前編　冷静と情熱の「思念」、深夜書店。

　「なんだかなぁ～、」な気持ちと‶誕生日〟にまつわる奇妙な因果に「思念」が生まれた感じだ。

　朝早くLINE通話がはいった日のことだ。
　「着信アリ(笑)、。an・an・as、」
　なんて話を小説作にもした、女性からだった。
　
　最初の着信はスマホをいじり損ねた所為かわからんけれど、不在着信になった。
　そんで、すぐには画像が送られてきた。
　と、同時くらいにまた通話がきた。すかさず応答する。

　おっさん、としてはあまり器用な通話には慣れていないから、画像を見つめながらスピーカーにして話すこともしなかった。（できなかった、笑）。
　しかも、俺にと通話をかけてきてる相手に対してだ。
　「あ～俺、俺、」とつい言ってしまった。
　「寝ぼけてるわけやないし」
　それには「うしししし、、」と女性は懐かしい響きの笑い方をした。
　
　耳をぴったりつけての応答になったので、送られてきた人物画像についてはろくに見入ることもなく話を聞いた。

　「別にさぁ、無理やったらええんやけどさぁ・・・」といつになく、しおらしい口調で言ってきた用件はSNSのストーリーズに画像あげて拡散して欲しいとのことだった。
　【この人探してます！】との人物画像を、。
　
　先輩男性の仕事関係者である者が給料であったり、なんやかんやの前借りだのと借りているお金があるにも関わらず、失踪したからということらしい。ギャンブル依存症、メンヘラ気質で周囲の理解がなければ途方に暮れる人物なのは後でその画像を見ればよくわかった。
　SNSで不特定多数の者に姿をさらされるなりの所業をした者であるのだろうとは感じさせた。

　冷静と情熱の「思念」、がよぎった。
　
　まぁ、SNSのストーリーズは時間限定だ。一日経てばなくなる。
　とはいえ、俺の日頃の投稿を観てくれているフォロワーさんを驚かせることになるかもしれない。これまでは愛猫の黒猫びよんせの画像や幼馴染barでの画像なんかを主にあげてきてたからだ。
　SNSでつながる方たちとのやり取りは心をほっこりもさせてくれている。

　黒猫びよんせ、あずけていた方との連絡がつながらないので、、
　生き別れ状態ではある。
　けれど、‶びよんせちゃん〟は画像であっても、俺と社会をつないでくれている。
　もちろん、幼馴染友人が営む店もだ。
　ほんまにありがたいことだ。
　
　それにしても便利な世の中になったもんだ。
　【この人探してます！】とネット上にあげての不特定多数への拡散がどれだけの効果や威圧になるかは当人の失踪状況にもよるのだろうけれど、。

　そそ、SNSでつながる方たちの中には俺の幼馴染友人たちや懐かしい時代からの友人、知人もいてくれるわけだ。なんとなく、額面どおりの金銭がどうだのとかの【この人探してます！】では俺が深く関与しているのでは？、なんて心配をさせてしまうかもしれない。
　大切な面影や友人たちの笑顔を、もう失わせるような生涯であってはならないと思う日々なのだから、。

　おっさん、としてはあまり器用な出来ではないにせよ、【この人探してます！】画像の改良版をフォト加工で作成した。
　お金うんぬんといった殺伐とした雰囲気をカットし、
　「また逢えるといいね（笑）」なんて文字も書き入れて、やわらかな雰囲気の画像に仕上げて投稿した。

　捉（とら）え方によっては、ある意味不気味な画像に映えなくもないわけだが、（笑）。
　SNSで黒猫つながりの方などからは、
　「誰？」なんてDMが届いた。
　「おっさん自転車旅の人？」なんて冗談ぽく見てくれたりもして緩和策（かんわさく）は功を奏したといえるのかも、。
　おっさん、のひとりである友人の歌人などは、
　ど～いうことだ？やろうけれどもな。

　画像あげて拡散して欲しいと、頼んできた女性にも、殺伐とした雰囲気をカットして拡散したほうが、
　「家出なんかな～？」くらいで気軽な感じに情報も集まりやすいんじゃないかな、と伝えた。
　なんにしてもだ、俺を頼ってくれてうれしかった。
　こんなことくらいでしか助力できないにせよだ。
　
　大切に想う人の家庭を壊すような迷惑な存在には絶対ならないって、気持ちも、。
　前に、娘と一文字ちがい女性と歳月を経て連絡かわせることになったのは、奇しくも六月九日の黒猫びよんせの誕生日だった。
　俺とは元々かなりの年齢差はあったのでいまだ若かった。
　それでもすっかり若かった時代からは身目麗しい女性となり、歳月流れ、この女性とは一文字ちがうだけの名前の娘、可愛い女の子の母になって、いい旦那さんと幸せに暮らしていることも、テレビ通話やらなんやらで知ることできた。
　それからは幼馴染友人が営む店で飲食する機会もあり、いいひとときも過ごせた。
　女性とは一文字ちがうだけの名前の娘、可愛い女の子のすくすく育っていく様子をときおりは目にする時間がとてもうれしく、心が清らかになったわけだ。

　この日も画像を送ってきてくれた。
　バルーンで、HAPPY BIRTHDAY 3 と猫や花の飾りつけを添えた壁の前で天使の笑顔を輝かせている、。

　そそ、【この人探してます！】との人物画像をSNSのストーリーズに画像あげて拡散したこの日は、。
　女性とは一文字ちがうだけの名前の娘、可愛い女の子の三歳の誕生日だった。
　
　「なんだかなぁ～、」な気持ちと ‶誕生日〟にまつわる奇妙な因果に「思念」が生まれた感じだ。

　朝早くLINE通話がはいった日のことだ。
　「着信アリ(笑)、。an・an・as、」
　なんて話を小説作にもした、女性からだった。