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世界に住めていない女たち

もうすぐ二階堂奥歯が死んでしまう。今文庫版444頁(この不吉なぞろ目は本当に偶然なのだ)、見事に気分を支配される読書体験。何に共感しているかって世界に住めていないことこのこと。アンネ=ラウ然り、安川奈緒然り。現象学とASD、「若い女が黙って自殺する話はすべて下劣だ」と吐き捨てた上で自殺した、彼女はまだ若い女だったと思い出す。「若い女」という記号。

言わずもがな、あなたは私の生きづらさの故を解さない。でもだからこそ、目の前にいるときこれでもかってくらい確かで、それがすごく好きだ。目の前にいないときも割と確かですごく好きだ。哲学も文学も知らぬあなたと、私は無数の言葉を交わし、私は何を伝えられたのか。まったく定かでないという実感のなさを抱いているが、一年前から今日までの私にはあなたが必要だったのだろう。あなたに身体のことを思い出させてもらい、おかげさまで自他の区別がつくようになった。また会わなくなったらどうなっていくのかは知れない。ただ私と一緒にいようがいまいが違う世界の人なのは確かだ。そしておそらく、今までもこれからも私の隣にいる人ではないことも、私は知っている。

存在の不確かさに頭が重く曇天。今日も書くことで救われようとしているが、この企図、今日は届くのだろうか。

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