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表参道とクレヨンハウス

「子どもの文化普及協会さんから、こんな本を入荷しました」
独立書店さんが本を机の上に並べて、SNSで写真を投稿するのをよく見かけます。ナナルイの本もこんなふうにアップされたいな、と思っていました。

無事、子どもの文化普及協会さんと契約を交わしました。

ナナルイの本を注文してくださったお店に届くのは3日後くらいでしょうか。よろしくお願いします。

子どもの文化普及協会は、店の規模が小さいために出版取次が契約してくれない子どもの本の専門店を対象に、クレヨンハウスの経営者である落合恵子さんがスタートさせた本の専門卸会社です。

クレヨンハウスは最近、表参道から吉祥寺に移転しました。わたしが最初にクレヨンハウスを訪れたのは33年前です。就職試験のために上京した時、家に泊めてくれた叔母さんが、翌日に連れて行ってくれた場所でした。

就職試験には落ちました。絵本を発行している出版社でした。試験問題のひとつをいまでも覚えています。子どもが大きな木の幹に耳をあてている絵があり、この子どもが聞いている音とはどんな音でしょう?というもの。

面接はとても優しそうな社長と社員さんの二人。
帰りがけ、その社員さんから
「他にどんな会社を?」
と聞かれ
「住宅メーカーのインテリア部門を受けます」
と答えたら
「あなたはそちらの方が向いてますよ!」
と笑顔で言われました。

その後、採用通知も不採用通知も届いていないので、あの言葉が不採用通知だったようです。

そう言われたからではありませんが、住宅メーカーに就職し、インテリアコーディネーターの資格も取得して6年ほど働きました。室内家具の配置を提案したりしましたが苦手意識がいつもありました。家の中にあるすべての棚に本を並べたくなる性分の自分には、造作家具の提案なども自信がなく、やる気も起こりませんでした。

退職してからは、正社員として働いたこともなく、ひきこもり主婦を8年。その後、図書館で派遣社員として働きはじめ、今に至ります。

33年前にクレヨンハウスで購入した絵本が何だったのかは忘れてしまいましたが、はじめて歩いた表参道の道と、いま歩いている道とが、細く長い道でつながっていたのかもしれません。

住宅メーカーで働いていたころ、話しやすい変わり者の上司がいて、わたしは飲み会の席で
「本当は絵本の出版社で働きたかったんです。いまも童話も書いています」
と話したら
「知り合いに出版社で働いている人がいるから読ませてみろ」
と言われて読んでもらいました。
後日、
「こんな理屈っぽい童話じゃ、紹介できない」
と言われたことも思い出しました。
今振り返っても、あのときの上司はいいひとだったと思います。童話は本当にできが悪かったし、人をバカしたりしない上司でした。



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