クラン・ボルツ

計画された偶発性

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         サビカスが手を止めて向き直った。先ほどまでの明るかった表情と一転して、明らかに強張っている。 「知らない。覗こうと思ったこともない」  怖いし。付け足したようなそれは独り言のようにも聴こえた。  それから彼女は、小さい身体でようやくスコップを持ち上げ、また唐辛子を巨大な釜を支える焜炉の投入口へ黙々と投げ込み始めた。  もう特産の“辛味”については話してくれない。 「悪かったよ」  僕が言うと、サビカスは振り返って少しだけ笑みを浮かべたあと首を振った。  部屋が暖まってくる