知らないうちに、『推し』のライブに友人が行くことになってた
私のここ数年の推しは、THE ALFEE。
YouTubeの動画でハマって以来、毎日のように曲を聴き、動画を漁っている。
今、私の一番の願いはアルフィーのライブに行くこと。
だけど、私とアルフィーの間には、広大な太平洋と、時間の壁が広がっている。
一時帰国のたびに、「なんとか行けるライブはないものか?」と探すものの、ちょうどツアーをやっていない時期に重なっていて、毎度毎度、涙をのんでいる。
先日、東京の友人のAちゃんからメッセージが入った。
「アルフィーのクリスマスライブのチケット取れた! Bちゃんと行くんだ!」
...へ?!
アルフィーのファンは、私なんだけど?
あわてて、Aちゃんに電話をかける。
「だってあんた、今年のクリスマスは宮崎だっていうからさ」
確かに「アルフィー、クリスマスライブあるんだってよ」とAちゃんから、クリスマス武道館ライブの情報は来てた。
だけど、今回の帰省は二週間ちょっとだから国内移動してる時間はない。しかも、アルフィーは今年デビュー50周年ということもあって、ライブチケットは例年よりさらに取れないと評判だった。「クリスマスライブのチケットなぞ、取れるわけない」と、私はなぜか思い込んでいた。
「ビギナーズラックってやつじゃない?」
Aちゃんは申し訳なさそうな感じと、ワクワクしている感じが絶妙に混ざりあたトーンでそう言った。
「まあ、楽しんできてよ」
私はなんとかそう言って、電話を切った。
そもそも、どうして私以外の二人が、アルフィーライブに行くことになったのか。
まず、私が今も定期的につきあっている友人が3人いる。
その中のふたりがAちゃんとBちゃんで、元々は同じ職場の同僚だった。
その中で、一番マメに連絡をとっているのがAちゃん。
彼女は、何かのきっかけでK-POPにはまり、私が「K-POPには興味ないよ」と言ってるのに、ややもすると私にKPOP情報を流してくるという、K-POPファンの典型的行動をとっていた。
別にそれはそれで気にもしてなかったのだけど、ある時、私も「私の推しは、アルフィーの高見沢さんなのだよ」と、まるで女子高生のように対抗してみた。
それからというもの、Aちゃんは、アルフィーの情報がネットにあがったり、テレビで見かけると情報を送ってくれるようになった。
「アルフィー、なかなかいいじゃん。あんたがライブ行くんなら、ついて行ってあげるよ」
謎の上から目線で言われたが、身の回りにアルフィーファンはもとより、日本人の友人もろくにいない状態なので、その申し出は実際ありがたかった。
よくよく考えてみたら、社会人になってから、友達や同僚と、「どんな音楽聞いてる」という話をしたことがない。学生時代は、あんなに音楽やミュージシャンの話を友達同士でしていたのに。
カナダでできた友達とも、80年代や90年代のヒット曲を流しっぱなしにすることはあっても、「誰の音楽が好き」とかの話をした記憶はない。
そして、先日、NHKの「SONGS」という音楽番組でアルフィー特集を見たというAちゃんはまたメッセージを送ってきた。
「アルフィーのライブ行ってみたい」
何かの琴線に触れたのか、上から目線の感じがなくなって、本気でアルフィーのライブに行きたい気持ちになっているようだった。
そんなAちゃんから、しばらくして、またメッセージが届いた。
「ねえ、知ってた? Bちゃんって昔からのアルフィーファンで、ライブも行ったことあるんだって!」
Bちゃんは、私の人生で関わった友人の中で一番賢い。優秀なご家庭で育って、学歴も職歴も、なんで私と友達してくれてんだかわからないくらい立派だ。
そのBちゃんが、アルフィーファンだったとは。
「あんたの話したら、またライブ行きたくなったとか言ってたよ」
たぶん、その時、AちゃんとBちゃんは、「ライブがあるなら行きたいね」って話になったのだと思う。そして、実際にチケットを手に入れてしまった。
ということで、今現在、3人の友達のうち、2人がアルフィー好きだ。
どんな確率だ。
ちょっとしたネズミ講のようではないか。
その後、Bちゃんと話したのだけれど、Bちゃんは高校生の頃、親の仕事の都合で海外で生活することになって、「当時はアルフィーの音楽で生き延びてこられた」らしい。そして高見沢さんの自伝(?)を、暗記するほど読んでた、と。
さすが、賢い。
Bちゃんとのつきあいは、私が独身の頃からだから、かれこれ20年以上。
ただの一度もアルフィーの話なんぞ出てこなかった。
もし、AちゃんがKPOPにハマらなければ...。
AちゃんがBちゃんに私がアルフィーにハマってることを話さなかったら...。
Bちゃんの親が海外赴任しなければ...。
偶然が偶然を呼ぶにしても、私の友達3人しかいないのに、まさか、『推し』が被るとは。
ライブは先を越されるけれど、次回会う時は、思う存分、アルフィーの話をして、カラオケなんかも行っちゃうかもしれない。
自分の好きなミュージシャンとか、作家を他人にばらすっていうのは、なんだか「頭の中を覗かれたみたいな気がして気恥ずかしい」と思っていたけど、思い切って、そこら辺を明かしてみるのもいいかもしれない。
まあ、どんな会話で切り出すかは難しいけど、案外、高校生だった頃と同じような気分になれるかも、だ。
〜終わり