【Steve Winwood】(1977) トラフィックの面影ちらつく1stソロアルバム
スティーヴ・ウィンウッドって長いキャリアの割にはソロアルバムが少ないんですよね。現在までにオリジナル作品はたったの9枚。
本人はビジネス・サイクルに縛られること無く、納得出来た時にだけ作品として纏めたいタイプなのでしょうね。突然の課外活動も含めて、自由奔放な気質の持ち主なのかなと思います。楽器は何でも出来て歌が上手い。まさしく天才ゆえに許されるスタンスですね〜
デビュー以来バンドで活動を続けてきたウィンウッドですが、創作力旺盛だったトラフィックを1974年に解散。本作は3年間の沈黙を破ってリリースされた記念すべき初ソロ作品です。
トラフィック解散後、ウィンウッドはほぼ休業状態。表舞台から姿を消しています。
データによれば、日本人ベーシストのツトム ・ヤマシタ主催のGO・プロジェクトにシンガーとして参加した以外は、ゲストで他人の作品に顔を出す程度。長年走り続けてきた分、ゆっくりと充電していたようです。
満を持して発表されたこの1stソロですが、冒頭2曲こそスタイリッシュなブルー・アイド ・ソウル路線ですが、全体の作風はまだトラフィックの名残りを引きずってるんですよね。私も久しぶりに聴いてみて感じました。
曲作りは盟友ジム・キャパルディとの共作が中心。トラフィックの最終作【ホエン・ジ ・イーグル・フライズ】(74年) にも似た穏やかでゆったりとした佇まいがあり、ウィンウッドもこの時点ではハッキリしたソロの方向性を定めかねていた様子です。
いつも通りのマルチプレーヤーぶりを発揮していますが、バックには当時売れっ子だったウィリー・ウィークス(b)、アンディー・ニューマーク(ds)のファンキーなリズムセクションが参加。B-①では英国ホワイトソウルバンドのココモのリズム隊を起用しています。
ウィンウッドらしく他ジャンルをブレンドしながら独自のロックを表現するスタイルですが、まだまだプログレッシブな感性が色濃い過渡期といった内容の作品ですね。
Side-A
①"Hold On" (Winwood, Capaldi)– 4:32
②"Time Is Running Out" (Winwood, Capaldi)– 6:30
③"Midland Maniac" (Winwood) – 8:32
Side-B
①"Vacant Chair" (Winwood, Viv Stanshall) – 6:54
②"Luck's In" (Winwood, Capaldi) – 5:23
③"Let Me Make Something in Your Life" (Winwood, Capaldi)– 5:33
A-①"Hold On"
本作は冒頭2曲がスマートでカッコいいです。洗練されたポップソウル風な感触が、ウィンウッドらしくブラックミュージックを咀嚼してきた深い味わいがあります。スッキリとしたシンセサイザーの音色も都会的です。
A-②"Time Is Running Out"
本作でも一際印象に残るウィリー(b)、アンディー(ds)のタイトなリズムセクションが活かされたファンキー・チューン。クラビネットの音もこの時代っぽい躍動感でカッコいい!アフロ的なニュアンスもあります。
こういう解りやすいブルー・アイド・ソウル路線を貫いていたら、本作の評価も違っていたと思うんですが…。
B-②"Luck's In"
これはもうトラフィックですね〜。
心地良い歌メロから一転、後半は圧巻のジャムセッション!ラテン調のリズムにジャジーなシンセサイザー、ハードなギターも加わってかなり刺激的な演奏です。
元トラフィックのリーボップ・クワク・バーもサンバ調パーカッションで参加。かなりゴッタ煮の様相です。 ウィンウッド流のワールド・ミュージックですね。
B-③"Let Me Make Something in Your Life"
最後もトラフィックの影がちらつくゴスペルテイストな曲でクロージング。こういう荘厳なミディアム・テンポにウィンウッドの歌声は抜群に響きます。隠れた名唱、名演です!
本作って曲が長い上に、取っ付き辛さもあって地味な扱いを受けてるんだと思います。でも内容は結構良いんですよね〜。
ウィンウッドのソロ作品ですが、いっそ半分はトラフィックのアルバムだと思って聴けばシックリくるのではないでしょうか?!
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