【Bad Influence】(1983) Robert Cray Band 80年代モダンブルースに登場した新星
ブルース・ミュージックが苦境にあった80年代、再び表舞台へ引き上げた立役者に白人のスティーヴィー・レイ・ヴォーンの活躍がありましたが、黒人ではこのロバート・クレイの登場も大きかったように思います。
ストーンズ経由で古いブルースを聴き始めた私ですが、そんな私に渋い洋楽好きな先輩がかつて薦めてくれた1枚が本作でした。
形式ばったイメージを打ち破る内容で、ブルースって現在進行形で進化してるんだなぁと感動したものです。
80年代モダン・ブルースの守備範囲の広さを実感する素晴らしい作品です(^^)
ロバート・クレイは1953年生まれ。世代的にも完全にロックに親しんでおり、若い頃はジミ・ヘンドリックスやエリック・クラプトンをコピーしていたそうです。
ちなみにスティーヴィー・レイ・ヴォーンは1コ年下。新しい世代が奏でるブルースですから、当然違った発想が生まれる訳ですね。
1980年にデビュー。本作は2作目。プロデューサーのブルース・ブロムバーグが、ロバート・クレイを売り出す為に設立したハイ・トーンレコードから発表されています。
ロバートを一躍有名にしたのが本作表題曲。これをエリック・クラプトンが【オーガスト】(86年)の中でカバーして大きく注目されます。
当時のクラプトンと言えば、アルマーニのスーツを着込んですっかりセレブなロックギタリストといったイメージ。若きブルース界の新鋭の登場にルーツを再確認させられたのではないでしょうか(笑)。
私が本作を好きなのは、ブルースの枠を超えていこうとする楽曲のバリエーションの豊富さです。ファンキーなものからスロー、そしてR&B感覚あふれる歌モノまで幅が広くて聴きやすいのです。
しかもアプローチがモダン。
一曲目の"Phone Booth" から一気に乗せられます(^^)
ロバートはギターを弾きまくるけどクドくなく、歌声も細いけどスッキリしてるので聴きやすい。ソフトケイトされたブルースが心地良いんです。
メンバーは
ロバート・クレイ (Vo, Gt)
リチャード・カズンズ (B)
マイク・ヴァニス (Kbd, Tenor Sax)
ウォーレン・ランド (Alto Sax)
デヴィッド・オルソン (Dr)
サックス奏者がいるのもモダンですね。
(アナログレコード探訪)
本作は本国米国ではハイトーン・レコードから1983年にリリースされていますが、マイナーレーベル故に他国では少し遅れて発表されています。徐々に評判を呼んだのでしょう。
〈追記〉
先日、中古レコード屋で米国盤を手に入れたので追記、報告します(^^) (2022/11/23)
Side-A
①"Phone Booth" 3:29
ファンキーなビートに洗練されたサウンドとボーカル。私はこの曲でヤラれました〜。新しいブルースを感じますね。
ロバートのギターソロは弦の振動が伝ってくるようなエモーショナルなノリ。
切れ味も鋭いです!
②"Bad Influence" 2:52
クラプトンもカバーした本作表題曲。歌心あふれるソウルナンバーです。この手の曲はロバートの艶のある歌声にグッときます。
途中に入るアルトサックスが何ともお洒落。
ちなみにクラプトンのバージョンがこちら。フィル・コリンズと関わった頃。今聴くと時代を感じるアレンジですね〜。軽い!
③"The Grinder" 4:06
シャッフルビートでひたすら真っすぐのブルース。この堂々としたノリ、いいですねぇ。ツボをついたギターソロも切れ味抜群です!
④"Got To Make a Comeback" 2:49
サザンソウル風のバラード。スタックスのソウルシンガー、エディ・フロイドのカバー。ロバートの声はちょっと甘くて色っぽい。ディープな感触がたまらないです。
⑤"So Many Women, So Little Time" 3:58
Side-B
①"Where Do I Go from Here" 4:00
②"Waiting for the Tide to Turn" 3:28
③"March On'" 2:22
④"Don't Touch Me" 3:20
⑤"No Big Deal" 4:10
LPのラストは何とジャングルビートが炸裂の野性的ナンバー。太いベースライン、性急なギター、ロバートの歌にも熱が入って否が応でも煽られます。カッコいい!
どんな世界にも新しい感性が入り込むと賛否両論巻き込んで活性化していきますが、80年代のブルースシーンはまさにそんな状況だったのでしょう。
ロバート・クレイもいまやベテランのブルースマン。近年作も聴いてみようかと思うこの頃です。肌寒くなってきた夜長にブルースって合いますよ(^^)