たどりついたぜ、日本。そしたら、こうせつ兄貴とバッタリ遭遇。
暑い。
「あちー」
「あっつー」
「あちー」
「あっつー」
私がエンドレスでつぶやいてたら、息子が完璧なイントネーションで、
「あちー」
「あっつー」
が、言えるようになってた。
いやあ、日本滞在して、あっという間の一週間。
カナダからここ、クソ暑九州まで、車椅子の息子と二人、遠路はるばるやってきた。
カナダの家から空港まで頼んだUber。
やってきたのは人生、初テスラ。
とりあえず、ドアの取手がボディに埋め込まれてて、どうやってドア開けたらいいのかわからず、あたふた、あたふた。
結局、めんどくさそうにインド系のおじちゃん運転手が運転席から出てきてくれて、取手の端っこ押したら、ニョリっと取手が出てきた。
意外にアナログだった。
後部座席狭いし、なんか乗りづらい。
そして車内は、インド音楽がガンガン鳴っている。
そして、息子がまさかの車内リバース。
とっさに、持っていた車椅子用の背もたれクッションで受け止め難を逃れた。
運転手のおじちゃんが、「ナプキンあるぞ」と、信号で止まるたびに言ってくれるのだが、今現在、全面的にリバースを受け止めている大判クッションを持つ手を離すわけにはいかない。
インド音楽の中、必死で「今、手が離せない」と叫んでようやく理解してもらった。
ようやく空港に着いた頃、すでに私は疲れてた。
空港で、車から降りたら、たまたま、そこにいた空港スタッフのお姉ちゃんが、
「お手伝い、入ります?」
と聞いてくれた。
「いります。いります。ぜんぜんいります」
と、ちょっと食い気味に答える。
それから、汚れたクッション捨てたり、搭乗手続きの間、お姉さんは、ずっと息子と一緒にいてくれた。
それからゲートに向かうまでの担当、搭乗機に乗り込むまでの担当は、これまたインド系の空港スタッフがついてくれた。
が、その二人は隙があればスマホを取り出して、なんか暇つぶししている。検査で並んでる列の一瞬の間であってもスマホを取り出す。
いや、手伝ってくれてるんだから、ありがたいのよ。
でもさ、いうてもあなたたち、仕事中なわけじゃない?
検査場の係員の人も、君らがスマホに夢中で列が動いたの気づかずにいたのを見て、苦虫噛み潰したような顔になってたよ。
で、機内に乗り込んだ後は、さすがの日系、ANA様。
いたれりつくせり、バババーン。
機内から、日本の空港、その日は空港内のホテルに一泊したのだけれども、ホテルに着くまでずっと連携して誰かしら、ついてくれた。
ただの一人も、スマホいじってなかった。
おまけにホテルに着いたら、
「ちなみに明日のご予定はどのようになってますか?」
と国内線の心配までしてくれた。
羽田空港の第二ターミナル内にあるエクセル東急っていうホテルに泊まったんだけど、チェックアウトまでの時間、空港内でゆっくりお土産の買い物ができて、すごく便利だった。
が、またしても問題が。
現金を引き出そうと日本の銀行のキャッシュカードが2枚とも使えない。
ぜんぜん別の銀行なのに。
結局、クレジットカード使い倒して、所持金3千円で自宅まで戻る羽目に。
なんだかんだあったけど、とりあえず、国内線の出発ゲートまで辿り着いた。
あー、ALFEEのツアー中なら、ここで偶然ばったり高見沢さんに遭遇する、なんてこともあったのかなあ、なんて思いながら、車椅子の息子と、ポケモンの飛行機眺めたり、お店でカルピス見つけて、ウヒャウヒャ言ったりしながら時間を潰していた。
するとアナウンスが流れてきた。
「ミナミコウセツ様、ミナミコウセツ様、いらっしゃいましたら、XXゲートまでお越しください」
ミナミコウセツ?
どっかで聞いたような。
すると、私たちの進行方向の椅子に座っていたマスク姿のおじさんが、ピョン、と慌てたように立ち上がったのが見えた。
「ミナミコウセツ様、ミナミコウセツ様、いらっしゃいましたら、XXゲートまでお越しください」
そのおっちゃんは、荷物を持って、こっちに向かって歩いてくる。
あ、南こうせつじゃん。
ALFEEを好きになってから、昔のキンキキッズのテレビ番組やら、坂崎さんとのフォーク絡みの動画やら見てるから、こうせつさんも、自然と私のレーダーに入ってきている。
思わず、車椅子の息子を置き去りにして、ゲートに向かうこうせつさんを捕まえて、
「あの、握手だけ」って頼んでいた。
快く握手してくれたんだけど、こうせつさんの視線は、放って置かれた車椅子の息子を捉えていて、その顔には困惑の表情が現れていた。
そして、急かされるようにゲートの中に消えていったあと、ゲート前の待ち合いの広場の椅子に座っていた人の半分くらいが、満面の笑顔になって私を見つめていた。
よかったね、握手してもらえて。
の笑顔なのか、
本当にこうせつさんだったんだー、
の笑顔なのか、わからないけど、とにかくみんな笑顔だった。
置き去りにしてた息子に、
「ねえねえ、今の人、ALFEE Guysの友達のミュージシャンだったんだよ!」
と、伝えると、ぜんぜん知らないくせに、息子は顔をくしゃくしゃにして興奮してた。
私がALFEEつけると怒るくせに。
〜終わり。