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新刊『〈ゴータマ〉の大予言――みんなが「わたしの人生」を生きるために――』


――先生、しばらくぶりです。いまどの辺にいらっしゃるのですか?

――やあ、こんにちは。原稿の催促かな。

いまね、そちらからいうと、西の方にいるんだよ。

――というと、阿佐ヶ谷とか荻窪の辺りですか。

――いやいや、もっと西ですよ。

――じゃあ、八王子とか青梅とか。

――ハハハ、急行や快速に乗ってもなかなか着かないな。

それにしてもわたしが書き残していた原稿に目を通してくれて、本にしてくれてありがとうね。作家冥利につきますよ。

――そちらから見えますか? こちらの世の中のこと。

――そうだね、わたしが今回の本のなかで「予言」した、いやいや「提言」した、じゃなくて、あの青年ゴータマが語ったことに近い方向になっているのが分かりますね。

――ますます寛容性がなくなって、いがみあってばかりです。人と人も、国と国も。

――もっとゆっくり、ゆったり生きることに気づかなくちゃね。こちらは「永遠」という時間が流れています。

――いずれ僕も参ります。お会いできるとうれしいです。

――急いで来なくていいよ。そうそう、飲み過ぎに注意してね。

――はい、自信ありませんがなるべくそうします。


2010年頃に書かれたと思われる未発表作品です。絶筆の『坐らぬ禅』に続いて仕事場から発見された直筆原稿のなかの逸品を、著者の三回忌にあたる本年、緊急刊行しました。

本書は、釈尊の生涯と思想に仮託して、著者が自らの仏教観・人生観を思いのたけ披瀝した物語です。まずその設定に驚かされます。現代インドの財閥の老会長と、釈尊を思わせる「風来坊」の青年・ゴータマの出会いから話は始まります。「やがてすべては潰れてしまう」――ゴータマは会長に大予言を語り聞かせる。そうであるならば、わたしたちはいかに生きたら良いのか。物語の場面は現代インドと古代インド、そして現代日本の間を自在に行き来しながら、著者はゴータマ青年に現代日本に生きるわたしたち一人一人がより良く生きる道を語らせます。

……ともかく、旧来のジャンルを超えた一冊です。著者独特の逆説と譬喩、十二分な読み応えで反響が期待されましょう。

(担当・KURO)

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ひろさちや著

『〈ゴータマ〉の大予言――みんなが「わたしの人生」を生きるために――』

【内容】
驚きのストーリーである。インドの財閥の会長と「風来坊」の青年・ゴータマの出会いから話は始まる。「やがてすべては潰れてしまう」。ゴータマは会長に大予言を語り聞かせた……古代インドが時空を超えて現代日本にやってくる。ファンタジーかSFか、もしかするとアナーキーな思想書か。2010年頃に書かれた未発表作品。〈絶筆〉『坐らぬ禅』に続いて仕事場から発見された直筆原稿のなかの逸品。

【目次】
第Ⅰ部 ゴータマの大予言―これからの日本―
前口上
1 日本という国はやがて消滅する
2 義務教育は必ず廃止になる
3 資本主義経済は遠からず崩壊する
4 競争原理は通用しなくなる
5 これからの家族の絆が強まる
第Ⅱ部 ゴータマの大提言―あなたの生き方―
前口上
1 世間を馬鹿にせよ
2 即今・当処・自己に生きよ
3 精神的風来坊になれ
4 自分を縛る縄をなうな!
5 怠け者になりなさい

ひろさちや
1936年(昭和11年)、大阪市に生まれる。東京大学文学部印度哲学科卒業、東京大学大学院人文科学研究科印度哲学専攻博士課程修了。1965年から20年間、気象大学校教授をつとめる。退職後、仏教をはじめとする宗教の解説書から、仏教的な生き方を綴るエッセイまで幅広く執筆するとともに、全国各地で講演活動をおこなう。厖大かつ多様で難解な仏教の教えを、逆説やユーモアを駆使して表現される筆致や語り口は、年齢・性別を超えて好評を博する。2022年(令和4年)、逝去。おもな著書に、『仏教の歴史(全十巻)』『釈迦』『仏陀』『大乗仏教の真実』(以上春秋社)、『お念仏とは何か』『禅がわかる本』(以上新潮選書)、『生き方、ちょっと変えてみよう』『のんびり、ゆったり、ほどほどに』『インド仏教思想史(上下巻)』『〈法華経〉の世界』『『法華経』日本語訳』『〈法華経〉の真実』『親鸞を生きる』『道元を生きる』『空海を生きる』『法然を生きる』『一遍を生きる』『最澄を生きる』『栄西を生きる』『坐らぬ禅』(以上佼成出版社)などがある。2022年4月逝去。(※略歴は刊行時のものです)


ISBN:9784333029204
出版社:佼成出版社
発売日:2024/9/30