうやって幸せに暮らせているだろう。だから、子どもは愛情を込めて育てるんだよ。」
(・・・・あなたが言う?)
私は、ちょっとびっくりしました。
中学の時から両親が嫌でした。
早く家から出たいという気持ちから、遠く離れたところに進学したのです。
反抗期のせいで両親への嫌悪感が絶頂にありましたが、その反抗期に爆発した私の感情は、もっと小さい時から、負の感情として少しずつ溜まっていたものでした。
子どもが生まれてからは、絶対に両親みたいな子育てはしないぞと心に決めていました。
だから、父の言葉を聞いて、おめでたい人だなと思いました。
反抗期が終わった大人の私は、おめでたいままにしておこうと思い、「そうだね。そうするよ。」とだけ答えました。
父の言葉は、その日から私の心の中に残ったままです。
その後、子育て相談員になり、講習や講座を受けたり、子育て関係の活動をしている人の話を聞いたり、優秀な子どもを育てた親が出版した本などを見かけたときには、父の言葉を思い出し、何とも言えない気持ちになることがありました。
その人たちには、そんな気がないのかもしれないけれど、自分の育て方や教育が子どもを優秀にしたかのようなニュアンスを感じるときです。
例えば、親が音楽家やスポーツ選手なら、それができる環境が整っていたり、親が指導できるスキルもあるので、子どもは親と同じものを好きになったり、同じ才能を伸ばしやすいだろうと思います。
一方で、地頭の良さは、遺伝だとも言われています。
子どもの性格や環境・遺伝などの影響を除外して、子育てが順調だったり、子どもが優秀に育ったのは、親の育て方や教育が良かったからだと思うのは親の勘違いではないのだろうか。
勉強・スポーツ・芸術で優れた才能があるとか、一流大学に入ったとか、それは、子どもがもともと持っている性格や能力が影響していることが大きいのではないのか。
そう思ってしまい、何とも言えない気持ちになるのです。
自分の子育てに自信がなくなったり、悩みがあるときほど、順調に子育てをしている人や、優秀な子どもを持つ親を羨ましく思ったり、どういった子育てをしたらそうなるのだろうと参考にしたくなります。
実際、親の関わり方など、子育てのヒント(手がかり)がたくさんあり、参考になることもあります。
でも、もしかしたら、親の育て方や教育の影響は少なく、その子に合った環境が整っていたり、手のかからない性格だったり、ある分野の才能を持っていたりするのかもしれません。
誰かの子育てを参考にするときは、そういったことも念頭に置くことが大切なのではないかなと思います。
私は、両親から偏った愛情しか受け取れませんでしたが、そのおかげで家を早く出たいと思いましたし、頼りたくなかったからこそ早く自立できたと思うので、今では感謝をしています。
自分の育て方が良かったと勘違いをしている父ですが、そう思わせることも親孝行かなと思っています。
(私が娘で感謝してよ。そう言いたい気持ちは抑えておきます( ^ x ^ ) 。)
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私なりに一生懸命子育てをしてきたつもりですが、子どもたちが小さい頃の話になると、これが嫌だった、あれはありえなかったと、楽しそうに私の子育てを指摘しはじめます。
「私のやりたいようにやっただけで、それが正解ではないよ。良かれと思ってやってきたけれど、嫌な思いをしたというなら、ごめんね。嫌だったことは反面教師にして、自分の子育てに生かしてね。」
子どもたちには、こういうしかありません。
私の子育ては、娘のおかげで手がかからなかったし、息子のおかげで手がかかりました(息子との関係をこじらせるのは私の力不足ですが^_^;)。
そして、娘や息子の素敵だなと思うところは、私の育て方や教育の影響ではなく、娘や息子がもともと持っているもので、私が見習わなければなといつも思うところです。