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【Free】(1969) Free 暗く湿った英国サウンドの2作目
60~70年代のブリティッシュ・ロックの中でもフリーの人気は今も高いですね。
ポール・ロジャースのいぶし銀のボーカル、ポール・コゾフの気迫が乗り移ったギタープレイ等、彼等の音楽は聴いているこちらのハートにグイグイ迫ってくるものがあります。
大袈裟かもしれませんが、まるで魂ごと掴まれるような感覚。つまりはソウルフルなんですよね〜。
フリーと言えば大ヒットした "All Right Now" や3作目【ファイアー・アンド・ウォーター】が代表作として有名ですが、ブレイク前のこの2ndアルバムも地味ながら素晴らしい内容です。
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デビュー作【トンズ・オブ・ソブス】(69年)では、彼等のルーツであるブルースロックが大爆発したような非常に派手な内容でしたがその僅か数ヶ月後に発表されたこの2作目、随分と渋い内容なんですよね。
私は初めて聴いたとき、何と地味なアルバムなんだろうと思ったものです。
プロデュースはクリス・ブラックウェル。
本作よりポール・ロジャース(Vo) とアンディ ・フレイザー(B) がソングライティング・チームとして本格的に始動しており、早くも単なるブルースロックから脱却している点は目覚ましい成長です。
全体を覆っているのは暗く沈んだトーン。曲によってはかなり陰鬱で湿っぽい雰囲気があるんです。この辺りは、英国の歴史に深く根付くブリティッシュ・フォークからの影響を色濃く感じますね。
フリーといえばブルースのイメージですが、やはり英国のバンドらしくフォーキーな感性もルーツにあったことが、この2作目では露わになっています。
アンディ・フレイザーのベースラインを軸にポール・ロジャースがシャウトする独自のスタイルも出来上がっており、フリーならではの薄暗いブリティッシュサウンドの原点と言える作品です。
(アナログレコード探訪)
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All Songs written by Andy Fraser and Paul Rodgers , except A-④
Side-A
①"I'll Be Creepin'" – 3:27
この曲好きなんです。イントロからのギターリフがイイですね〜。フレイザーが淡々とベースを刻み、ロジャースがシャウト気味に渋い喉を聴かせる…。ブルースを昇華した彼等のセンスが冴えた1曲です。コゾフのギターソロも一触即発の鋭さで斬り込んできて熱い!
②"Songs of Yesterday" – 3:33
フレイザーの弾むベースラインにロジャースの歌が入ってくるとソウルフルなノリです。やっぱりポール・ロジャースの歌声は英国の宝ですね〜。
コゾフがレスポールで弾くギターソロは、始めウーマントーンぽい音使いで、この辺りエリック・クラプトンからの影響でしょうか。終盤のロジャースとの掛け合いが絶妙です。
③"Lying in the Sunshine" – 3:51
④"Trouble on Double Time" (Fraser, Rodgers, Kirke, Kossoff) – 3:23
⑤"Mouthful of Grass" – 3:36
唯一のインストナンバー。本作に陰鬱な影を落としているのが、こうした英国フォークからの影響を強く感じる曲です。
エコーが効いた音像、不思議なコーラスなど直後に登場するウィッシュボーン・アッシュの初期作品にも通じる世界観です。
朝もやの中、雨上がりの湿った深い森を彷徨っている…私にはそんなイメージですね(^^)
Side-B
①"Woman" – 3:50
重く沈んだ8ビートで、フリーお得意のタイプです。サイモン・カークのドタバタのドラムもこうした曲ではヘヴィーに聴こえます。音の隙間が多いのに決して安っぽくならないのもフリーの強味ですね。
②"Free Me" – 5:24
③"Broad Daylight" – 3:15
④"Mourning Sad Morning" – 5:04
アコギ弾き語りにフルートが絡むこちらも英国フォーク調。同じアイランドのレーベルメイト、トラフィックが翌年に発表する "John Barleycorn (Must Die)" にアレンジがそっくりなんです。スティーヴ・ウィンウッドはここからヒントを得ていたように思います。
実際フルートを吹いてるのはトラフィックのクリス・ウッド。両バンドとも関わりがあったのでしょうね
暗く地味ですが、滋味深いアルバムです〜💦
当時のメンバーの平均年齢が何と19才ほど!(ベースのアンディ・フレイザーに至っては17才!) 若いのによくこんな醒めた音楽を作るなぁと、つくづく恐れ入ります…。