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キッチンに立ちたくなるとき。

 アホな高校生時代。
 期末試験が近くなると、ガゼン岩波文庫版「モンテ・クリスト伯」を読みたくなり、矢も盾もたまらず1巻目を開く、ということを繰り返していました。
 全7巻。
 文庫本としては厚め。
 活字は小さめで、フォントと文体がとっても古風。
 読み始めは実に読みにくい。言い回しが独特でアタマに入ってこない。
 しばらく読み込むと前に読んだ記憶が蘇り、頭の中でイキイキと登場人物たちが動き始めます。脳みその中にフランス革命前後の欲と硝煙の臭いに彩られた世界が広がります。

 でも。
 そんなことをしている場合ではないのです。
 試験は数日後に迫っているのです。


 「モンテ・クリスト伯」のことを思い出したのは、抜き差しならん感じの状況が似ていたからでしょうか。

 COVID-19の感染がまたひどくなってきました。
 そのため予定を急遽変更することになりました。

 そのプロジェクトは多くの方がたにいくつもの段階で協力いただいているので、それぞれの調整を同時進行で図らなくてはなりません。

 連絡を取り、協力いただく全ての皆様からから了承をいただきつつ、ひとつひとつ新たな可能性を拓いていきます。
 次々に現れる新たな状況や条件。その全てに対応しつつ前に進めるためには頭の中の整理が必要です。


 キッチンに立ちたくなりました。
 
 美味しいものを食べたい。
 家族と美味しいものを食べて、喜びを共有したい。
 この感覚は成果をともに喜びたいという僕の仕事の落とし所に似ています。
 そのためには段取りが必要なことも。

 頭を整理するために、段取りと仕分けを司る脳神経に血液を流すよう脳みそが要求しているのかもしれません。

 やや手間がかかるレシピを選びます。
 ただでさえ「炒め煮する前に肉を揚げる」という手間がかかる酢豚ですが、さらに「揚げる前の肉は一旦煮豚にしたもの」という、家庭惣菜としてはあるまじき手間のものにしました。

 レシピには最初から肉のことが書いてあります。
 けれど、周りに置いて緑の色を映えさせるブロッコリを茹でるのが最初だと考えました。

 ブロッコリは簡単に済ませ、バラ肉の塊の煮豚作りに取りかかります。
 生姜、ネギの青いとこ、醤油、紹興酒、砂糖を溶かした濃いめの煮ダレのなかに肉塊をいれ、煮込むこと90分。

 煮豚を作っている間に、最後に餡を絡める野菜類の準備。
 サツマイモを切り、片栗粉をまぶしておきます。
 次に人参とピーマンを切って。

 油を温めて最初に人参とピーマンを素揚げに。
 次にコロモ付きの芋を揚げて。

 合間にお昼ご飯に「うまかっちゃん」作って食べたりして。

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 煮豚が出来上がったら軽く冷まして一口大よりも少し大きく切り、片栗粉の衣をつけて揚げます。

 揚げ物が終わったら、大きめのフライパンに餡をつくりますよ。
 鶏ガラのスープに醤油、紹興酒、さらに少量の九州の甘い刺身醤油、そして黒酢と米酢少々。
 いい感じにアルコールが飛んだら水溶き片栗粉を入れて熱を加えていくとトロトロに。

 これを、皿に綺麗に盛り付けた、揚げたモロモロの上にかけていきます。
 ドローッとかける時の快感がね…

 最後にごま油を少し掛けまわして香りを整えます。

 段取り、想定通りに行きました。
 それとともに、仕事の段取りも頭の中でいつのまにか整理されています。

 年末年始の休日が終わった後は力技的な進行が(予想通り)やってきました。この連休後も気を抜けない進行が続きます。
 キッチンに立ったおかげで頭と心がスッキリしました。
 協力いただいている皆さんに、改めて気持ちよく参加していけるように調整を進めていけそうです。

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眞藤 隆次
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