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Googleマップクチコミの問題点について整理してみた
飲食店や病院などを選ぶ際に、参考になる「クチコミ」。しかし、実名を挙げての罵詈雑言や暴力的な書き込みが削除されずに放置されているとして、国内で最も多く利用されているグーグルマップを運営するグーグルに対して、医師や歯科医師ら90人が今春、損害賠償を求めて東京地裁に集団提訴する。否定的なクチコミに対し、病院側から「反論」「説明」するのは難しく、グーグルもなかなか削除に応じないため、低評価を恐れる病院側を患者が脅迫したり、弱みに付け込む「削除ビジネス」が横行したりしているという。
Googleマップのクチコミについて、削除されるべきものが放置されているとして医師・歯科医師が集団提訴を予定しているという記事。
原告団の公式Webサイトにも記載がありますが、訴訟自体は赤字を見込んでいます。
仮に裁判に全面的に勝訴したとしても、お金は損する見通しとのこと。
![](https://assets.st-note.com/img/1709550640585-vORmc8J2fI.png?width=1200)
ではなぜ訴訟するのかというと、裁判に勝訴することで、下記の2つを狙う公益目的とのことです。
1. Googleのあまりにひどい運用を改善させる
2. Googleマップのクチコミがそれだけひどい環境で運用されていることを知らしめ、信用度を下げ影響力を減らす
今回はこのGoogleマップクチコミの問題点について整理してみることにしました。
Googleマップクチコミの2大問題点
Googleマップクチコミには、現状、大きくわけて下記の2つの問題があると考えます。
1.Googleによる運用がずさんである
2.医療機関のクチコミが活用されることで医療効果が誤認される
順に整理していきましょう。
1.Googleによる運用がずさん
Googleでは、マップユーザーの投稿について、禁止や制限を設けています。
さすがGoogleというべきか、網羅的できれいに整理されており、これ自体はお手本のような素晴らしい出来です。
では何が問題かというと、運用ですね。
現実の社会でも、人のものを盗んだり、命を奪ったりしたら、罰せられるのはどんな国でも同じです。「何が悪いことなのか」は、どんな国でもそれほど大きくは変わりありません。
ところが、実際の治安は国や地域によって大きく違います。
なぜなら、そこに住む人の民度や、警察の仕事ぶりが違うからです。
Googleマップのクチコミも、ルール(法律)はしっかりしているのですが、運用がずさんで多くのルール違反が放置されている(警察がまともに仕事していない)ことが課題です。
このずさんな運用により、治安が悪くなってしまっているわけですね。
特に違反の放置が目立つ項目を挙げていきましょう。
ハラスメント
医療機関はその性質上、健康とはいえない、センシティブな状態で訪れることが多く、ちょっとしたことが癪に障ったりつい口が悪くなったりすることが少なくないようです。
原告団の公式Xではこのようなケースもシェアされていました。
![](https://assets.st-note.com/img/1712823394226-7gGdCQoQhV.png)
NGワード連発のここまでひどいクチコミさえ放置されているのはさすがに驚きではないでしょうか。
投稿は3ヶ月前であることからも、Googleのフィルターはほとんど機能していないことがわかります。
実体験に基づいていないコンテンツの投稿に対して報酬を支払う、またはそのような投稿を促す行為
場所の評価を操作するために複数のアカウントから投稿されたコンテンツ
これは医療機関を経営していれば、多くの方が経験ある、もしくは同業者から聞いたことのある話です。
わざと悪いクチコミをつけてきて「削除できますよ」と電話してくる業者や、「クチコミを増やして、良い評価にしてあげますよ」という業者がいます。
このような業者を利用し、開院前から★5が大量についている医院もあります。私自信も通報したことがありますが、対処されたことは一度もありません。
企業が割引、無料の商品やサービスと引き換えに投稿を促したコンテンツ
クチコミしてくれたら治療費を割引しますよ、○○を差し上げますよ、という医院があります。
ホームページに堂々と記載している医院さえあります。
ところが、Googleに対してはこれを通報する手段さえありません。
実際に通報の選択肢を見てみるとわかります。
![](https://assets.st-note.com/img/1712823694258-uTwgHLXx05.png)
この違反行為はどの選択肢にも該当しません。
Googleは自分で違反行為を定義しておきながら、通報を受ける気すらないことがわかります。
実体験に基づいておらず、対象の場所や商品を正確に明記していないコンテンツ
よくあるケースだと、「ローカルガイドなどが点数かせぎのために来院したことのない医院にクチコミをつける」ケースです。
