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【Sneakin' Sally Through the Alley】(1974) Robert Palmerミーターズと本場ニューオーリンズで録音したデビュー作

英国ロックシーンでは1970年代にも、個性的なブルー・アイド・ソウルシンガーが登場しています。ロバート・パーマーはその代表格ですね。スーツを着込んで歌うクールな伊達男のイメージで、80年代には大ヒットを飛ばしてスターの地位に登り詰めました。

しかしながら、このデビュー作は名盤です。いきなり米国ニューオーリンズに出向いてミーターズをバックに録音した傑作。
ロックシンガーが本場のニューオーリンズサウンドに挑んだ文句無しの作品です!

ロバート・パーマーはソロ以前にビネガー・ジョーというバンドに参加しています。
女性シンガー エルキー・ブルックスとの双頭ボーカルのバンドで、ドロ臭いスワンプロックを聴かせ、1971〜74年までアイランド・レコードから3枚の作品を残しました。
解散後、ソロになったロバートが発表したのがこの【スニーキン・サリー・スルー・ジ・アリー】です。

本作の魅力は何と言っても、米国ニューオーリンズに渡って地元のミーターズと録音したゴリゴリのファンク・サウンド。これは凄いです!
本場の黒いグルーヴを求めて直接現地に出向く行動力も大したものですが、英国ロッカーがこの時代にこんな音楽をやっていたことに驚きます。
マッスル・ショールズ録音が当時のブームでしたが、セカンドライン・ファンクに注目したところがロバートの彗眼ですね。

しかし、製作過程でロバートが最初に向かった先はニューヨークだったようです。
ここでコーネル・デュプリー(Gt)、リチャード・ティー(kyd)、ゴードン・エドワーズ(B)、バーナード・パーディ(Dr)といった後にスタッフを結成するメンバーを中心に(A-④、B-①④)を録音。
その後ニューオーリンズへ出向きミーターズと(A-①③、B-②③)を録音、という流れだったようです。プロデュースは米国人のスティーヴ・スミス。

そしてこの現場に帯同していたのが本作の立役者ローウェル・ジョージです。彼は両方のセッションに参加し、ロバートと共作曲を書く活躍をしています。
何でもロバート・パーマーはリトル・フィートの作品を大変気に入っていたらしく、ローウェルを指名して渡米してきたとのこと。どちらの録音にも濃厚にニューオーリンズ風味が感じられるのは、このローウェルを介しての狙いだったのでしょう。


(アナログレコード探訪)

〜米国アイランドのレーベル変遷〜

レコード収集をしていると各会社のレーベルデザインの変遷というのが気になります。
英国資本のアイランド・レコードが米国にも置かれるのが1971年頃。当初は英米同じデザインでしたが、途中から米国独自のデザインがあるので複雑。ちょっと推測も含めてまとめてみました。

米国アイランドの最初のレーベル。71~73年まで使用されました。同時期の英国盤と同じデザイン。
縁側の色から、通称ピンクリムとも呼ばれます。
米国独自に74~75年頃まで使われたデザイン。
ヤシの木がスキーをするユニークな絵柄。
1974年発表の本作は米国初回盤がこれになります。
続いて75~77年辺りに使われたブラックレーベル。
そして1978年頃から再び英米共通で使われたレーベルがこちら。私が所有する本作の米国盤です。
A面は昼間の太陽、裏面は夜の月という所から通称デイ&ナイトとも呼ばれます。どの時期もアイランド=島のイメージを守ったポップなデザインです(^^)


本作はズバリA面の冒頭3曲が圧巻。メドレー形式で繋がるニューオーリンズ・ファンクビートは絶品です!

Side-A
① "Sailin' Shoes" (George) 2:44
いきなりリトル・フィートの2nd表題曲を野太い横ノリビートでカバー。演奏はミーターズ。カッコよすぎますね〜。
ローウェルもスライドギターで参加。自身の曲をミーターズと演るなんて最高に楽しいセッションだったでしょうね。


② "Hey Julia" (Palmer)2:24
メドレーのブリッジに相当するロバートと少人数の録音。これもリズムボックスとハンドクラップで複雑なノリを生んでいます。


③ "Sneakin' Sally Thru the Alley" (Toussaint) 4:21 
ノンストップのトリは再びミーターズの演奏で表題曲。アラン・トゥーサン作、リー・ドーシーのヒット曲です。
カッコよすぎます〜まさしくリズムの洪水!思わず腰を振りたくなるようなファンクビートにシビれますね〜。
執拗に繰り返すビートの波に、ちょっと掠れ気味な喉で熱唱のロバート・パーマー!これは窒息しそうです(^^)


④ "Get Outside" (Palmer)4:32
一転してNY録音。ねちっこく、ブルージーな曲調が L.フィート【ディキシー・チキン】収録の "On Your Way Down" と似てます。これもアラン・トゥーサン作品なのでロバートなりのオマージュだったのかもしれません。


⑤ "Blackmail" (Palmer, George) 2:32

Side-B
① "How Much Fun" (Palmer)3:02

② "From a Whisper to a Scream" (Toussaint) 3:32

③ "Through It All There's You" (Palmer)12:17
最後の曲も後のスタッフのメンバー中心のNY録音。長尺ジャムセッションです。
淡々と続くリズム、クールな演奏、気怠いボーカル……どうもこの曲だけスライ&ザ・ファミリーストーンの【フレッシュ】に入ってそうなノリです。ロバートの声もスライに寄せてるような気が…(笑)。燃えてるのに芯は冷めてる感じは間違いなくスライを意識したもので、これもロバートのリスエストだったように思います。
レーベルメイトのスティーヴ・ウィンウッドがオルガンで渋いプレイを、元キング・クリムゾンのメル・コリンズもサックスで客演してます。


1979年の貴重なライブ映像がありました。本作冒頭3曲のファンクメドレーです(^^)


その後、レゲエをはじめワールドミュージックも取り入れながら洗練されていくロバート・パーマーですが、このデビュー作のストレートでゴリゴリな感触はやはり特別です。素晴らしい隠れた傑作です。

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