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【Surrealistic Pillow】(1967) Jefferson Airplane 60年代サンフランシスコ・サウンドの傑作

1960年代後半のサンフランシスコからは個性的で奇妙なバンドが沢山出現しました。
バンド名がやたら長かったり、変わった編成だったり、音楽性もまちまち…。でも共通しているのは何やら怪しいドラッグの香り⁉💦

サマー・オブ・ラブとか、フラワーチルドレンという言葉を聞いて、私が真っ先に思い浮かべるのが本作【シュールリアリスティック・ピロー】です。紅一点のグレイス・スリックが歌う"Somebody to Love" (邦題:あなただけを) の印象が強いですが、他の楽曲も粒揃い。奥深い世界へと引き込まれてしまうサマー・オブ・ラブの名盤です。

ジェファーソン・エアプレインの歴史は、マーティ・バリン、ポール・カントナーの2人のシンガーが、ロックバンドを結成しようと目論んだ所から始まったようです。
1966年に大手RCAレコードと契約してデビュー。この時の初代ボーカルがシグニー・トリー・アンダーソンという女性でしたが、間もなく1stアルバムで脱退。新しくグレイス・スリックが加わり、ドラムも交代したラインナップで本作2ndアルバムは録音されています。 メンバーは次の通り。

マーティ・バリン(vocal)
グレイス・スリック(vocal)
ポール・カントナー(rhythm guitar, vocal)
ヨーマ・コウコネン(lead guitar)
ジャック・キャサディ(bass)
スペンサー・トライデン(drums)

男女3人のリードボーカルを擁するジェファーソンですが、バンドの顔は何と言ってもグレイス・スリック。元モデルだけあって目鼻立ちの整った容姿といい、自己主張の強い歌唱といい、私はこの人こそ女性ロックシンガー初のアイコンだったのではないかと思っています。
3人はリードとハーモニーで分かれながらも、割と奔放に歌い出す自由なスタイル(笑)。演奏も粗野で、ガレージなノリ。ジェファーソンは余りアンサンブルなど細かく考えないバンドだったのかもしれません💦

本作は一聴した感じフォークロック調です。サイケデリックな音といえばヨーマ・コウコネンのファズギターくらい。シンプルな演奏に深いエコーをかけることでサイケ感を演出しています。過剰なギミックは無し。楽曲の良さと残響音だけで幻惑の世界へ引き込んでいく、聴き手の想像力を掻き立てる作品ですね。


(アナログレコード探訪)
〜フォークロックなMONO、サイケなSTEREO〜

本作のモノラル盤とステレオ盤は、全く雰囲気が異なります。モノラルMIXを聴いてみるとほぼ残響音のないストレートな音。よりラフなフォーク・ロックな感触に驚きます。
実際に一部のメンバーからステレオMIXへの反対はあったらしく、妥協案として2種類出したのだろうと思います。この時点でバンドの方向性は決まっていなかったのでしょう。

もし本作が残響音のないMIXのみで発売されていたら、ジェファーソンの評価はまた随分と違っていたように思いますね。
個人的にはサイケな世界が広がるステレオ盤がシックリきます。

米国RCAレコードの初回盤 (ステレオ)

本作初回盤はRCAビクターでお馴染み、犬のニッパー君が描かれたレーベルです。ニッパー君の歴史はかなり古いのですが、これは1964~68年に使われた最後期のタイプ。その後暫くデザインから消えます。(70年代後半から復活)
この盤、貴重な初期プレスなのに貧弱な音でガックリ。多々オーナーの手に渡って盤がヘタったのかも。残念な1枚でした。

米国RCAレコードの再発盤

ニッパー君の次に登場したのがオレンジ色レーベル。これも微細によって3期に分かれて、これは2期目。69~71年までのプレスです。
マスターテープが新鮮な頃に作られた盤だけに文句無く良く鳴る盤でした。レコードは聴かないと分からないのが怖いです…💦


〜曲紹介〜

Side-A
① "She Has Funny Cars" 3:03

② "Somebody to Love" 2:54
ジェファーソンの名を一躍全国区にした出世作。サマー・オブ・ラブを代表するアンセムです。
グレース・スリックが在籍したGreat Societyからの持ち曲ですが、明快なメロディ、力強いボーカルもあって、余計なアレンジを必要としない曲の魅力があります。グレイスの独特なしゃくり上げるような歌い方を聴いていると私は山本リンダを思い出しますね。
しかし、グレイスのお顔の美しいこと…。

もう1つ。まさにこの曲がヒットしていた67年6月に行われたモンタレー・ポップ・フェスティバルの映像。ステージでは3人を軸にしたスタイルだったことがよく分かります。グレイスの存在感が一際目を引きますね〜。

③ "My Best Friend" 2:59

④ "Today" 2:57

⑤ "Comin' Back to Me" 5:18
本作の最も深みに位置するのがこのマーティ・バリンの傑作。生ギターの弾き語りとフルートだけのバラードですが、深く沈みこんだ佇まい、底なしの暗さ、まるで瞑想の中にいるような美しさです。残響音と相まって幻想的な世界が広がる感覚、サイケですね。


Side-B
① "3/5 of a Mile in 10 Seconds" 3:39
私がジェファーソンといって思い浮かべるサウンドがこの曲です。粗削りで性急なリズムと演奏、3人がユニゾンで歌うボーカル、そして最後はファズギターのソロ…。ラフで開放的な演奏がサンフランシスコ風です。他の地域にはないノリですね。

② "D.C.B.A.–25" 2:33

③ "How Do You Feel" 3:26

④ "Embryonic Journey" 1:51
ヨーマ・コウコネンによるアコースティックインスト。シスコというよりこちらは欧州のエレガントな美しさが漂う小品です。ジミー・ペイジが弾きそうなスタイルとも共通しますね。本作に収録されると、この高貴な美しさが逆に狂気じみて聴こえるのは私だけでしょうか…。


⑤ "White Rabbit" 2:27
グレイス・スリックがGreat Societyから持ち込んだもう一曲。ボレロ風リズムにエキゾチックな歌メロが乗る不思議な異国情緒です。映像はTV出演時。私、カチューシャをしているこの頃のグレイス・スリックが大好きなんです。背もスラッとした絶世の美人。存在感ありますね〜。この目で見つめられたら吸い込まれそう。滅茶苦茶にされそう。魔性を感じます。これぞサイケデリック。。。

⑥ "Plastic Fantastic Lover" 2:33

各メンバーの才能溢れる楽曲、巧みな残響音処理、グレイス・スリックのスター性、全てが揃った本作は、ドアーズの1stと並ぶサマー・オブ・ラブの傑作とされるのも納得です。
ヒンヤリ冷房効果も期待出来る本作を聴いて暑い夏をトリップ……いや乗り切りましょう!

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