「近くに○○があります」「xxのために通院してもいいかもしれません」など、明らかに体験に基づいていないクチコミで★3がつけられることが多いです。
普通に読めば、その施設での体験に基づいていないことは明らかなのですが、Googleに通報しても対処はしてもらえません。(自分のケースでは対処してもらえませんでした)
2.医療機関のクチコミが活用されることで医療効果が誤認される
「体験の質」と「医療の質」は違う
まず前提として、Googleマップのクチコミに投稿されるのは「体験」です。
投稿者は自身の「体験」でしか評価しようがないからです。
ところが、「体験」の質の高さと「医療」の質の高さは、必ずしも相関がありません。
わかりやすいところでは、例えば、何でもかんでも薬を出すお医者さんは、患者さんに安心を与えられ評価されやすいですが、患者さんのためを思い不要な薬は出さないお医者さんは、「何もしてくれない」と悪評が立ちやすいことがよく知られています。
歯医者の場合はより顕著です。
歯医者の医療の質の大部分は、「治療後どれだけ再発せずに持たせられるか」ですが、まさか10年後20年後の予後を比較評価することなど不可能なので、患者さんは「なんとなく良いことをしてくれた気がする」かどうかを評価するしかありません。
実際、著名なセミナー講師、つまり同業者から見れば非常に高い技術を持った歯科医師が、Googleマップでは悪評だらけということはよくあります。(体感としてですが、むしろ有名な先生の方がクチコミ点数は悪いことの方が多いように思います。自らに対する自信が悪い方向に働いているのかもしれません)
医療機関に通院するにあたって、本来患者さんが知りたいのは「医療の質」だと思いますが、Googleマップには「体験の質」しか掲載されないので、あてになりません。
Googleマップの点数は「体験」だと割り切ればいい? →無理です
Googleマップの点数が「医療」ではなく「体験」であることはわかった。
とはいえ、通院する以上「体験」も大事だ。不愉快な思いをし続けていたら治る病気も治らなくなるかもしれない。
だから、「体験」の質が分かるGoogleマップには価値があるのでは?
こう考える方もいるでしょう。
結論からいうとダメです。無理です。
なぜなら、人間は「体験」と「医療」を切り分けられるほど賢くないからです。
私はMENSAの集まりやネットの交流で、いわゆる頭の良い方達と交流する機会があるのですが、それでもこうした「切り分け」ができる人はほとんどいません。
イメージとしてIQ150あっても難しいという気がします。
「Googleマップの点数は「体験」を評価したものだ。実際の医療の質は分からない。他の方法でちゃんと見極めないと‥‥」
頭ではこう考えられても、ついついGoogleマップの点数に引きずられてしまい、クチコミの点数が高い医院に行きたくなってしまうものです。(ハロー効果といいます)
つまり実情として、Googleマップは「体験の質だけを伝えるプラットフォーム」ではなく「治療の質を誤認させるプラットフォーム」として機能してしまっており、それゆえに医療機関のみならず患者さんへも被害を与えている可能性があるわけです。
Googleへの提案1 まともな運用
ではGoogleはどうすればよいか。
ひとつの案はあまりにずさんな運用を見直すことでしょう。
シンプルです。
推測するに、AI任せの雑な判断だけで運用しているのが現状ではないかと思います。
もちろん効率化のために第一弾のフィルターとしてAIを使うのは良いと思うのですが、深刻なケースについてはきちんと人間が(日本人の文化も正しく理解した人間が)適切な判断を行う運用に変えてもらえればと思います。
Googleへの提案2 医療機関は対象外
しかしながら、たとえGoogleが完璧な運用をしたところで、「体験」と「医療」の齟齬がある点はどうやっても解消できません。
そこで、もう一つの根本的な対策案は、医療機関へのクチコミは対象外とし、クチコミできない設定にするものです。
Googleマップには施設の属性が登録されているので、このような運用をすることは容易です。
一見すると不便な運用のように思えますが、Googleマップの点数が医療の点数だと誤認され患者さんが被害を被る可能性があることや、医療機関に対する問題あるクチコミを適切に管理することは今後も容易ではないことを考えると、逆にクチコミが無い方が誰にとっても利益があるといえるでしょう。
実は厚生労働省の定める医療広告ガイドラインでも、ホームページに患者さんの体験談やクチコミを掲載することは「誤認を与える」として禁止されています。
![](https://assets.st-note.com/img/1712826501707-hiQalJsa4k.png?width=1200)
つまり、厚生労働省も「体験」は「医療」効果を誤認させると理解しているわけです。
このガイドラインの中では、いわゆるクチコミサイトは例外的に許可されているのですが、「医療」効果を誤認させるという点は明らかに共通していますから、同様に禁止されるのが適切な運用ではないでしょうか。
以上、今回はGoogleマップクチコミの問題点と、対応案について書いてみました。
ご参考になれば幸いです。