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【Out Of Our Heads】(1965) The Rolling Stones カバーからオリジナルへ初期ストーンズの傑作

いきなりですが、松金よね子さんという女優をご存知でしょうか?
その昔80年代に《オレたちひょうきん族》のひょうきんベストテンにて、松田聖子の役をやらされていた姿が印象に強く、どちらかと言えばコメディ寄りのイメージ。でも実際は劇団出身の舞台女優さんです。

実は松金さん、筋金入りのローリング・ストーンズのファンなのです。
私も高校時代から大のストーンズ狂。1990年代にはファンクラブに入会していました。そこで数ヶ月に一度送られてくる会報誌〈Stone People〉には、ストーンズの近況、海外公演に行った方のレポート、ストーンズ論、海賊盤レビュー、文通相手募集…などなど盛り沢山だったのですが、とある号に松金よね子さんへのインタビューが掲載されたのでした。

聞けば松金さん、かなりの古参ファン。(ちなみにお笑いコンビ、ピンクの電話の竹内都子さんも熱狂的ファン)
会報誌は既に処分してしまい、肝心のインタビューの内容はすっかり忘れてしまいましたが、たった1つ強く印象に残った発言がありました。

 ー何故ビートルズではなく、ストーンズなのですか?の質問に松金さん、
「 "抱きしめたい" みたいな曲をやらないから」とキッパリ。

私、この返しに感動しました。自分の中でボンヤリ感じていたことを見事に言い当てている…。何とストーンズファンの心情を捉えた的を射た表現なんだろうと感激したのです。(あくまで主観デス)

勿論、"Ruby Tuesday" や "As Tears Go By" のようなバラードもストーンズにはあるし、 "Out of Time" だって結構ポップです。
でも違うんですよね。ビートルズほど完璧じゃない。いや、言い方を変えれば…、間違っても全方位に満面の笑みで握手するような曲はやらないのです!!(あくまで主観デス)

何処かやさぐれていて、不器用で、疲れていて、ちょっと野暮ったい…。まるで自分みたい。だから好きなんでしょう。聴いていて安心出来るのです。

前置きが長くなりました。ブライアン・ジョーンズがいた頃のストーンズは、そんな野暮ったい雰囲気を目一杯振り撒いていたように思います。
黒人ブルースやR&Bのカバーに加えて、自分たちの曲でヒットも出すようになった本作辺りは、血気盛んだけど気怠さもあって良いもんです。


(アナログレコード探訪)

本作【アウト・オブ・アワ・ヘッズ】は英国で3枚目、米国で4枚目の作品。ビートルズ同様、この時代のストーンズも英米でジャケットも選曲も異なる内容となっています。
シングル曲を収録しない英国デッカ盤、シングル曲込みでコマーシャル狙いの米国ロンドン盤といった所でしょうか。 

〜選曲操作と疑似ステレオMIXの時代〜

米国ステレオ版ジャケット
上部に "疑似ステレオ" を意味する表示あり

こちらの米国ステレオ盤は、"LONDON" のロゴが四角く囲われている、 "STEREOPHONIC" の表示がある、レーベルの青色の深さなどから、70年代半ば頃のプレスだと思われます。

選曲が違うということは、米国では英国より送られる原盤複製マスターを再度コピーして独自マスターを作ってプレスしていたという事です。
また当時はモノラルMIXが基準。ストーンズの場合、ステレオと言ってもモノラルから無理矢理こしらえた疑似ステレオです。

そんな訳でこの米国ステレオ盤、音は良くなかったです。鳴りが遠いし、高音もキンキンしてました。
良く言われますが、ビートルズもストーンズも初期はモノラル盤で聴いた方が生々しくて迫力もありますね。

ローリング・ストーンズ第4集
〜アウト・オブ・アワ・ヘッズ〜
キングレコードの再発盤

一方、こちら日本盤。キングレコードが1969年に出した再発です(初回盤は1965年)。ジャケットは時代を表わすサイケ柄。
当初より日本では米国編集版を基準に発売されていたようです。タイトルに数字が振られており、本作は「4」。
面白いのが米国盤のA面、B面を逆にして、曲順も変えているところです。

キングレコード盤の曲順
80年代始めまでこの曲順だったようです。

各面の頭にシングルヒット曲を持ってくるところが日本らしい(笑) こうした操作が自由に出来たのだから、昭和の大らかさを感じずにはいられません。
さて音は?……ただでさえ海外から送られてくる複製マスターを、更に曲順をイジって独自のダビングマスターからのプレスです。良い訳ありません。昔のAMラジオ程度です。


〜曲紹介・US編集版〜

Side-A
① "Mercy, Mercy" 2:45
ドン・コヴェイが歌った64年のR&Bヒット。ブラックミュージックのカバーも熟れて、デビュー当時より幾分スケールを感じるアレンジです。この黒いフィーリングこそ初期ストーンズですね。ミック・ジャガーがネットリと歌うR&B、いい味です。


② "Hitch Hike" 2:25

③ "The Last Time" 3:41
中学時代、鈴木雅之さんのラジオ番組でストーンズ特集があり、そこで耳にしたこの曲こそ私がストーンズにハマった一歩でした。
黒っぽくて、古くて、ちょっと怪しい世界。イントロのブライアンのギターが素晴らしい。ミックのシャウトも若くて野性的です。

④ "That's How Strong My Love Is" 2:25

⑤ "Good Times" 1:58

⑥ "I'm All Right" 2:25

Side-B
① "(I Can't Get No) Satisfaction" 3:42
キース・リチャーズのファズギターのリフが余りに有名なストーンズ初の全米No.1ヒット曲。これが入ってるか否かでアルバムの印象が違います(英国盤には未収録)。
映像は当時のライブ。PAシステムも無い、アンプの生音だけの演奏です。これは演りづらそう。大歓声の中、皆きっとチャーリーのドラムだけを頼りにしていたのでしょう。スネアが4つ打ちなのはクリック代わりだったのかもしれません。

② "Cry to Me" 3:09

③ "The Under Assistant West Coast Promotion Man" 3:07
作曲クレジットはNanker Phelge。当時のストーンズ全員のライター名です。ブライアン・ジョーンズのブルースハープ、イアン・スチュアートのピアノがいなたい雰囲気を全開!邦題「ウエストコーストの宣伝屋」


④ "Play with Fire" 2:13
Nanker Phelgeの傑作。ハープシコードの優美な響きが印象的です。バラードをやらせれば、ビートルズより欧州風味が強いのも60年代ストーンズの魅力と言えますね。

⑤ "The Spider and the Fly" 3:39

⑥ "One More Try" 1:58

1963年にレコードデビュー、今年2023年になっても健在のストーンズ。奇跡です。
誰も想像しなかったでしょうし、本人達だってまさか考えもしなかったでしょう。

間もなく発表される噂の新作には、何とビートルズのポール、リンゴが参加との情報です。ロックシーンを築いた最初の世代、文字通り生き抜いてきたサバイバー達の友情に思わず涙が出てきそうです。

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