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[お題で短編物語]ゆめゆめわすれないでよね!
『あのひとがね、好きだったのよこの曲』
そう言いながら祖母は静かに針を落とした。
♪Fly me to the moon~~ ♪
へえー、これでプロボーズを?
祖父さん中々のロマンチストじゃないか。
なんてつい感心したのも束の間、、お?
段々と曲調が先ほどよりやや激しいものへと変わっていく。
これもお祖父さんが好きだったの?と訊こうとした目線の先には、たった今まで優しい目で懐かしんでいた祖母の姿は微塵もなく。
『でもね、私ほんとはこっちの方が好きだったの!』楽しそうにロカビリーしてるお嬢さんがいた。
『一回で良いから一緒に踊ってほしかったのに、あのひとったら恥ずかしがっちゃって』
あの頃に戻ってちょっとプンプンしている。
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「、、ってのが初夢だったんだよね、ばーちゃんそれからずっとプンプンでさ。これどーゆー意味なんかな?」
母に言ったら「ただ愚痴聞いて欲しかっただけよお」と笑われた。
今頃天国で二人とも喧嘩してないといいなあ。
いやむしろずっと二人で平和に踊っててくれ。
「ってか僕の初夢返してくれ!」
愚痴でもなんでも聞くからさ、ばーちゃん次はふつうの夢に出てきてね。
お題はXにて【お題でつくろう】様から「蓄音機とレコードの絵」より