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「響け!ユーフォニアム」を見たので、ユーフォについて語りたい

「ユーフォ…何?聞いたことない」

吹奏楽部だったと言うと必ず問われる「何の楽器やってたの?」という質問に、ユーフォニアム、と答えたときの返答は大体これ。

ユーフォニアム、音楽が好きな人でなければ存在を知らないであろうその楽器。指揮者からも存在を忘れられ、合奏中に「先生、そこユーフォもあります」と言ったことのある経験がユーフォあるあるとして認知されるほど影の薄いその楽器。


学生時代、吹奏楽部に所属していた私はユーフォニアムを吹いていた。

ちなみに「ユーフォって何?」「チューバの小さいやつかな」「チューバって何?」までがお決まりの流れだ。おかげでわざわざ「あんまり有名な楽器じゃないんだけど…」と楽器名を答える前にわざわざ予防線を張るようになってしまった。


そんなユーフォニアムの知名度を大きく伸ばしたのがこの京アニ制作の「響け!ユーフォニアム」だ。

舞台は京都の宇治。京阪宇治線が通学路として映るこの場所は、私が以前住んでいた場所にもほど近い。そういえば放送当初、コラボ企画を展開していたことをぼんやりと覚えている。

そんな私にとっては興味深い要素が揃っているのに、今の今まで見ようとしなかった。少数の人しか知らないと思っていたマイナーな楽器が、脚光を浴びるのを少しあまのじゃくな気持ちで見ていたのかもしれない。「あの子、有名になって変わっちゃったよね」みたいな。何様だ。


見始めたきっかけは、今年の年始。
旦那が寝込んでいて暇だったのでリビングでテレビのチャンネルを変えていたとき、昨年放送していた3期の一挙放送を目にしたことだ。

1話の後半あたりから見始めて、「これは初めから見なければ」とアマプラで最初から見始めた。

吹奏楽部という、女子が部員のほとんどを占める部活の雰囲気、部員同士のいざこざ、モチベーションの差による不平不満、夏のコンクールに向けた夏休みの練習、音がひとつになったときの感動。身に覚えがありすぎて、色々な記憶が蘇ってきた。

文化部でありながら運動部のようにハードな活動内容、中高の6年間はほぼ休みなく部活に捧げたと言っても過言ではない。あの頃の夏の記憶が呼び起こされる、青い時代を閉じ込めた作品だった。


主人公のユーフォ奏者、黄前久美子ちゃんと同じく、私も小学校のクラブから吹奏楽を始めた。最初はトランペットがやりたかったけど、吹奏楽の花形は希望者も多く、他の子よりその頃少し背が高かった私は大きな低音楽器に回された。

今でこそ最初からユーフォを吹きたい!という子もいるかもしれないけれど、アニメ放送以前、ユーフォが第一希望だった子はほとんどいなかったんじゃないかと思う。やはりトランペットやサックスなんかの華やかな楽器に憧れがあった。

初めこそ不満だったけど、私はすぐにユーフォを好きになった。

ユーフォニアムという楽器は、低音楽器の部類に入る。リズム隊として拍を刻んだり、メロディラインを支える役割が多い。

ただし、曲によっては主旋律があったり、裏メロを奏でたり、花形ではないけれど、おいしいパートがあったりする。そんな多彩な役割を持ち、いいとこ取りなパートがユーフォニアムだ。

音は深く、丸く、柔らかい。自分の歌声がそのまま音になるような感覚があった。


作品の中で黄前ちゃんが先輩から「ユーフォっぽい!」と言われる描写がある。不思議なもので、パートごとのキャラクターは、リアルでも楽器のイメージと割と似通っていたりする。

フルートはお嬢さまや見た目上品な子が多かった。サックスは華やかで明るく、派手で綺麗な人が多かった印象。この話題だけで元吹奏楽部なら小一時間盛り上がれると思う。

そんななか我々低音パートは、控えめで常にのほほんとした空気が流れていた。目立つタイプではないものの、変わった人も多く基本個人主義。そんなパートの雰囲気が私はとても好きだった。


高校でもユーフォニアムを吹きたいと思っていたけれど、希望者が他にもいたこととせっかくなら別の楽器もしてみたいという浮気心で、高校時代は他の楽器を担当していた。

その楽器も楽しかったけど、もし今もう一度吹けるならどの楽器がいいか聞かれたなら、私はユーフォニアムと答えるだろう。

今回はユーフォ奏者の方が奏でる柔らかい音色をお届けして、記事を締めくくりたいと思います。



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