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衣替え

とある日曜の昼下がり、僕はクローゼットの前に座り込んでいた。冬が来るからと少し前に服を整理したのだが、年末年始の帰省に向けてアウターを考えているとき、ワードローブなんてものを見直そうとしたのである。

去年の今頃、某アウトドアブランドのマウンテンパーカー的なアウターを購入した。学生時代から厚着が苦手だったしサイズ感や使い勝手は良かったのだが、ダウンではないので普通に寒かったという記憶があった。真冬の北海道で着ていた、ストリート系のハイに近しいブランドのダウンも持っているけど、これは関東で過ごすには暑いし厚い。仕方なくファストというには値段が高くなってきた某ブランドのMA-1的なブルゾンを着ていたのだが、体格に合わないということもあって微妙な気持ちで今年の春を迎えたのである。

今年こそはそのマウンテンパーカー的なアウターを生かそうと、色々と調べてジップインジップという仕組みを知った。ぶっちゃけこれで検索したらどのブランドのどんなアウターかなんてバレるのだけど、これに対応した同じブランドのインナーアウター的なものはフリース素材しか見つからず、静電気術師となる人間としては非常に厳しい。僕は眉を顰める。

そして行き着いた、持て余していたMA-1的なブルゾンと同じブランドのすごく軽いが売りのダウン。去年のバージョンなのか値下げされており、サイズも色も良きものをオンラインストアで見つける。ついでに普段着ているプルオーバーなパーカーの上にチェックシャツを着るというおしゃれなのかよく分からない画像に惹かれたのか、ネルシャツも購入した。いや、なんか正直に言えばいつの間にか購入されてた。

ずいぶんと楽になった、服装選び。基本的に仕事しか行かないし休日のお出かけは近所に買い物に行くくらいで、おしゃれをする必要もないからどんどん服が減っていく。着れるけど着ないよなみたいな服。何かこれはときめかんってやつ。

話は脱線したが、時は日曜日の昼下がり、場所はクローゼットの前。終わりかけた頃に夫が帰宅して、せっかくなので夫の衣替えもすることにした。我が家のクローゼットは大きい1つだけで、それを半分こしているのだけどまあどう考えても3分の2は夫のもので、これを機に手持ちの服を見直してみてもらうことにした。つい最近、白シャツを着ようとしたら洗濯しているのに襟が黄ばみすぎている特級呪物みたいなのをいくつか発見してゾッとしたということもあり。

まずはズボン、それから下着。あとはシャツにアウター。最近購入したものでなければ大体はサイズアウトしていた。夫、ふくふくとすこやかに育っているので。先述した僕のブルゾンはめでたく夫に貰われた。厚着をするだろうと大きめを購入しておいたのが功を奏した。

僕は夫が着れなくなったズボン3着と、スーツを2着もらった。スーツなんてジャストサイズで着るものなのだろうけど、ちょっと大きいかなくらいで済んだ。ネイビーのストライプのスーツはベストまでついている。せっかくなのでどこかに着ていきたいところだが、年1で正装を推奨される会社のイベントはつい最近終わってしまった。来年イベントがあったとしても僕の部署は裏方として駆けずり回るので、スーツなんて着ると可動域が狭まってストレスフルになる未来しか見えない。普段から私服で仕事をしていると、冠婚葬祭がなければスーツを手に取る機会もない。この年齢になって呼ばれそうなイベントナンバーワンの結婚式は元来から一身上の都合で参加しないことにしている。大勢の人々の中で予測ができないイベントに参加するのは何一つ向いていない人間だという自覚があるので。

ただの衣替え、されど衣替え。

夫が「これはどう?」と言って履いたズボンはどう考えてもお尻がパツパツで「ケツが割れてる」と僕が言ったら2人してゲラゲラ笑ったとか、スーツを着た僕を見た夫が「似合うよ」とお世辞か分からないテンションで呟くとか、僕があげたブルゾンを着た夫に「これで今年の冬過ごしてくれ」を僕が懇願するとか、そういうの。

僕が夫を幸せにすると誓った日からそろそろ1年半が経つ。今日は特に何かの記念日なわけでもないけれど、夫の笑顔は多分きっと少し、増えたんじゃないかなと思う。まあ、当社比にしかすぎないけれど。

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haru
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