ギャグ漫画のような出来事が多発する国
ニュースを見たり読んだりしていると、一つの不安に襲われることがある。
それは「今の日本ってギャグ漫画で起こるような出来事が現実の空間で起こっていないか?」という不安である。
例えば、2010年8月に当時、首相だった菅直人氏は「昨日事前に予習しましたら(防衛)大臣は自衛官ではないんだそうですね」「改めて法律を調べてみたら(総理大臣は)自衛隊に対する最高の指揮監督権を有すると規定されている」と発言した。
自衛隊は実質的な軍隊とされており、この発言は一国の(実質的な)軍隊のトップが「自分がその軍隊のトップであること」を知らなかったという事実を意味している。
プーチン大統領が「改めて法律を調べてみたら、自分はロシア軍のトップだったわ」と述べたり、習近平国家主席が「改めて法律を調べてみたら、自分は中国軍のトップだったわ」と述べたり、尹錫悦大統領が「改めて法律を調べてみたら、自分は韓国軍のトップだったわ」と述べたりするようなもので、これは「当時、首相だった菅直人さんが、うっかり発言をしちゃったんだね」などというノリで受け止められるような事柄ではない。
自衛隊といえば、稲田朋美氏による衝撃的な発言もあった。
2017年2月の衆議院予算委員会で、南スーダン情勢に関する自衛隊の活動記録に「戦闘」との記載があったことについて野党に追及された稲田朋美大臣は「事実行為としての殺傷行為はあったが、憲法九条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」と答弁した。
この答弁は分かりやすく言えば「事実として憲法違反となる行為はあったけど、憲法違反との非難が来るような言葉は使うべきではないから、憲法違反との非難をかわせるような言葉を使っている」という意味であり、一国の大臣が憲法違反を認めたということを示している。
稲田朋美大臣の発言から分かるように、喜劇的にして悲劇的なコメントが散見されるのは政党の問題ではない。
もはや、旧民主党だとか、自民党だとか、そういった次元の話ではないのだ。
日本には情報公開法があり、公的機関は日本国民への情報公開を義務付けられているが、公的機関によっては機関の内部関係者にとって不都合な情報も存在する。
そのとき、一部の組織は本来であれば公表すべきページや箇所を黒塗りにして、不都合な情報の公開を誤魔化すことがあり、このような誤魔化しは世間で「のり弁(のり弁当)」や「黒塗り」などと問題視されてきた。
2016年より都知事を務める小池百合子知事は「『のり弁』をやめます」と宣言した。
だが、「のり弁」をやめるという宣言は確かに実現したものの、それは「本来であれば公表すべきページや箇所の誤魔化し」をやめるという意味ではなく、黒塗りを白塗りに変更するという意味に過ぎなかった。
「一休さんかよ」と溜息をつきたくなるが、この出来事の詳細は2021年11月の「しんぶん赤旗」に掲載された以下の記事などで取り上げられている。
コロナ渦が問題となっていた同年の5月、鹿児島県霧島市で思わず苦笑いをしてしまいたくなるような出来事が発生した。
1人だけが感染ではなく3人が感染ということは、市職員がプラカードで呼びかけをする際に「密」となっていた可能性が高く、まさに市職員が密集していたと考えられる。
このニュースを読んで「ミイラ取りがミイラになった」というフレーズを連想する人は少なくないだろう。
その翌年、或る少年漫画の担当編集者が伝説を残した。
海賊をテーマにした漫画『ONE PIECE』が1000話に達したことを記念した集英社のスタッフたちは1000話記念企画を実施した。そして、YouTubeで、その企画を解説する配信を行った。
しかし、配信の或るシーンで「担当編集者が海賊版サイトを閲覧したと思しき履歴の画面」が写ってしまった。
これに対しては、「海賊版サイトの閲覧履歴が発覚するにしても、よりによってエロ漫画の海賊版サイトかよ」という声のほか、「海賊漫画の担当編集者が海賊版サイトを閲覧していた」という皮肉を指摘する声があがった。
「海賊版サイトを取り締まらねばならない立場のはずなのに笑い話では済まされない不祥事だ」と担当編集者を非難するネット民もいた。
数日後、集英社は「事実関係を確認したところ、配信動画に写り込んだ当該社員のスマートフォン画面は、ネットサーフィン中に偶発的にリンクに触れ、遷移してしまったアクセス履歴と判明しました。違法サイトの検索、不法なダウンロードなどは行っておりません。ライブ配信をするにあたって、個人所有の機材を使用した件については、社として推奨していないものであり、厳重に注意しました」と発表したが、ネットではこの発表文に苦笑する者が多かった。
2024年6月21日、岸田首相は内閣総理大臣による記者会見を行った。その際、目を疑うようなグラフが登場した。
その辺にいる中学生でも容易に作成できそうなグラフであり、一国の内閣総理大臣が、これほどまでに内容のない間抜けなグラフを記者たちに提示していたという光景は、端的に言って、闇が深い。
本記事で列挙した出来事は「余りにも状況が深刻すぎて笑わざるを得ないほど笑えない事態」とでもいうべきなのだろうか。
喜劇的にして悲劇的な出来事が数えきれないほど発生しているこの国に輝かしき未来があることを強く願って本記事を結ぼうと思う。