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【Bump City】(1972) Tower of Power ベイエリア・ファンク・バンドのメジャー1作目

すっかり秋です。昼と夜で随分と寒暖差のある季節になりました。神奈川ではキンモクセイも終わりました。今年の夏は暑かったけれど、キチンと季節は巡りますね〜。

少しヒンヤリ気持ちの良い夜ですが、夜風に吹かれていると聴きたい音楽も変わってきます。こんな時はソウルフルなタワー・オブ・パワーなどはピッタリですね。

60年代末のサンフランシスコ界隈では、スライ&ファミリー・ストーン、サンタナ、マロ、コールド・ブラッド…といった人種の異なるメンバーによる異種混合のユニークな音楽をやるバンドが数多く登場しましたが、タワー・オブ・パワーもそんな1つ。
米国カリフォルニア州オークランド出身。1968年に結成、白人メンバーながら黒人顔負けのソウル・ファンクサウンドで、現在もファンを魅了し続ける超ベテランバンドです。

私はアメリカに行ったこともなく、地理もよく分かってないのですが、地図で見てみるとサンフランシスコとオークランドの位置関係はこんな感じ…

サンフランシスコ湾を挟んで、サンフランシスコの対岸にあるのがタワー・オブ・パワーの本拠地オークランド。なるほど、彼等の音楽はベイエリア・ファンクなどと呼ばれたりしますが、湾岸の土地から登場したというのがよく分かります。
湾岸地区とあれば他国からの船の出入りも多く、この辺り一帯はまさしく異文化の坩堝(るつぼ)のような場所だったのでしょう。

リーダーのエミリオ・カスティーヨ(tenor sax, vocal)は土地柄、子供の頃からラジオで黒人音楽に親しんでいたそうで、自分でもバンドを結成。これがやがてタワー・オブ・パワーへと発展します。
ロックの殿堂フィルモアのオーナーだったビル・グラハムに認められ1970年にレコードデビュー。その後、将来性を買われて大手のワーナー・ブラザーズと契約して発表したのが本作です。タワー・オブ・パワー通算2作目。

このバンドは大所帯なんですよね。本作ではホーンセクション5人を含めた計10人。
鉄壁のリズム隊と言われた、デイヴィッド・ガリバルディ(drums)、フランシス"ロッコ"プレスティア(bass)を土台に、一糸乱れぬホーンセクションを武器にしたソウルフルな演奏が聴きものです。
本作ではプロデュースにロン・カポネという名がありますが、これスティーヴ・クロッパーだそうで契約の都合とのこと。

タワー・オブ・パワーと言えば看板のリードボーカルがコロコロ替わる事でも知られていますが、ここでは2代目のリック・スティーヴンス(vo)。次に加入するレニー・ウィリアムスが非常に人気ですが、このリックもシャウトがなかなか決まっており、ソウルフルな喉を聴かせています。

ワーナー・ブラザーズの米国初回盤
音も良好です。


Side-A
①"You Got to Funkifize"
ホーン一発から始まる飛びきりファンキーなオープニング曲。カッコいい〜!とにかく躍動感が溢れる、まるでバネのようなリズム・セクションに耳を奪われます。
当時のリスナーは黒人のバンドと勘違いしたのではないでしょうか。リードボーカルはエミリオ。歌も上手い。バックのコーラスワークとのコンビネーションもいい感じです。


Side-B
①"Down to the Nightclub"
こちらもガリバルディ、ロッコが緻密なビートを刻むダンスナンバー。まさしく「ナイトクラブに繰り出そう!」といった雰囲気。
終盤の畳み掛けるようなホーンとボーカルの掛け合いも息がピッタリ。ライブサーキットで鍛え上げたバンドアンサンブルに圧倒されます。


②"You're Still a Young Man"
タワー・オブ・パワー初期の名バラード。ちょっと気恥ずかしい位にストレートなホーンの前奏に導かれて、リックがソウルフルに歌います。実にディープなブラック・フィーリングです。途中でリズムチェンジもあって凝ったアレンジもイイ。


③"Skating on Thin Ice"
後にどんどん洗練されていくタワー・オブ・パワーですが、メンフィス録音だった為か、本作では泥臭いフィーリングもあります。
こちらは南部ソウルっぽい感触。終盤はまるでジェイムス・ブラウン張りにまくし立てるリックのボーカルが激熱。黒いノリですね。


この後の作品と比べればまだ統一感はありませんが、代表曲も収録されているし、本作はタワー・オブ・パワーがスタイルを築き始めた充実作です。ブラックフィーリングたっぷりの歌と演奏はやはり格別ですね。
ここから全盛期へ向かっていくタワー・オブ・パワー、シビレます!


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