太陽は星で、月はひとつじゃないんだって
娘がカレッジに行き出した。
週3日に授業を詰め込んで、「残りの日はバイトするんだ!」と息巻いていたのに、不況のせいか、さっぱり仕事が見つからない。
まあ、そうだよな。
ニュースでも、移民(不法移民も含めて)の数が多すぎて、若者の仕事がまるでない、と言ってるもんなあ。
まあ、学業もそこそこ忙しいようなので、別にいいっちゃ、いいんだが。
カレッジの一年生とあって、授業も一般教養的なものが多く、娘は理系なので、クラスでの女子の数は2、3名にとどまり、娘曰く、「理系オタクの巣窟」なんだそうだ。
娘は将来何になりたいかが、はっきり決まってるわけじゃないけど、理系の方が潰しがききそうだし、文学系よりかは、はるかにおもしろいと思えるから理系を選んだ。
まあ、学校指定の本以外では、ハリーポッターしか、まともに本読んでるの見たことない子だから、まあ納得。
選択科目では「天文学」をとってて、このクラスは、わざわざ選択してまでとってるワケだから、天文ガチ勢の男子学生ばっかりで、娘にとっては、よくわかんない専門用語を先生が使っても、知ってて当然な感じで授業が進むらしい。
そしてカレッジらしく、クラスのオンラインコミュニティで、天文学に関する意見交換や、情報共有を積極的にすると加点されると聞いて、テストに自信がない娘は、これで点を稼ぐ作戦に出た。
と言っても、ガチ勢に身一つで殴り込むわけではない。
「天文学ガチ勢ジュニア」である息子を使うことを思いついたのだ。
いつもは近寄りもしないのに、娘は自分のタブレットを息子の机に置いて、「ここからここまで読んで、何か気になったこととか、気づいたことがあったら教えて」と言い捨てて、「ああ、忙しい、忙しい。マルチタスクしなきゃ、終わんない」とか言いながら自分の部屋に帰っていく。
息子だって学校の勉強があるのに。
でも、「これまでどれだけ息子の宿題手伝ったと思う? やっと恩返しできるんだから、ありがたく、ちゃちゃっとやってちょうだい。じゃないと、もう勉強教えないよ」
そう言われると、私も文句言えない。
私が子供たちに教えられるものなんか、ありゃしないんだから。
息子は息子で、自分の勉強を放って、嬉々として娘の教材を読んでいる。
子育てって、いくつになっても、うまくいかないもんだな。
ということで、我が家で、頻繁に天文学系の会話が繰り広げられる今日この頃、ふと、今まで疑問に思ってたことを子供達に聞いてみた。
「ねー、星と惑星って何が違うの?」
二人の動きが止まった。
そして本気のびっくり顔で二人同時にこっちを見た。
「本気で言ってる?!」
たじろぐ私。
「だってさ、こっちに住んでて、Starとかplanetってよく耳にするけど、日本にいると、『惑星』なんて、皆既日食とかの時しか聞かないし、歌とかでも、出てくるの『星』ばっかりだよ」
今、ちゃちゃっと調べたら、恒星がいわゆるStarで、惑星がPlanetなんだって。
そうか、漢字にするとどっちも星がついちゃってるから、混乱してたんだな、私。
とにかくこの程度の知識しかないのを知った子供たちが、焦ったみたいに、次々に「軌道が〜、ガスが〜」とか、いろいろ教えてくれる。
なんか、遠い昔、中学の理科の先生だった父親に天体のことを質問したら、そこにあったみかんに爪楊枝を斜めにブッ刺して、「これ、地軸な」と、説明してくれたことを思い出した。その時も、あんましわかってなかったけど。
しまいには娘が、「これを見ろ」と、何やら、地球から太陽系になって、どんどんそれを拡大してブラックホールがあって、みたいな、子供でもわかる天文学みたいな動画を見させられた。
なるほどね。
「キラキラ光る、お空の星♪……は、燃えてるからなのね」
「そうだよ、太陽だってそうだよ」
「ん? ちょっと待って、太陽は太陽でしょ」
「太陽だって燃えてるじゃん。星のひとつだよ」
うわー。
太陽が星?
混乱、混乱。
文系の頭には混アンド乱。
太陽=恒星=STARなんだ。
ふえー、この年ではじめて知った。
「でも、さすがに月は月よね」
「地球のはね」
「ファ?」
びっくりしたわ、英語のMoon(月)ってひとつじゃないのね。
あくまでも地球のムーンがあのムーンってだけで、他にもいっぱいムーンがあるとは。
なんかここら辺が、英語と日本語、ごちゃ混ぜで理解してると、余計に混乱するというか。
日本語だと、月は、あのお月さまのことで、その他のムーン的なお星さま(と言っていいのか?)は、衛星と呼ばれてるけど、英語だとムーンのままなんだって。
自分の日本語能力と、英語能力と、理系的知識の欠落のトライアングルで、相当、ふんわりと理解してたことに気づいた。
世の中知らないことばっかりだな。
小さい頃、おばあちゃんに言われて、目を凝らして月を見て、確かにウサギが餅ついてるみたいに見えたし、
お日様が出てるのに、お月さまもうっすら見えてる日は、「不思議だな」くらいの興味はあったはずなんだけど。
勉強となると、途端に拒否反応が出ちゃうのかなあ。
〜終わり