アメリカのカレッジはストレス半端ないけど、その後の人生を変えた

娘は今、カレッジに通っている。

いわゆる大学、ユニバーシティに落ちたので、『コミュニティカレッジ』と言われる短大的な扱いの学校だ。

アメリカのドラマとかでも、「ああ、大学じゃなくって、カレッジね......」的な扱いのあれだ。

そんな扱いの学校でも、娘を見ていると、なかなか難しいことをやっているように見える。

天文学のクラスの情報交換サイトでのコメントのヒントを、娘は天文学好きの息子にもらうのだけど、「今日は疲れてるから、何も思いつかない」と息子が言うので、「しゃーない。ママが手伝ってやるよ」と腕まくり状態で覗いてみた。

これが、なんのこっちゃらさっぱり。
即退散。

カレッジ、侮れない。

と、そんなこと言ってるけど、私も実はアメリカのカレッジを卒業している。

はるか昔、まだ二十代の頃の話だ。

そもそも、英語学校に半年通って帰国する予定だったのに、英語を机で勉強するよりも、現場に行って慣れる式の方が性に合っていたことや、カリフォルニアの青い空の元、日本にはない開放感をもっと味わいたくて、親に頼み込んで現地のカレッジに入学した。

とはいえ、もっと滞在したい、という一心でのカレッジなので、何を専攻するかが、さっぱり決まらない。仕方がないので一般事務的なものを習う、と言う曖昧な学科を選んだ。

当然、エクセルやワードを使う授業がある。

ずらりと並んだコンピューターの中から、各自一台選んで、先生の指導に従って、テキストを進めていく。

が、しかし、私が触るコンピューターが、ことごとく壊れるのだ。

ブルースクリーン。
先生を呼ぶ。
先生も直せず、席の移動を促される。
移動して、しばらくすると、またブルースクリーン。
そっとまた手を挙げる。
先生や隣近所の生徒からの冷たい視線。
……みたいな。

何かしらの電磁波が、私の手のひらから出ているとしか思えない。
自分ではどうすることもできないので、クラスに行くことすら億劫になった。

しかし、そこで、私は閃いた。

「自分で直せるようになったらいいのだ!」

そこから、急遽、コンピューター専攻に変更した。
根っからの文系のくせに。

思いつきで行動する性格、本当にどうにかした方がいいと思う。

とにかく、初めはコンピューターの一般教養的なもの、ハードウェア、ネットワーク、ソフトウェアとかの仕組みとかを教わる。

教科書はとにかく分厚いけれど、文学的な表現とか一切ないので、逆に理解しやすい。国語も英語も、読解力だけは良かったのが功を奏した。

問題は、ソフトウェアのクラス。こればっかりは、数学的なきっちり感が求められるので、元々ざっくりした性格の私のコーディングは、エラー量産で、本当にギリギリでクラスをパスした。

次の年には、コンピューター専攻の中でのコースを選ばなければならない。そこで、ソフトウェア系はもちろん却下として、不器用でハードウェアいじるのもイマイチだったので、消去法でネットワークを選んだ。

この選択は、その後、インターネットが加速的に発展していくので、その後の仕事にかなり役立った。

結局、2年をもってカレッジを卒業。

日本人留学生の中では、大学に編入する人が多かったけど、コンピューター専攻で大学に編入すると、私の苦手なコーディングから逃れることはできないし、時間も資金も足りないのでそこで終わりとした。

そこには、とある女性の教授が言った言葉も深く関わっている。

「あなたたちは、コンピューター専攻は、大卒じゃないと意味がない、みたいなことをよく聞くと思うけれど、そんなことはない。カレッジの卒業であっても、ここで得た知識を元に、立派にIT系の職についている人を私はたくさん知っている。だから、大学に行かないという選択を卑下しないで欲しい」

実際、アメリカの日本企業で一年インターンをした後、日本に帰国して、英語を使う環境でのITサポートの仕事は、わりと引っ張りだこだった。しかも外資系で英語を使い続ける環境でいられたし、何より、社内サポートやトラブルシューティングは、給料もらって謎解きしてるようで、基本的に楽しかった。

カレッジ時代、夢でうなされるほど、勉強したことは無駄じゃなかった。

留学生のビザを保持するためには、年間の最低単位数をクリアしないといけない。かといって、万が一のための予備のクラスで単位をとる余裕はない。

しかも、常に英語の壁が立ちはだかる。

今でも、覚えている。

コンピューターの仕組みについてのテストで、「次の中から、最もcumbersomeなものを選べ」とあった。

残念ながら当時の私は、この『cumbersome(扱いにくい)』という単語を知らなかった。combersomeの意味がわからないから、どれがcumbersomeなのか、わかるわけもない。

そして、真面目にcumbersomeの意味を捻り出そうとすると、なぜだかcucumber(キュウリ)が頭の中で踊り出す。

こういうことがまま、起こる。

どんなに勉強しても、知らない単語が出てきたら、一発で終わり。

だから、いつも綱渡り状態。

今、娘のカレッジの勉強の様子を見て、我ながらよく卒業できたよな、と思う。だから、今でも『カレッジ卒』を誇りに思っている。

近頃の日本の若者は外国に目を向けていない、とよく耳にするけど、海外生活、大変だけど、一度は経験してほしいなあ。

〜終わり